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学ぶきっかけは稲盛和夫氏…ベクトルを合わせるための手法

組織心理学~「チームの温度差」を埋める(2)ベクトルを合わせる

山浦一保
立命館大学スポーツ健康科学部・研究科 教授
情報・テキスト
温度差のある集団では、チームの足並みがそろわないといわれる。それは個人がバラバラな方向を向いていて、チームとしてのベクトルが定まっていない状態だからだ。今回は経営破綻からの再建を果たした企業の事例を見ながら、ベクトルを合わせるための手法について考えていきたい。(全2話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:01
収録日:2023/06/21
追加日:2023/12/01
≪全文≫

●JALの再建から学んだ「ベクトルを合わせる」重要性とフィロソフィ


―― 先生がもう一つお書きになっていたのが、「ベクトルを合わせる」ということです。今回は冒頭に、「みんな全然違う。それが前提です」という話がありました。その前提の中でどうやってベクトルを合わせていくかというところに面白味と難しさがあるように思いました。具体的にはどういう事例がありますか。

山浦 事例で申し上げると、私が非常に勉強させていただいた一つの事例は、JALです。そのきっかけは京セラの創業者である稲盛和夫氏でした。当該企業はご存じの通り建て直しが必要になったため、当時の皆さんはおそらく血を吐くような思いをされてきたと思います。それが少し落ち着かれた頃に研究を始めました。それで、いろいろなエピソードを伺ったときに、やはり皆さん、「そろっていそうで、実はそろっていなかったことを目の当たりにした」ということから始められました。

―― 「そろって」というのは、組織としてそろっていなかったということですか。

山浦 そうですね。「ビジョンなどが一体どれを信じて、どこに照準を合わせるのかが徹底されていなかった」といったほうが、多分正確だと思います。

―― なるほど。

山浦 そこに気づかれたのと、赤字からなんとか転換しなければという切羽詰まった状態も手伝って、本当に一生懸命尽力されたと伺っています。そのときの一つが、やはりビジョンであり、ご自分たちで「(JAL)フィロソフィ」と呼ぶものをつくられたことです。さらに、つくられたものを周りの方々と意思統一していく、そういう作業を実に丁寧に、長年にわたって地道に取り組まれたという事例で勉強させていただいたことがあります。

―― これは、斜に構えるタイプの人だと、「なんでこんな大変なときに、時間をかけてフィロソフィのような、訳の分からないものを作らなきゃいけないんだ。時間の無駄じゃないですか」と言う人も出そうだと、普通には思うのですが…。

山浦 そのあたりは、その後いろいろな文献にまとめられていたりします。

―― それはJAL自身が、そういう事例をまとめていらっしゃるのですか。

山浦 それもありますし、関わられた他の物書きの方が書かれた書籍を拝読したり、現場の方ともお話をしたり、といろいろ重ねて、ですが、そういう方もいらっしゃったようで、その後、他の現場でもリサーチしていますとJALに限らず、変革期にはやはりそういう方がいらっしゃいます。あるいは私自身でも、「そんなに変わりたくない」ということがよぎる瞬間があるので、皆さんに宿っている心の状態だと思います。

 それはリスク管理の一つですし、ころころ変わられると自分のアイデンティティがなくなりそうで怖いことですので、防御反応として当然だと思います。

 (しかし、)そういう方もいらっしゃるときに、稲盛氏が説かれたことを熱心に聞く耳を持つような状態にご自身を変えていかれた強さ、というところで支えられた改革だったと思います。


●ベクトルを合わせるのに大切な三つの「情」


―― フィロソフィを作ることは、先生からご覧になると具体的にどんないいことがあったのですか。

山浦 やはりご自分たちが何を大事にしなければならないのか、というところに立ち戻ると思うのですね。それほどたくさん書くわけにもいかないとなると、エッセンスは何か、そのエッセンスにどんな言葉を使って盛り込めば、新しく入ってこられた方や中途の方々にも伝わるのか、という部分だと思います。それらを選りすぐって、思いを込めるといったところにやはりポイントがあるのかと思います。

―― 選りすぐるというところですか。

山浦 はい、そこは本当にかなり考えられると思います。これからの企業、ご自分の会社、さらにはご自身をどう乗っからせて、世の中に貢献させていくのかといったところに、全てが集約されていくと思います。ですから、選りすぐって「ここに自分たちの思いを込めることができた」という情熱のようなものは、その後も胸を張って語り継がれていくものになるでしょう。そういう意味ではとても大事な作業で、意味も意義もあることだと思います。

―― なるほど。先ほど先生のゼミの話で、毎年新規に皆さんが決めていくというお話がありました。企業の場合、例えばJALの場合では厳しい局面にフィロソフィを作ったということになります。その後は当然しばらくそれを守っていくという中、先ほどのゼミのように変えたりする局面があってもいいのですか。

山浦 あってもいいと思います。世の中の動きとともに、年次目標ぐらいはもう1回改めてみる。同じことでもいいとは思うのですが、「同じことが今年度(今期)も必要だよね」という確認作業があればいいのかなと思います。世の中の流れに合わせて、もう...
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