●ゴッドから出た民主主義は滅びるのではないか
「民主主義を考えるための十二の根本原理」の第11です。これは民主主義が出来上がるときの英国のトーマス・ホッブズという哲学者の重要な言葉です。これが民主主義社会を作るときの英国人の根源的な考えの一つになっています。
トーマス・ホッブズは300年ぐらい前の人で、トーマス・ホッブズとジョン・ロックが民主主義では一番有名です。フランス人だとジャン=ジャック・ルソーが有名です。この人たちの哲学思想をもとに民主主義社会、(つまり)西欧民主主義が出来上がりました。
トーマス・ホッブズの『市民論』という本に書いてある言葉です。民主主義社会はどういう社会かというと、貴族社会ではありません。それまでヨーロッパは、貴族社会でした。貴族社会から市民社会に移ったところから、民主主義になっていくといわれています。だから民主主義イコール市民社会で、「みんなが市民」ということです。
この市民社会における悪人とは何か、トーマス・ホッブズが非常に哲学的に分析しています。その結論として書いてあることが、根本原理第11の言葉です。「(市民社会における悪人とは、)大人に成長したのに子どものままの者、あるいは子どもじみた精神を持った人」と、トーマス・ホッブズは言っています。こういう人が市民社会の敵であると書いてあるのです。
だから、われわれが作りたい、市民の協働で出来上がる市民社会にとって最も悪質な人間は、幼稚な人間ということです。大人になったのに子どもっぽい人。あるいは子どもじみた精神を持っている人。「子どもじみた精神を持っているだけで、市民社会では落第だ」とトーマス・ホッブズは言っているのです。
アメリカおよびイギリス、つまり西欧が生み出した民主主義は、神から生まれた民主主義です。神から生まれた民主主義は、このように考えるのです。つまり、本当にみんなが成熟して、大人としてふるまえる。立派な人物にならなければ、本当の民主主義社会は実現できない。これがゴッドから生まれた民主主義の限界を表す一つの言葉だと思い、「民主主義を考えるための十二の根本原理」の11に取り上げました。
これと全く違う考え方をするのが日本社会です。日本社会は、子どもを「悪い」と思っていません。西洋社会では子どもは「悪」です。子どもは躾(しつ)けられるべき悪人で、「ち...