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構造不況でも全体は好調―80年代後半の日本と酷似

ゴーストタウン現象の真相(2)日本も同じ問題を経験

瀬口清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
情報・テキスト
中国には多くのゴーストタウンが存在するが、なぜ中国にゴーストタウンが増えたのか。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・瀬口清之氏は三つの原因を挙げて解説しながら、中国の不動産市場は今後どう動いていくのか、その見通しを語る。(全15話中第5話目)
時間:11:09
収録日:2015/01/05
追加日:2015/03/17
タグ:
≪全文≫

●中国にゴーストタウンがたくさんある原因1:住宅の造り過ぎ


 また少し話を元に戻しますが、今まで申し上げてきましたように、中国の不動産は、足元が安定をしてきていますが、それでも、今いろいろな新聞や雑誌、テレビを見ますと、ゴーストタウンの報道が相変わらず続いています。それはなぜなのか、ご説明差し上げます。

 中国では、実際にゴーストタウンがたくさんあります。これには、主な原因が三つあります。

 一つ目は、住宅の造り過ぎです。2009~2010年にかけての超金融緩和、財政刺激策の時、不動産がどんどん儲かるということで、特に地方で異常なほどの不動産開発投資が行われました。それが、住宅の建設につながって、住宅の造り過ぎをもたらしました。

 最近になって、中国政府は、不良債権の処理をどんどん強化しようということで、地方政府の財源になっていた「融資平台」といわれる融資のプラットフォームへ金融機関からの資金の融資をかなり厳しく制限し始めました。その結果、資金の流れが停滞し、住宅の在庫の過剰感がより高まっているのです。

 結果として、特に、あまり人気のない地方の3~4級都市における住宅の過剰在庫が最近目立ってきているというのが、一つの大きな原因になっています。


●中国にゴーストタウンがたくさんある原因2:石炭産業の不振


 二つ目が石炭産業の不振です。

 中国の内モンゴルや山西省といった石炭の産地では、少し前まで石炭のおかげで大変景気がよい時代が続いていました。ところが、最近になって石炭の値段が急速に下がってしまい、その結果、石炭産業が不振に陥りました。そうして、それらの町がいずれもゴーストタウン化してしまったという問題が生じているのです。


●中国にゴーストタウンがたくさんある原因3:過剰設備の問題


 三つ目は、何度も繰り返しお話ししていますが、過剰設備の問題です。

 鉄鋼、セメント、ガラス、造船、太陽光パネル等々の過剰設備を抱えていた都市、いわば企業城下町は、企業自身の設備投資が削減されてしまいますと、生産量とともに雇用も減ります。その結果、企業城下町にゴーストタウンがどんどんと目立つようになったという状況なのです。

 そういう意味で、三つの要因を背景に、特に3~4級都市の不動産市場が今まだかなりの過剰在庫を抱えた状態で、ゴーストタウンという厳しい状況に陥っているのが現状です。これらが回復するには、数年かかるだろうと見られています。


●好調を維持しながら、まだら模様の構造不況業種を抱えている現在の中国


 では、中国全体が、ゴーストタウンによって不動産不況になり、金融機関の融資が焦げ付き、不良債権問題が悪化して、金融システム不安になるのか、あるいは、かつて日本がバブル崩壊後に経験した不動産不況や、欧米がリーマンショック後に経験した不動産不況、バブル崩壊現象と同じことが中国でも起こるのかと言うと、答えはノーです。

 中国では、まだ高度成長が続いています。過剰設備を抱えている産業や石炭産業の不振といった構造不況はありますけれども、一方で、エレクトロニクス産業、IT産業、自動車産業、それから、最近特に沿海部を中心に発展している流通業、消費関係の事業は、今のところまだまだ好調です。

 このような格好で、全体としては好調を維持しながら、まだら模様の構造不況業種を抱えているのが、現在の中国の景気動向なのです。


●主要都市ではゴーストタウンは見当たらない


 中国全土を見回しますと、例えば、沿海部の主要都市である北京、上海、広州、深圳、それから内陸部の主要都市である重慶、武漢、成都、西安では、非常にバランスのいい産業の集積が行われていますので、現状全くゴーストタウンは見当たりません。しかし、主要な産業の集積地ではない構造不況の所に行くと、ゴーストタウンがたくさん見られるのです。

 したがって、少し探しに行けばゴーストタウンは見られます。ただ、それが中国全体を代表しているかと言うと、決してそうではありません。それが今の中国の状況です。


●1980年代前半、安定成長期の日本にもゴーストラインはたくさんあった


 メディアは、どうしてもマイナス面を強調しますので、ゴーストタウンのことばかりたくさん報じていますけれども、実は、ゴーストタウンではない所もたくさんあることを報道していないという問題があります。この問題は、実は日本でも1980年代前半に同じようなことが見られていました。

 当時は、「重厚長大」から「軽薄短小」へ、と言われていた時代で、重厚長大の代表産業である鉄鋼、造船、重電といった産業は、今の中国と同じように非常に厳しい状況に陥っていました。

 その時、私自身は日銀の神戸支店で産業助成を担当し、兵庫...
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