●物価に比べ、なかなか上がらない実質賃金
さて、経済動向はどうなっているかですが、これは物価と賃金の関係なのです。物価は、さすがに上がり始めました。特に、あれだけ円安になっているので、輸入物価は上がりますからね。ところが、賃金が上がらないのです。どういうことが起きているのかというと、一昨年の2013年の夏からずっと実質賃金は下がっています。
例えば、こういうことが起きているのです。2013年7‐9月は、物価は0.9、その次の10‐12月は1.4、次の2014年1‐3月は1.5パーセント上がりました。賃金はどうかというと、名目賃金は同じ期間の2013年7‐9月にマイナス0.4パーセント下がっています。次の期も上がってもほんのわずかだったりしています。ですから、実質賃金は下がっていると言えます。また、消費税が上がってから物価は、去年の2014年4‐6月で3.6パーセント、7‐9月が3.3パーセントになりましたけど、名目賃金の方は4‐6月が0.8、7‐9月は1.5パーセントですから、もうぶざまと言っていいほどに下がっているのです。
よくこれで日本の国民はおとなしくついていっているなと思いますね。これがギリシャだったら、大変な話になると思います。ですから、「アベノミクスの信任を問う」といって選挙を決断した安倍さんは度胸があるな、と思います。そういう状態が今、続いているのです。
●円安でも輸出が伸びない三つの理由
円安になったのだから、輸出が伸びるだろうと期待されたのですが、ほとんど伸びていないのですね。これから伸びるのか? とも言われていますが。
輸出が伸びないのはどうしてなのだろうというと、一つは運が悪いのです。ちょうどアベノミクスが出た頃から、世界が非常に不況に入り始めたのです。特に、アメリカがテーパリング(量的金融緩和の縮小)を始めてしまったので、新興国の通貨が下落し、経済がもう軒並み低迷してしまいました。さらに、尖閣問題があって、なんと中国との取引が3割以上減ってしまったのです。ですから、もう輸出しようにも伸びないのです。
それから、もう一つ、輸出の伸びない理由としてあるのは、日本の主要企業の価格政策が変わったからです。以前は、物価が下がると、日本企業はアメリカやヨーロッパでの製品の値段を下げたのです。今はほとんど下げていません。ど...