深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
志賀直哉、太宰治、小林秀雄…対立する『ハムレット』批評
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(6)現代への影響と文化的財産
河合祥一郎(東京大学名誉教授)
シェイクスピア作品は現在もさまざまな形式で翻訳され、また再演され続けて、その解釈や批評も更新されている。中でも『ハムレット』に関しては、ドイツ・ロマン主義を代表する文豪ゲーテをはじめ、A・W・フォン・シュレーゲル、またイギリス・ロマン主義の批評家ウィリアム・ハズリットや詩人サミュエル・テイラー・コールリッジなどが自身の解釈を展開。一方、日本でも志賀直哉や太宰治、小林秀雄などが『ハムレット』批評を行っている。彼らはいったいどのような考えを述べているのか。具体的な言葉を参照しながら、その受容の歴史をひも解く。(全6話中第6話)
時間:12分01秒
収録日:2023年4月12日
追加日:2023年8月17日
≪全文≫

●『ハムレット』解釈におけるイギリス・ロマン主義:ハムレットとは私たち


 こんにちは。河合祥一郎です。最終回の第6回は、シェイクスピアが与えた現代への影響についてお話ししましょう。

 皆さん、マーガレット・アトウッドはご存じですよね。『侍女の物語』を書いたベストセラー作家です。そうした世界的なベストセラー作家にシェイクスピアを語り直してもらおうという企画が現在進行中です。

 英語では“Hogarth Shakespeare Series”なのですが、日本語では「語り直しシェイクスピアシリーズ」と呼ばれています。第一弾のマーガレット・アトウッドはシェイクスピアの『テンペスト』をとりあげて、“Hag-Seed”という作品を書きあげ、これを私の友人でもある鴻巣友季子さんが『獄中シェイクスピア劇団』(集英社)としてお訳しになりました。

 第二弾はエドワード・セント・オービンが『リア王』をメディア王に置きかえて書き換えた『ダンバー』(集英社)という作品です。こちらは私が解説を書かせていただきました。第三弾として、アン・タイラーが『じゃじゃ馬馴らし』を題材に『ヴィネガー・ガール』を執筆しています。

 今紹介したのは一例で、多くの現代作家がシェイクスピアを意識しながら創作をつづけてきたといえるでしょう。ドイツ・ロマン主義を代表する文豪ゲーテは、『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』の中で、「この世の蝶番が外れてしまった。なんという因果だ、この俺がそれを正すべく生れてきたとは!」(一幕五場196-197行)という台詞こそが作品全篇の鍵であると論じ、ハムレットは「可憐な花を植えるために作られた高価な鉢に樫の木を植えるようなものだ。樫は根を張り、鉢は壊れる」という有名な比喩を用いました。

 つまり、ハムレットは、復讐というとても果せない大仕事を課せられてしまった繊細な青年なのであり、「英雄を作る心の強さを持たない、美しく、清らかで、高貴な、きわめて道徳的な人が、担うことも、捨て去ることもできない重荷のために亡びてゆくのだ」と描写したのです。

 このイメージは強烈でした。しかし、A・W・フォン・シュレーゲルなどは、『劇芸術ならびに文学』の中で、ハムレットには決心したことを実行に移せない意志の弱さがあると指摘してゲーテ説を修正しました。ハムレットは、復讐という大きな宿命...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
クラシック音楽で世界史がわかる…宗教音楽からクラシックへ
片山杜秀
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
山上憶良「沈痾自哀文」と東洋的死生観(1)因果応報と日本仏教の課題
山上憶良が「沈痾自哀文」で問いかけた因果応報の問題
上野誠
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
伊福部昭で語る日本・西洋・近代(1)チェレプニン賞に輝いた無名の作曲家
映画『ゴジラ』の作曲家・伊福部昭が直面した「日本と東洋と西洋」そして「近代の超克」
片山杜秀
編集部ラジオ2026(38)アメリカ中間選挙と民主主義
【10min解説】第2期のトランプ大統領と中間選挙を考える
テンミニッツ・アカデミー編集部
「良き対話」とは?――哲学から考える(1)対話とは何か――会話・説教との違い
「良き対話」のヒントを哲学から考える…「対話」の大前提とは、そして「会話」「説教」「場回し」とは何が違うのか?
納富信留
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(3)ヴァイキング招致説とキエフ・ルーシ
ロシアの起源はヴァイキング?…キエフ・ルーシの興亡と、ロシアとウクライナの決定的な「歴史的溝」
上月豊久
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(3)「覚り」とは?「空」とは?
「覚り」「因果」「空」とはどういうものか…仏教の本質と変遷
橋爪大三郎
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦