深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
理屈抜きで感動!シェイクスピア・マジックのネタばらし
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(5)時空間を操るシェイクスピア・マジック
河合祥一郎(東京大学大学院総合文化研究科教授)
あまりにも奔放でいい加減なのに感動を呼ぶ「シェイクスピア・マジック」とは何か。今なお再演され続ける数々の不朽の名作を生み出したシェイクスピアだが、具体的にどのような点に彼の作品の魅力、画期性があるのだろうか。近代演劇のフォーマットとされる「三一致の法則」と照らし合わせることで、「シェイクスピア・マジック」と呼ぶべきその独創的な作劇の全貌が見えてくる。(全6話中第5話)
時間:14分04秒
収録日:2023年4月12日
追加日:2023年8月10日
≪全文≫

●近代演劇のしきたりを超える「シェイクスピア・マジック」


 こんにちは。河合祥一郎です。第5回は、「シェイクスピア・マジック」を取り上げることにしましょう。

 まず、こちらをご覧ください。シェイクスピアの魅力・特徴は何かと言いますと、新古典主義的な厳密さ・緻密さがなく、奔放な想像力を重視するところにあると言えます。

 新古典主義的な厳密さ・緻密さとは、“three unities”(三一致〔=筋、場所、時間の一致〕を守らない)によって表現されるものですが、シェイクスピアはこれを守りません。この説明はのちほどします。結論を先に言ってしまうと、理屈を超えて感動を呼ぶところがあり、これがシェイクスピア・マジックだといえるのです。

 シェイクスピアが理屈を超越するという点は、人は過つものであるとする人文主義の考え方ともつながります。間違っていても、あまり正しさにこだわらず、愛や情の大切さを見て、細かなことにこだわらない描き方をするからです。

 シェイクスピアには、新古典主義的な厳密さ・緻密さがありませんので、本を読み返してみるとおかしな点がいくつも出てきます。ところが、芝居を観ているときは、それに気づきません。シェイクスピア・マジックといわれる所以です。今回は、そのシェイクスピア・マジックの紹介と、そのネタばらしをすることにしましょう。

 よく誤解されるのですが、シェイクスピアはイプセンやチェーホフのような新劇ではありません。新劇というのは近代以降の芝居で、リアリズムによって成立している劇ですが、シェイクスピアは近代以前のルネサンス時代の芝居なのです。

 イギリスの場合、ピューリタン革命により1642年に劇場が閉鎖され、1660年の王政復古期に、劇場が再開したとき、演劇は別物(近代演劇)に変わっていました。

 どのように変わったかというと、近代演劇では、シェイクスピアの時代にあった張り出し舞台がなくなって額縁舞台となり、緞帳(幕)があがったり下りたりして、舞台装置や書き割りが使われるようになり、女優が登場したのです。

 逆にいうと、シェイクスピアの時代には女優はいませんでした。それまでは少年俳優が女役を演じたのであり、男性が女役を演じる...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
日本美術論~境界の不在、枠の存在(1)具象と抽象の共存
日本美術の特徴を示す矛盾した2つの要素とは?
佐藤康宏
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫