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北朝鮮崩壊後の「大韓国」を念頭に冷静に付き合うべき

インド太平洋の基本的構造(3)韓国との付き合い方・台湾の見方

白石隆
公立大学法人熊本県立大学 理事長
情報・テキスト
仮に朝鮮半島と台湾で大きな変化が起こったら、日本にどのような影響が及ぶのだろうか。中国との関係も含め、今後の東アジア情勢を占いながら、政策研究大学院大学(GRIPS)学長・白石隆氏とともに両国との付き合い方や見方を模索する。(全3話中第3話目)
時間:11:07
収録日:2015/01/21
追加日:2015/06/11
カテゴリー:
≪全文≫

●経済発展を遂げ、日本への遠慮が要らなくなった韓国


―― 先生、もう一つお聞きしたいのは、韓国との付き合い方についてです。日本は、日韓条約の時、軍事政権と結んでいますが、民主化した後は、大統領が変わるたびに、それをもう一回御破算にして、いろいろなことを言ってきます。韓国と付き合うには、どのような組み立てが必要でしょうか。

白石 少し構造的なことから申しますと、かつて朴正煕や全斗煥などがいた時代、あるいは、金泳三の時代もそうだと思いますけれど、日本の経済力が圧倒的に強かった時代でした。そうすると、韓国の安全保障と経済発展を考えたとき、どの国が大事かと言うと、安全保障は当然アメリカで、経済発展は、アメリカのマーケットと、日本の資金と技術となります。

 私は、基本的に韓国はいわば反日を基本に国民がつくられた国だと思っていますので、当然のことながら、歴史に由来する問題をある程度抑えなければいけなかったと思います。

 ところが、過去10年ほどを見れば、安全保障はアメリカと中国に任せておけばいいわけです。例えば、北朝鮮をどう抑えるかについてですが、中国には日常的に抑えてもらって、アメリカには大戦争など愚かなこと考えないように抑えてもらうわけです。つまり、この二重のヘッジをもって安全保障はできていると言えるのです。

 経済に関しては、韓国の対中輸出はもう25パーセントです。技術的には、サムソンなどはすでに日本には勝ったと思っているでしょうし、むしろシリコンバレーの方が競争相手になっていると思っているでしょう。

 そうすると、日本に対して遠慮することは何もなくなり、韓国の人たちの思っていることが素直に出てくることになります。


●朝鮮半島が中立で安定し繁栄した状態になることを望む日本


白石 では、それを国のトップが抑えられるかと言うと、幸か不幸か、朴槿恵大統領は朴正煕のお嬢さんで、お父さんがやったことをノーとは言えないし、同時に、国民的な期待に対してもノーとは言えないため、強く出ざるを得ない。そうすると、日本の中でも、そういった韓国の事情を知らない、あるいは、関心のない人は、だんだんイライラが募ってくる。こちらがイライラすれば、向こうもイライラする。完全に悪循環に入っていると思います。

 では、何ができるのか。私は、正直に言って、一種のヘイトスピーチのようなものは法律で禁止した方がいいと思います。日本と韓国だけの問題ではなく、世界的に見て本当によくないことだからです。同時に、韓国とはクールに付き合うしかないと思っています。その上で、最終的に朝鮮半島はどうなるのか、頭の体操として考えてみるといいでしょう。

 われわれは心のどこかで、北朝鮮はあるタイミングで崩壊するだろうと、かなりの確率で予測しているわけですよね。そのときにおそらく、韓国は大韓国になるでしょう。

 では、その大韓国はどのような国になるのか。おそらく米韓同盟はないだろうと私は思います。なぜなら、中国がそれを認めないだろうと思うからです。また、核保有国になる可能性もないでしょう。

 そうすると、考えられるのは、外交的には中立で、核は保有しないが、政治的には安定していて、経済的に繁栄している国です。そういった国があそこにできるのであれば、日本にとってマイナスではありません。朝鮮半島は安定していればいいのです。朝鮮半島が不安定になってロシアや中国の勢力圏に入ると、日本の安全保障も心配になってきますが、中立で安定し繁栄した国であれば、それでいいのではないかと思うのです。

 そういったことを念頭に置きながら、できることはクールにするけれど、できないことは仕方がないと考えることが重要だと思います。例えば、慰安婦の問題は、これまでもずいぶん取り組んでいるので、これ以上やってもできないと思います。何かをやるとすれば、もっと大きなテーマです。例えば、戦争で被害に遭われた女性や子どもを、日韓両国で支援するための基金などですが、その中に韓国が入らないと駄目なのです。かつて女性基金(女性のためのアジア平和国民基金)を設立しようとした時、金泳三が応じなかったため、結局、韓国は入らなかったのです。私は、それが最大の失敗の理由だと思います。ですから、今はそれしかないのではないでしょうか。


●靖国問題の根源と政治的解決策


白石 それに比べると、実は、中国との関係の方が、お互いに戦略的な重要性を分かっていますので、戦略的に対応できます。もちろん感情的な問題もあります。ただ、靖国の問題は、正直に言って、靖国神社の神主がけしからんと思っています。つまり、日清、日露、あるいは、西南の役から、日本国のために命を失った兵士が皆、祀られているのに、それをいわば人質に取って、大東亜戦争聖戦論...
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