作風と評論からみた印象派の画期性と発展
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
印象派を世に広めたモネ《印象、日の出》、当時の評価額は
第2話へ進む
マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性
作風と評論からみた印象派の画期性と発展(1)セザンヌの個性と現代性
安井裕雄(三菱一号館美術館 上席学芸員)
印象派の最長老として多くの画家に影響を与えたピサロ。その影響を多分に受けてきた画家の中でも最大の1人がセザンヌだが、その才覚は第1回の印象派展から発揮されていた。画面構成や現代性による解釈から、セザンヌ作品の特徴を解説する。(全4話中第1話)
時間:10分04秒
収録日:2023年12月28日
追加日:2025年7月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●模写の域を超えていたセザンヌの作品


 カミーユ・ピサロは印象派の最長老の画家です。彼は多くの画家に教えを授け、影響を与えました。印象派にとってもっとも重要な人物の1人と考えることができると思います。ピサロが教えた、ピサロの教えの影響を受けた画家の中でも最大の1人はこのセザンヌだと思います。

 この作品、ピサロが当時住んでいた自分の住まいの近くのルーヴシエンヌというところを描いています。

 ピサロはこの作品をセザンヌに貸し与えているのです。セザンヌはこの絵を模写しています。まずピサロの作品から見ていきますと、秋、冬が近いでしょうか。木の葉が強い風で舞い落ちている状態です。太陽はかなり角度が浅くなっていますので、夕暮れに近い時間帯です。母親と子ども、おそらく娘さんだと思いますが、手をつないで光の方向、夕焼けの方向に歩いていきます。それを取り囲むように前景には落ち葉が描写され、石のベンチあるいは生け垣が奥へとつながっていきます。

 中景では、このルーヴシエンヌの傾斜地にありました畑、そして家々が見えますし、さらに遠景には、これは古い時代の遺跡だと思いますけれど、ちょうどアーチが描き込まれているのもお分かりいただけますでしょうか。

 この作品を借り受けて、セザンヌは模写をします。

 実はこの作品の時点でセザンヌは自分の師であるピサロとはかなり違った表現にすでに達してしまっているのです。ひょっとしたらセザンヌはピサロの作品を模写しようと思えば、そのままきれいに模写することができたのかもしれません。ただ、ピサロの作品に比べて、この作品ではすでにセザンヌの個性が色濃く出ているように思います。というのは、より色彩が鮮やかに、ビビッドになってますし、明暗比、色です、明るい部分、暗い部分の対比が強くなっています。画面全体、構図がピサロの作品は奥に抜けていくような広さを感じさせるものでした。

 セザンヌの作品は、これはもう模写ではなくセザンヌの作品だと思うのですけれど、一回り小さいのです。そのせいもあってか、画面の全体の構成がより引き締まっています。こういったセザンヌの特徴が早くもこの模写から表れているというところがたいへん面白いところだと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己

人気の講義ランキングTOP10
資本主義の再定義…哲学で考える(4)共感としての見えざる手
利とは、義の和である…なぜ道徳的なふるまいが企業活動に重要か
中島隆博
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(1)軍人の本義を貫いた根本博中将
ソ連軍から在留日本人4万人を守れ…内蒙古での「戦後」の激闘
門田隆将
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
戦前派一日本人の憂鬱~太平洋戦争と敗戦後を顧みて…(1)
『きけわだつみのこえ』を読むと今でも涙が止まらない
野田一夫
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(1)なぜ『神国日本』なのか?
ラフカディオ・ハーンが解明した「美しい日本」の秘密と未来
賴住光子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保