●西部劇では殺されても「殺された自分が悪い」
今回は民主主義を考えるための十二の根本原理の第6ということで、お話しします。
欧米のことですが、「独立自尊、すべてが自己責任」。われわれが一応「民主主義の先生」とか「民主主義の最初の歴史」と言っているのがアメリカ、アメリカ社会ですよね。そして、アメリカの独立戦争、アメリカの独立宣言を「民主主義の根本」とわれわれは言っています。
もう現代社会に近いところに話は来ていますが、このアメリカの独立憲法や独立戦争、そして独立してしばらくの人たちによる文献を読むと、民主主義を本当に設立しようと思ったときの人間の考え方は、今の民主主義と全然違います。このことを根本原理6で理解していただきたいと思います。
私はエリック・ホッファーという、アメリカの哲学者が大好きです。エリック・ホッファーは学歴もなく沖仲士をしていた男ですが、素晴らしい本をたくさん書いたアメリカの代表的な哲学者です。
このホッファーが1930年代の不景気の時代に、肉体労働者としてアメリカ中をトラックに乗って回っていた時代を書いた手記があります。『(エリック・)ホッファー自伝』というもので、アメリカが民主主義に対して本当に正しかった様子が書かれています。
どのくらい正しいかというと、1930年代というと太平洋戦争の少し前です。ホッファーが何十年もアメリカを回る中で、平等というものを疑っている人に会ったことが一回もないそうです。
季節労働者ですから、大体は敗残者です。トラックに乗って、いろいろな賃仕事をしている。でも自分の人生がダメだったこと、自分が人生で失敗したこと、自分が貧乏であること、これらについて一人残らず全部、自己責任だというのです。
アメリカは素晴らしい国で、あらゆる機会を与えてもらったけれど、自分は何もかもダメだった。自分の欲で失敗した。こういうことを喋っている。だから、アメリカという国に文句を言っている人にも、社会に文句を言っている人にも、一人も会ったことがないというのです。
これは大変なことです。私は民主主義が本当に機能したときに、そういう社会ができると言いたいのです。アメリカの場合、一瞬ですが1930年代にありました。太平洋戦争の少し前です。
だから日本は、アメリカが独立後150年ぐらい経って、最高のところに来たときに戦争...