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かつての日本よりも速く農林漁業労働人口比率が低下

中国高度成長は2020年まで(1)都市化の減速

瀬口清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
情報・テキスト
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・瀬口清之氏は、中国の高度成長は2020年頃をめどに終わるのではないかと読んでいる。今までの高度成長を支えてきた二つの要因と、すでにその成長のかげりを示すマイナス要因について、グラフによる数字データを示しながら説明する。(全15話中第6話目)
時間:10:36
収録日:2015/01/05
追加日:2015/03/18
タグ:
≪全文≫

●中国の高度成長を支える二つのエンジン


 ここまで、中国の経済の現状を評価してきましたが、次に、その先行きについて考えていきたいと思います。中国の高度成長はいつまで続くのかというテーマでお話をさせていただきます。
 
 私のざっくりとしたイメージでは、2020年ごろまで高度成長は続くのではないかというように見ています。この考え方の背景にあるのは、二つのエンジンに対する評価です。

 中国の高度成長を支えている、二つの大きな要因があります。一つ目が都市化、二つ目がインフラ建設です。


●都市化で生産性、消費水準が上昇する


 都市化につきましては、農村から都市にどんどん労働力が集まってきます。農村の農林、漁業の労働力が製造業、サービス業に移ってくるとともに、その生産性が上がります。それのみならず、都市に移住すればそこで新しく住宅建設をします。それが住宅需要につながります。

 さらには、中国では農村と都市の所得格差が非常に高いですから、所得の低い農村から都市に移ってくると、生活パターンまで変わります。農村にはいまだに高校以上の学校がなく、塾もありません。それから、大きな病院がないため、大きな病気になったら都市に来るしかありません。それから、あまりレジャーも発達していませんし、レストランもあまりないのです。

 こういう状況ですので、農村から都市に移ってくると、とたんに教育の出費が増え、レストランに行くようになり、レジャーも楽しむようになり、病院にも行くようになるということで、急速に消費水準は上がります。

 このように、さまざまな要因によって都市化は中国の経済成長を押し上げているというのが、この大きな経済成長の背景になっています。


●経済誘発効果の高い高速鉄道建設

 
 二つ目の要因のインフラ建設ですが、これは日本でもかつて見られた現象です。日本の高度成長期の最も経済誘発効果の高い投資は何だったかといいますと、それは公路の建設でもないし、石油化学コンビナートの建設でもなく、都市の建設でもありません。一番効いたインフラ建設とは、東海道新幹線、それから東名高速、これらが日本の高度成長の中で最も経済誘発効果が高い二つのエンジンだったと言われています。

 今、この現象が、中国でも全く同じように起きつつあります。2008年8月に、北京―天津間に初めて高速鉄道が開通しました。そこからまたどんどんと、今も高速鉄道の建設が続いてきています。これはまた、後ほど少し詳しくご説明します。


●高度成長にブレーキをかける三つの要因

 
 この都市化とインフラ建設という二つの要因が、2020年ごろまでは続くだろうというように考えられます。そして、2020年を過ぎた頃に、実はこの二つのエンジンが徐々にスローダウンしていくと同時に、今度はマイナスのブレーキ要因が一つ増えます。それが、労働力人口の減少が加速するという問題であります。

 この三つのマイナス要因、二つのエンジンのスローダウンと、労働力人口の減少の加速というのが相まって、中国は2020年ごろからは、かなり違った経済成長の局面に入るだろうと考えられ、それが、高度成長の終わりを意味すると考えられます。

 ちなみに、労働力人口は先ほども申しましたが、2011年をピークに既に減少が始まっています。しかしながら、まだ農村にはたくさんの余剰労働人口がありますし、労働力人口の減少のスピード自身もまだ緩やかです。しかし、2020年代に入りますとこれが加速していき、農村の余剰労働人口も減少してくるということで、労働力の減少が本格化するのが2020年代ということです。


●低下傾向が顕著な農林漁業労働人口の比率

 
 さて、もう少しこの中身について詳しくご説明をしていきます。

 まず、都市化ですけれども、都市の人口比率は、足元の2013年で53.7パーセントに達しています。この都市の人口の上昇、農村人口の減少というのは、これからも続くとみられているわけですが、労働力人口の移動からみますと、農村が減って都市が増えるという都市化とは、産業分野でみますと、農林漁業が減って、製造業が増えるということになります。お手元のグラフを見ていただきますと、赤い折れ線グラフで示したのが、中国の労働人口全体に占める農林漁業労働人口の推移です。その横に青い線で書いてあるのが、日本の推移です。

 実は、日本も1950年から1980年までの30年間に、農林漁業労働人口の比率が急速に低下し、48.5パーセントから11パーセントまで下がってきています。これが、日本でも都市化の時代を経てきていることを意味しています。

 このように、この1900年代後半の30年間で日本の農林漁業労働人口比率は36、7パーセント、約年間平均で...
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