アレクサンドル・ネフスキーは13世紀、モンゴルに従属しつつも、カトリック改宗を迫る「北の十字軍」を打ち破りロシア正教を守った英雄とされる。20世紀のソ連では、エイゼンシュテイン監督が『アレクサンドル・ネフスキー』という映画を撮る。これはスターリンの思惑を反映し、対独警戒心を煽る国策映画であった。そのため、ソ連国内では独ソ関係の変遷に伴い上映と禁止が繰り返された経緯もある。現代のプーチン政権下でも、西欧の影響を排除しロシア正教を守った象徴としてアレクサンドル・ネフスキーが最大の英雄に位置づけられており、歴史的英雄の描かれ方に潜む政治的意図とロシア正教の役割を浮き彫りにしている。(全10話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●北の十字軍を打ち破るロシアの英雄「アレクサンドル・ネフスキー」
―― 一方で、これも壮絶な話だと思いますけれど、「タタールのくびき」に入らなかったほうですね、ポーランド、リトアニアの影響下とおっしゃったところですが、これはそれこそローマ・カトリックと東ローマのギリシャ正教会との対立の中で、「北の十字軍」といいますか、それが入ってくることになってくるわけですね。
上月 はい。この「北の十字軍」という表現も、少なくとも日本の高校の教育では紹介しませんけれど、バルト海や北ヨーロッパのほうはカトリック化してなかったのです。それぞれの土俗宗教を持っていたのです。
そこでローマ教皇は、ロシア人たちがロシア正教を信じていることに対して、この連中をカトリックに改宗させなくてはいけないということになってくる。ここで、ロシアに向けて北の十字軍が送り込まれるのです。ここで有名なロシアの英雄が誕生しました。これがアレクサンドル・ネフスキーという人でした。
アレクサンドル・ネフスキーはノヴゴロドの王子様だったのですけれど、最初にスウェーデン軍との戦いで、ネヴァ川で相手を破る。それ以降は「ネヴァ川の人」という意味でアレクサンドル・ネフスキーということになる。今度はドイツ騎士団が攻めてくるのですが、ドイツ騎士団を氷上の戦いで破るのです。
●国策映画『アレクサンドル・ネフスキー』に込められたメッセージ
上月 これは20世紀、1938年に作られた映画に『アレクサンドル・ネフスキー』というエイゼンシュテイン(監督)の映画があって、すごく面白い映画なので、(テンミニッツ・アカデミーの)視聴者の方も機会があったら是非観ていただけたら面白いと思います。そこでは氷上の戦いが描かれているのですけれど、そのシーンの最初のほうでモンゴルのくびきの話が出てきて、アレクサンドル・ネフスキーは「モンゴルには従っていこう」と(いうことで)モンゴルへの朝貢を続けるのです。しかし、宗教の改宗を迫ってくるドイツ騎士団とは氷上で決定的な対決をして、それを打ち破るという映画なのです。
『アレクサンドル・ネフスキー』についてはエイゼンシュテインが作ったのですが、これはスターリンの指示に基づいて作ったのです。この頃のエイゼンシュテインの映画はものすごい数の馬や人が出てくる。それは国策映画だからですね。
―― 国...