●「絶対者」とはいかなるものか
根本原理の第5です。ここからはしばらく、西洋の民主主義がどのように樹立していったかを喋ろうと思います。
根本原理5は「心に絶対者を持つ」です。特に西洋で強かった思想で、ルター、カルヴァン、ノックスなど宗教改革者が言っています。民主主義を生み出すための根本です。これが根本だとわからないと、民主主義が何かわかりません。
「心に絶対者を持つ」の「絶対者」は、西洋ではキリスト教で生まれた神、つまりゴッドです。今まで何度か話した日本文明では先祖で、だから先祖は絶対でした。絶対であることがわからないと、本当の民主主義、本当の命の平等性は樹立できないということです。
わかりやすく説明すると、西洋ではルター、カルヴァン、ノックスから始まった宗教改革で、心の中に自分の神を持たなければダメとしました。神と自分との結びつきです。同時に、社会活動としては神を失うほうにどんどん進んでいきました。
西洋では1500年から20世紀までの500年間、「絶対者を持とう」とする動きと「神をどんどん失っていく」という2つの動きが、潮流としてせめぎ合っていたのです。これが、われわれが文学などでも勉強している西洋文明です。この中から民主主義が生まれてきたのです。
西洋はキリスト教ですから、絶対者である神とは聖書です。その聖書が家族、親子、夫婦について言っている言葉があります。例えば、「マタイによる福音書」第10章34節以下のユダヤ人が神の言葉を聞くくだりです。神の言葉と抵触する場合は、「女房を放り出せ」「子どもは離縁しろ」「友人とは絶交しろ」と、はっきり書かれているのです。
これがあって初めて、正しい民主主義に移行できるのです。これがなくなったから、今の民主主義はヒューマニズムに堕してしまったのです。
一方、日本の場合、もう一度言いますが先祖崇拝です。だから先祖が絶対です。日本人にとって先祖は、神と一緒です。だから、「先祖が好き」「先祖を尊敬している」程度では、正しい民主主義は生み出せません。
だから「自分が一つでも間違いを犯したら、先祖のもとには死んでも戻れない」という心境になって初めて、ある程度、民主主義を実践することができる。このことを歴史が表しているのです。
●ルソーの理想は「日本の縄文文明」とも共通するのではないか
先ほど出たル...