民主主義を考えるための十二の根本原理
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「これだけは自分の信念だ」といえるものを命懸けでつくる
民主主義を考えるための十二の根本原理(9)命を懸けた一つの哲学を持つ
執行草舟(実業家/著述家/歌人)
英国の思想家トーマス・アーノルドは、英国ジェントルマンを作るため、たくさんのパブリックスクールを作った。パブリックスクールを経てオックスフォードやケンブリッジ大学を卒業した人たちに求めたのは、「命を懸けた一つの哲学を持つ」という教育システムである。そうした英国ジェントルマンがいた19世紀、彼らがもう一つ掲げたのは「約束は死んでも守る」である。どんな小さな国との条約も守った英国。世界を支配したのは、実は信用だった。これが理想とする民主主義社会で、今言われている民主主義とは全然違うのである。(全13話中第9話)
時間:11分14秒
収録日:2025年1月16日
追加日:2025年5月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●「命を懸けた一つの哲学」――本当の民主主義社会を作るために必要なもの


 「民主主義を考えるための十二の根本原理」の第8回目に移りたいと思います。「命を懸けた一つの哲学を持つ」ともう一つ、「約束は死んでも守る」です。

 これがわれわれが今、20世紀に至る民主主義社会を作るときのヨーロッパ人、特に英国人の理想の思想でした。英国人が民主主義社会を作るときに、一番最初に理想と思った思想が今挙げた2つです。これをもう一回思い出して絶対的なものと考えると、民主主義の本質がわかりやすくなります。

 これは英国人が19世紀に立てた考え方です。「命を懸けた一つの哲学を持つ」を唱えたのは、英国のトーマス・アーノルドという思想家です。彼は19世紀に英国でパブリックスクール(名門私立学校)をたくさん作り、パブリックスクールの教育制度を作った教育者です。(パブリックスクールの一つ)ラグビー校の校長をしていました。彼が19世紀に英国ジェントルマンを作る教育を行い、世界的な成功を収めたのです。

 みんなも知っている英国が七つの海を支配して、英国が世界的になった原因は、すべて英国人の生き方です。「英国ジェントルマン」と呼ばれた人がいて、そのジェントルマンの数が英国で2万人になったときです。

 ジェントルマンがどういう人間か、トーマス・アーノルドは最初からわかっていました。それをこれから作り上げるためにウィンチェスター、ハロウ、イートンといった名門校を整備し、そこからオックスフォードとケンブリッジに上がっていく教育制度を作ったのです。

 トーマス・アーノルドが作ろうとした英国ジェントルマンは「立派な人」という意味です。「何ができる」ではなく、立派な人物を作るのが教育と考えて始めたのです。そのアーノルドが言った言葉が「命を懸けた一つの哲学を持つ」です。

 イートンから始まって、オックスフォード、ケンブリッジを出る。そこで徹底的にギリシャ語、ラテン語を中心に、古典と全ての教育を施す。そこで何を教育したいのかについて、「これしかない」と言ったのが、この言葉です。

 オックスフォード大学、ケンブリッジ大学を出た時点で、その人が自分の一生を懸けて、命を懸けて一つだけやる、「これだけは俺の信念だ」というものを1つだけ作る。2つはダメで、その1つ作らせるための教育が英国のジェントルマン教育なのです。そ...

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