『大学』に学ぶ江戸の人間教育
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「徳」は江戸期の人間形成の基盤
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『大学』とは「人間にとって最も学ぶべきこと」
『大学』に学ぶ江戸の人間教育(1)「徳」という概念
田口佳史(東洋思想研究家)
老荘思想研究者・田口佳史氏は、人物育成という教育の本願を語るものとして、四書五経を読んだ江戸期の幼年教育を高く評価している。今回は、江戸期の幼年教育を知るために、『大学』を読み進めながら、その要点を解説する。(全5話中第1話目)
時間:13分28秒
収録日:2014年12月17日
追加日:2015年7月30日
≪全文≫

●四書五経教育は江戸期の類いまれなる幼年教育


 私は、この47年間ひたすら中国古典思想を読んできただけの人間ですが、その半ばで四書五経が江戸の幼年教育のテキストであると気付いてからは、その哲学、真理を追究するという意味でずっと四書五経を読んでいると同時に、教育という観点から教科書として読んでいくことも併せてやっています。

 その結果、今とても痛感しているのは、江戸期の幼年教育、特に四書五経教育が非常に類いまれなる教育であるということです。


●維新の志士を育てた四書五経に、人物育成という教育の本願を見る


 全国津々浦々、今と同じ6歳で寺子屋、あるいは、藩校に入り、『大学』から始まる四書を修めて、さらに五経を進めます。その前に、チャンスがあれば3歳で素読を行うわけです。

 そういう教育を受けてきた人たちが、ご承知の通りに、幕末において内憂外患の最大の国難というときに全国から輩出され、まれにみる短期間で、近代的な装備を誇った武力を引っ提げて攻め寄せる西洋列強の力を排除し、さらに幕藩体制が揺らいでいるという内患を突破して、近代国家を成立させました。その礎として、維新の志士たちの働きがあったのです。

 その人たちがどのような教育を受けたのかと尋ねたとき、幼年教育のすごさを知ると、そこに立派な人物を育成する教育の本願が非常にうまく語られているのではないかと思えてならないのです。

 そこで今日は、江戸の教育、特に幼年教育の要点について、少々述べてみたいと思います。


●江戸期の幼年教育を知るために『大学』を実際に読む


 しかし、私のようにひたすら漢文を読むことを日常の仕事としているような人間でないと、テキストを読むのはなかなか厄介なことです。ですから、教育を探究されている方々も、江戸時代のテキスト自体をお読みになっているのかどうかという問題があります。

 その教育の内容を知るとき、いかなるテキスト、教科書を使って教育が展開されていたのか、その教科書には何が記されていたのかが詳細に分かりませんと、その教育の要点はおぼつかなくなってくるのではないかと思われます。

 6歳で寺子屋に入り、最初に四書五経の『大学』から習うわけですが、今回は、『大学』の冒頭部分を読んで解釈をしていきたいと思います。それによって、江戸期の幼年教育が何を重視していたのか、あるいは、ど...

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