民主主義を考えるための十二の根本原理
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偉大なる文明は、その基礎を偉大なる宗教に負っている
民主主義を考えるための十二の根本原理(2)民主主義の基礎は偉大な宗教
考察と随想
執行草舟(実業家/著述家/歌人)
「偉大なる文明は、その基礎を偉大なる宗教に負っている」――民主主義を考えるための根本原理、一番目は英国の歴史家クリストファー・ドーソンの言葉である。西洋の場合、この原理の前提となっているのはキリスト教である。ただし前提として、民主主義が出てきたのは、ヨーロッパが「神」を失ったからともいえる。ルネッサンスを契機に神を失い続ける歴史の中、「魂よりも肉体が大事」と考えるようになり、ホッブスやロック、ルソーらが民主主義を生み出したのである。民主主義とは、何かが崩れたときに出てくるものでもある。(全13話中第2話)
時間:9分34秒
収録日:2025年1月16日
追加日:2025年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●民主主義も宗教が生み出した一つの思想


 それでは「民主主義を考えるための12の根本原理」の第1から行きます。第1番は「偉大なる文明は、その基礎を偉大なる宗教に負っている」です。

 これは私が歴史を研究してきた中で一番好きな言葉の一つです。(アーノルド・)トインビーと並ぶ、英国で一番素晴らしいといわれる歴史家のクリストファー・ドーソンが『ヨーロッパの形成』という偉大な書物で言っています。この言葉が、民主主義を考えるために全ての人が知っていなければならない、一番の原理です。「偉大なる文明は、その基礎を偉大なる宗教に負っている」ということです。

 文明は全て偉大なる宗教から生まれています。「何々教」といった名前がなくても、全部、宗教や宗教心から生まれています。あとで出てきますが、私は日本人の宗教を「日本教」と言っています。これは(評論家の)山本七平がそう言ったのですが、それを使っています。

 日本人は無宗教といわれますが、実は日本人が生み出した全ての文明が、全部宗教なのです。日本人の宗教心が生み出したものです。これがまずわからないとダメです。

 だから、民主主義もほかのものと同じで、宗教が生み出した一つの思想に過ぎないということです。これがわかると民主主義は神でもないし、全てではないことがわかってきます。

 では民主主義を生み出した偉大なる文明とは何か。われわれが一般にいう民主主義は西洋思想が中心なので、どうしても西洋思想を中心に考えます。そうするとキリスト教になります。だから「キリスト教から民主主義が生まれた」。これが一つの真理です。

 でも、あとから説明しますが、民主主義的な社会はキリスト教と関係ありません。日本の歴史でいうと、縄文時代から非常に民主的な社会がありました。では民主的な社会は何から生まれたかというと、「日本教」という一つの宗教です。

 ただ、わかりやすくするために、まず西洋の宗教であるキリスト教から言います。民主主義は悪い言い方をすると、実は文明がある程度崩れ去ってからできた政治手法です。これはルネッサンスなど、いろいろなヨーロッパの歴史を研究していくとわかります。

 ヨーロッパはルネッサンスから徐々に神を失ってきました。1500年から20世紀までのヨーロッパの500年は、神を失い続けてきた歴史です。神を失い続ける歴史の中から、ヨーロッ...