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『ベラスケスのキリスト』に感応した絵画とイコンの文明

逆遠近法の美術論(1)八反田友則の絵とビザンティン文明

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
芸術家・八反田友則氏は『ベラスケスのキリスト』(ミゲール・デ・ウナムーノ著)を読んで感応し、それをもとに描いた13点の絵を執行草舟コレクション・戸嶋靖昌記念館に寄贈した。その寄贈された絵を見て執行草舟は、自身が集めてきた芸術作品がローマ帝国の分裂によってできたビザンティン帝国の芸術に近いことに気づいたという。ビザンティン帝国の芸術はイコンの芸術で、「逆遠近法」で描かれている。一方、神を理論化したヨーロッパの文明から、やがて神がいなくなり、ヒューマニズムが暴走した。そうしたことを強く気づかせてくれたのも八反田氏の絵だったのだ。(全10話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:10:27
収録日:2022/08/30
追加日:2023/03/10
カテゴリー:
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≪全文≫

●『ベラスケスのキリスト』に感応して描かれた八反田友則先生の絵


―― 先生、どうぞよろしくお願いします。

執行 はい、よろしくお願いします。

―― 絵がすごいですね。

執行 これですか。今日は『ベラスケスのキリスト』の絵についてでしたね。2022年に『ベラスケスのキリスト』についてお話ししましたが、『ベラスケスのキリスト』(執行草舟監訳、安倍三﨑訳、法政大学出版局)という(スペインの哲学者)ミゲル・デ・ウナムーノの詩を翻訳したところ、かなり反響がありました。

 戸嶋靖昌記念館の大ファンで、私の本のファンでもある八反田友則先生という画家が、鹿児島県にいます。私も非常に尊敬している画家で、私のコレクションにも譲り受けたものがたくさんあります。以前、「テンミニッツTV」で八反田先生の絵について話しましたが、鹿児島で絵をはじめ、いろいろな芸術活動をされている芸術家です。

 その方が『ベラスケスのキリスト』という本に非常に感応して、ベラスケスのキリストの霊威をすごく受けられた。その芸術的天才性から発想した13点の絵を描いた。それを特別に戸嶋靖昌記念館に寄贈されたのです。

―― それはすごいですね。

執行 13点の油絵が全部、後ろにあります。

―― この本にすごく感化を受けたのですね。

執行 それほど『ベラスケスのキリスト』は八反田友則という芸術家に、とてつもない感化を与えたようです。この本がなければ、とても描ける絵ではなかった。ぜひ訳した私のところに寄贈したいと。

―― ものすごいことですね。

執行 今日は13点全部ではなく6、7点ほど掛けていますが、頂いたときに本当に感動しました。

 八反田先生のほかの絵もそうですが、特にこのベラスケスの絵がなければ、私が自分でどのような作品を集めているのか、一番底辺を支える重大な理論を見落としていた可能性がありました。八反田先生の『ベラスケスのキリスト』13点が、私に「芸術の真の意味」を悟らせてくれたのです。 悟るというと偉そうですが。

―― 気づかせてくれたのですね。


●イコンの芸術を理論化したパーヴェル・フロレンスキイ


執行 それはどういうことかというと、戸嶋靖昌記念館と執行草舟コレクションで集めてきた絵は、今まで集めたものも含めて、「霊性文明」に関わるものです。

 現世の話でいうと、ロシアにイコン(聖像画)という芸術...
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