待ったなしの経済動向と安倍首相の総選挙断行
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
総選挙の裏側にある安倍首相の思惑
待ったなしの経済動向と安倍首相の総選挙断行
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
日本の経済動向は決して楽観できる状態ではない。円安でも輸出が伸びず、その他さまざまな要因のため、経済成長に点火しない状況なのだ。消費税引き上げを延期し、急きょ総選挙に踏み切った安倍首相の本音はいかなるものか。物価上昇率、成長率などの数字に垣間見える黒田総裁、安倍首相の思惑を島田晴雄氏が解説する。(2015年1月26日開催島田塾第120回勉強会島田晴雄会長講演「年頭所感 アベノミクス 2年間の経験とこれからの日本経済」より、全10話中第7話目)
時間:11分29秒
収録日:2015年1月27日
追加日:2015年3月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●物価に比べ、なかなか上がらない実質賃金

 
 さて、経済動向はどうなっているかですが、これは物価と賃金の関係なのです。物価は、さすがに上がり始めました。特に、あれだけ円安になっているので、輸入物価は上がりますからね。ところが、賃金が上がらないのです。どういうことが起きているのかというと、一昨年の2013年の夏からずっと実質賃金は下がっています。

 例えば、こういうことが起きているのです。2013年7‐9月は、物価は0.9、その次の10‐12月は1.4、次の2014年1‐3月は1.5パーセント上がりました。賃金はどうかというと、名目賃金は同じ期間の2013年7‐9月にマイナス0.4パーセント下がっています。次の期も上がってもほんのわずかだったりしています。ですから、実質賃金は下がっていると言えます。また、消費税が上がってから物価は、去年の2014年4‐6月で3.6パーセント、7‐9月が3.3パーセントになりましたけど、名目賃金の方は4‐6月が0.8、7‐9月は1.5パーセントですから、もうぶざまと言っていいほどに下がっているのです。

 よくこれで日本の国民はおとなしくついていっているなと思いますね。これがギリシャだったら、大変な話になると思います。ですから、「アベノミクスの信任を問う」といって選挙を決断した安倍さんは度胸があるな、と思います。そういう状態が今、続いているのです。


●円安でも輸出が伸びない三つの理由

 
 円安になったのだから、輸出が伸びるだろうと期待されたのですが、ほとんど伸びていないのですね。これから伸びるのか? とも言われていますが。

 輸出が伸びないのはどうしてなのだろうというと、一つは運が悪いのです。ちょうどアベノミクスが出た頃から、世界が非常に不況に入り始めたのです。特に、アメリカがテーパリング(量的金融緩和の縮小)を始めてしまったので、新興国の通貨が下落し、経済がもう軒並み低迷してしまいました。さらに、尖閣問題があって、なんと中国との取引が3割以上減ってしまったのです。ですから、もう輸出しようにも伸びないのです。

 それから、もう一つ、輸出の伸びない理由としてあるのは、日本の主要企業の価格政策が変わったからです。以前は、物価が下がると、日本企業はアメリカやヨーロッパでの製品の値段を下げたのです。今はほとんど下げていません。ど...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(5)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈下〉
『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏