中国語を日本語で読めるようにした「漢文教育」は日本人の途轍もない発明である。日本はかつて中国文明を取り入れるために中国の文献から学ぶ際に、中国語で読むのではなく、訓読できるように返り点などの工夫を重ねた。これは大変な叡智である。同じことが英語にもいえる。日本は英語教育に失敗したといわれているが、そうではない。明治・大正期、当時の教養人が英語の文献を読んで研究を重ねたことで、世界でも類例のない意味での西洋化ができたのだ。大事なのは外国語を喋れるかどうかではない。中身のある話ができるかどうかである。しかし今、日本人は漢文教育のいい部分を忘れてしまい、話すための教育一辺倒になってしまっている。(全10話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
≪全文≫
●漢文訓読は日本人の途轍もない発明
執行 次は4番目です。私の理論をわかりやすいようにまとめた4番目は漢文です。漢文は以前、神藏さんとも話しましたが、日本人の途轍もない発明です。こんなものを発明すること自体が日本教ということです。つまり全く異質なものを持ってきて、核融合して、全く新しい価値を作り出すということです。元のものはわからないということです。
漢文をいくら読んでも、中国語ができるようにはなりません。だから元がわからない。普通の国の考えだと、中国文明を取り入れるには中国語を習わなければならない。それが朝鮮であり、ベトナムであり、みんなそうです。だから学んで属国になってしまった。
―― そうですね。
執行 でも日本だけは違った。あの当時は通信網がないから、全部書物でした。中国文明を丸々取り入れるには、中国の文献を全部読めばいいわけです。そこで日本語で読めるようにした。これは、出来上がっていると「ああ、なかなか便利だな」と思いますが、これをつくり上げるのは、とんでもない叡知です。
―― そうですよね。
執行 まずつくろうとすることがとんでもない叡知です。これがあったために日本は中国文明を全部取り入れて、中国のエキスを全部吸収しながら全く中国の歴史の影響を受けなかった。全てを縄文以来の日本語で読んでいるのですから。この叡知は世界的だと思います。これが核融合を起こす日本の陰陽対立、陰陽交錯の中から生まれたと。
―― 確かにそうです。
執行 世界中、このような文明の取り入れ方をした国は、一国もありません。今も日本人は、知らずになんとなくやっていると思います。だから、われわれは英語がうまくならないですよね。
これは漢文の伝統だと思うのです。確かに英語を取り入れているけれど、心の底から英米と一緒になってはいない。だから、英語がうまくなる国の人は、私から見ると「似非英米人」になる人なのです。
―― 確かにそうです。似非英米人です。
執行 東南アジアなどを見ていると、なっています。植民地の人などには(英語が)うまい人がいます。でもあれは似非英米人です。
―― その言い方はすごくわかります。
執行 でも日本人は、頭のいい人もそうはならないと思うのです。日本人として英語を勉強しているから、なかなか(英語が)うまくならないのです。融合しない。日本人は漢文を...