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逆遠近法のこころは「義ならざるものは結局、美ではない」

逆遠近法の美術論(3)高村光太郎の「義」と「真のリアリズム」

執行草舟
実業家
概要・テキスト
高村光太郎の「義ならざるものは結局美でない」を座右銘としている戸嶋靖昌記念館。この言葉は、芸術とは愛ではなく「義」のものであることを意味し、考え方として武士道に近く、イコン文明にも近い。「真のリアリズム」と聞いて現代人が思うのは遠近法だが、霊性文明から考えれば、平面的に描かれた日本画や漫画、イコンの顔こそが真のリアリズムなのである。(全10話中第3話)
時間:12:27
収録日:2022/08/30
追加日:2023/03/24
カテゴリー:
≪全文≫

●フロレンスキイの理論は高村光太郎の「義ならざるものは結局美でない」


執行 その芸術が、私に分かりやすい形で霊性文明のイコンの姿、自己犠牲の姿を表している。この絵(「ベラスケスのキリスト」)は、自分の名声や自分が認められたいとか、やりがいを得たいといったことを少しでも考えている人には描けません。

 本当に「ベラスケスのキリスト」から宇宙のエネルギーを受けて、それを素直にキャンバスに描く。たぶんそれで認められたいとも思っていない。だから、持っているのに一番ふさわしいだろうと、13点の油絵をこの記念館に寄付されたのです。

―― すごいですね。

執行 労力だけを考えても大変なことです。あとで説明しますが、それが全部、霊性文明の逆遠近法になっている。逆遠近法の見方が分かると、この八反田先生の絵の価値が分かってきます。

―― でも、そこはすごく難しいですね。イコンの芸術もそうですが、普通の遠近法から入った人からすると理解不能になりますね。

執行 多分、分からないでしょう。一つ一つ説明していきますが、ビザンティンのイコンの霊性文明から見た理論にしても、私が考えたものでなく、パーヴェル・フロレンスキイです。イコンを本当の芸術として世の中に認めさせたフロレンスキイの見方からすれば、この八反田先生の絵が分かってくるのです。私はそのこと自体に、この八反田先生の絵を見て気づいたのです。

―― それはすごい関係ですね。

執行 ただ、私の記憶にはないのですが、戸嶋の絵を集めている頃も「これはイコンだ」と社員や周りの人に私が言っていたそうです。でも、なぜそう言ったのかは覚えていない。それが、八反田先生の絵でフロレンスキイがいう「逆遠近法の芸術」なのだと分かったのです。

 逆遠近法とは何かというと、「神の目」です。逆遠近法の芸術は、先ほど言ったように「見る芸術」ではなく「見られる芸術」。

―― すごい表現ですね。

執行 私が戸嶋靖昌記念館と執行草舟コレクションを世に問うためにビルの中に美術館を作ったときに、記念館のキャッチフレーズ、座右銘として選んだのが、私の大好きな高村光太郎の詩です。彫刻家の高村光太郎はご存じですね。

―― はい。

執行 高村光太郎は(仏師で彫刻家の)高村光雲の子で、有名な芸術家です。彼の「義ならざるものは結局美でない」という言葉があり、私は直筆の書も...
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