深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『ハムレット』への誤解…理性と情熱の間で揺れる主人公
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(2)『ハムレット』が描く「理性と情熱」
河合祥一郎(東京大学大学院総合文化研究科教授)
シェイクスピアの代表作といえば『ハムレット』である。ハムレットのことを「憂鬱な悩める貴公子」とイメージしている方が多いかもしれないが、そこには大きな誤解があると言う河合氏。冷たい理性と熱い情熱の対比こそこの作品の本質だというのだ。いったいどういうことなのか。本作が描かれた背景や作中のセリフを参照しながら、『ハムレット』のエッセンスをひも解いていく。(全6話中第2話)
時間:14分34秒
収録日:2023年4月12日
追加日:2023年7月20日
≪全文≫

●冷たい理性と熱い情熱の対比こそ『ハムレット』の本質


 こんにちは。河合祥一郎です。第2回は、シェイクスピアの代表作『ハムレット』を取り上げましょう。

 最近では2023年に野村萬斎さん演出・出演で、ご子息の野村裕基さんが主演なさった公演もあり、私も翻訳者として稽古場に参加させていただきました。そのほか、野村萬斎さんが主演のときの演出はジョナサン・ケント、藤原竜也さん主演のときは蜷川幸雄、岡田将生さん主演のときはサイモン・ゴドウィンといった名だたる演出家が私の翻訳で『ハムレット』を上演してくださいましたので、そのたびに稽古場でいろいろと学びながら、私の『ハムレット』理解は深まってきました。今日はそれをサクッと皆様にお伝えしましょう。

 『ハムレット』というと、「憂鬱な悩める貴公子」といったイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。しかし、そこには大きな誤解があります。誤解が生まれたのは、ロマン派の詩人たち・批評家たちが自分たちに引き付けて『ハムレット』を解釈し、誰でも思春期に人生に悩むようにハムレットも悩むのだと考え、その解釈が大きな影響力を持ったためです。

 これまで『ハムレット』がどのように理解されてきたのか、その変遷をたどりつつ、真の作品理解を試みたのが私の本『謎解き「ハムレット」』です。ちくま学芸文庫の一冊となっていますので、ぜひお読みください。

 さて、憂鬱なハムレットとして描かれた映画作品で有名なのはローレンス・オリヴィエ監督主演の『ハムレット』でしょう。いかにも憂鬱なプリンスとしてのハムレットとして演じられています。それに対して、アクションスターだったメル・ギブソンが主演した、ゼフィレッリ監督の『ハムレット』もあります。こちらはパッショネートで熱いハムレットだと言えるでしょう。

 ここには哲学的瞑想に耽る冷静で憂鬱なハムレットと、復讐のために剣を振り下ろそうとする情熱的で熱いハムレットの対比があります。この冷たい理性と熱い情熱の対比こそが、『ハムレット』という作品の本質だということができます。

 私は大修館シェイクスピア双書から『ハムレット』の原文の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政