●民主主義は人を支配するための一つの方便
「民主主義を考えるための十二の根本原理」の第4を扱います。ソロンという古代ギリシアのアテネの有名な政治家の言葉です。ソロンは民主主義を考える場合、一番わかりやすい政治家です。アテネのポリスにおける直接民主政治を初めて確立した一人として誰もが知っています。
ソロンは手記が残っていて、『断片』といわれます。その中にある、民主主義とはどういうものかを考えるうえで一番重要な言葉です。
ここでは挙げていませんが、ソロンは「民主主義は、人を支配するための一つの方便、一つの政治形態に過ぎない」とも言っています。これが真実です。これも民主主義が何かを考える場合に、非常に考えなければならない言葉です。最初に民主主義を作った人が、そう言っているのですから。
その彼が同じ『断片』の中で言っている言葉です。私は非常に好きで、ずっと座右銘にしています。
根本原理の第4「我々は人間なのだから、人間のことを思わなければいけないと言う人たちに従ってはならない」。これは民主主義を確立した人が言っているのです。重大な言葉です。
この裏に何があるかというと、実は政治家が喋ることは全部、政治手法なのです。人間というのは、歴史を見ると奴隷制や封建制も含めて、全部その時代にどうやったらたくさんの人を簡単に治められるかを考えているのです。民主主義を標榜したソロンも、その中の一人です。アテネの民主主義です。
民主制を世界で初めて政治哲学として採用したアテネでその政治を作った人が言っているのですが、民主主義をやるときに必ず言うのが、「人間にとって、これが一番いい」というものです。けれど、「人間のため」と言った者は絶対に信じてはいけないと、本音を喋っているのです。
実は、政治の中でも正しかった政治は日本の「憲法十七条」や「養正」(の話)でも喋りましたが、褒め合うとか、愛がどうしたとか、「これが本当に素晴らしい」というものは家族主義にはありません。だから、「素晴らしいものだ」と言えば言うほど、本当は嘘ということです。
今の民主主義でどれくらい嘘が多いか。ヒューマニズムの名のもと、全て「人間のため」「命のため」「安全のため」「幸福のため」と言っています。だから、ソロンの理論でいうと、(つまり)民主主義を(古代)ギリシアで作り上げた最初の...