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真意はどこに? サウジアラビアの石油戦略の変化も要因

原油安と為替相場への影響(1)原油安の理由

高島修
シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
情報・テキスト
2014年の後半から、世界的な原油安が注目されてきている。この価格下落はなぜ起きているのか。シティグループ証券チーフFXストラテジスト・高島修氏が、現場の視点から三つの理由を解説する。(全4話中第1話目)
時間:06:38
収録日:2015/01/06
追加日:2015/01/09
≪全文≫

●世界経済市場の中心的な話題に「原油安」がある


 はじめまして。シティグループ証券で為替相場のリサーチを担当している高島修と申します。シティグループは世界最大の為替バンクの一つで、私はそこで日本国内外の投資家や企業と実際に接する立場にあります。ですから、私がここでお話しする機会があるときは、理論よりも実際のマーケットや世界経済で何が起こっているかにフォーカスしながらお話ししていこうと思います。

 今、為替市場を含めたマーケットの中心的な話題に「原油安」があります。昨日(2015年1月5日)も、アメリカのWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物価格が50ドル台を割り込む動きがありました。昨年7月頃から原油相場が持続的に下がっていますが、下げのピッチが比較的急なために、市場の関心がどんどん高まっています。今回の特徴は、原油安によって市場のセンチメント(市場心理)が非常に悪化していることです。今日は、この原油安をテーマに、マーケット、為替相場をどのように考えるべきかをお話しします。


●第一の理由は新興国を中心とする需要の伸び悩み


 最初に、今回の原油安の理由や背景として、市場の中で指摘されていることを三つほどご紹介します。一つ目に需要サイドの理由として、中国をはじめとした新興国経済の成長の鈍化に伴って、原油や資源の需要が伸び悩んでいることが挙げられます。また、技術革新の結果、世界中でエネルギー効率が上がっている点も、原油需要が弱まっている理由と言われています。


●シェール革命、イラン、過剰投資が拍車をかける


 二つ目に、供給サイドの理由があります。いくつかポイントがありますが、市場の中で最も注目を集めているのはアメリカのシェール革命です。従来取り出すことが難しかったシェールガスやシェールオイル(タイトオイル)の抽出技術が実用化され、アメリカの原油エネルギー生産量が数年間でうなぎ上りに増加しています。向こう数年で、アメリカの原油生産量はサウジアラビアを抜いて世界最大になるとも言われています。

 それ以外では、原油の供給が止まっていたイランやリビアで、昨年辺りから徐々に輸出量が上向いていることも指摘されています。特にイランは、2013年8月に穏健派のローハニ政権が誕生し、欧米諸国との核開発協議を始めました。そのため、近くイランが世界市場に戻ってくるのではないかと注目されています。

 他には、2000年代に原油価格が相当上がったために、サウジアラビアやロシアなどが高い原油価格を前提に長らく過剰投資を行ってきており、それが供給の増加につながっている側面もあります。これらの要因も今回の原油安の底流にあると考えられます。


●サウジアラビア石油戦略の変化も原油安を後押し


 最近、特に注目されている三つ目の要因は、サウジアラビアの石油戦略が変化したのではないかということです。言うまでもなく、サウジアラビアは現在世界最大の原油産出国で、従来、原油価格が下がったときにはサウジアラビアが率先して原油の生産を減らし、調整弁となって価格の安定を試みてきた経緯があります。

 ところが、2014年11月27日、半年に一度行われているOPEC総会では、サウジアラビアが中心になって減産の見送りを決めました。そこでサウジアラビアの石油担当大臣が、「このようなとき、需給の調整弁になるべきなのは、アメリカのシェール業者ではないか」と発言したのです。

 サウジアラビアの真意は分からないのですが、市場の中では、サウジアラビアが意図的に価格を下げ、体力勝負の価格競争に出ることでアメリカのシェール業者の産出量を落とす、あるいは新規投資を止めようとしているのではないかと言われています。いずれにせよ、サウジアラビアが従来と違って減産に踏み切らなかったことが、原油安を加速させている三つ目の理由です。
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