『大学』に学ぶ江戸の人間教育
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「大丈夫」に育てることが江戸期幼年教育の目的
『大学』に学ぶ江戸の人間教育(5)規範形成教育を取り戻すために
田口佳史(東洋思想研究家)
江戸の人間教育に学ぶシリーズの最終回は、「規範形成教育」についてである。戦後、失われたままの「規範」を取り戻し、「あるべき日本人」の姿に立ち返ることこそ重要だ、と老荘思想研究者・田口佳史氏は強調する。(全5話中第5話目)
時間:18分16秒
収録日:2014年12月17日
追加日:2015年8月6日
≪全文≫

●「大丈夫」をつくるため、早くから本質を教えた江戸の教育


 『大学』は、このような非常に短い文章がこの後も18ほどあり、中国古典の中では短い方に入ります。しかし、ここまで解説したように、早くも6歳の時から社会人としての心構えをしっかりと教え込んでいるのです。

 江戸期の教育の目的は、立派な大人をつくることです。立派な大人のことを孟子の言葉で「大丈夫」と言いました。「大丈夫をいかに一人でも多くつくるか」が、国家を挙げての教育の基本とされていたのです。

 では、「大丈夫」である立派な大人とはどんな大人のことか。非常に重視されたのは、人間性と社会性でした。今時の言葉で言えば「人間力と社会力」になりますが、それらを備えた人を育てるのは、簡単なことではありません。長期間かけてやらなければいけないことです。

 当時は何しろ15歳で大人になりますから、短期間しかかけられません。生まれて15年間で何とか立派な大人にするためには、いとまはなく、余計なことをする余裕もありません。小学校へ入った最初から、非常に本質的なこと、人間として重要なことを学びました。

 人間にとって大切なことを習得するには時間がかかるため、早くから始める必要がある。こうした考えが、江戸期の教育の基本にありました。そういう意味で、江戸の教育に学ぶことが非常に重要ではないかとわれわれは思うのです。


●立派な大人=リーダーに必要な二つの役割とは


 次に、立派な大人がどのような役割を背負っていくべきかについて、お話し申し上げたいと思います。

 立派な大人の役割は、正しい方向を決断し、そちらへメンバーを引率することです。一つは、正しい方向を決断すること。もう一つは、メンバーをそちらへ引率=リードしていく(よって「リーダー」と言う)こと。この二つから成り立っています。

 私は現在、企業の幹部社員に対する研修をずっと手掛けていますが、いかにおぼつかない人間が多いかを思い知らされてばかりいます。

 まず、「正しい方向を決断する」ことを非常に不得手とする人が増えてきました。何がいけないのか、何が足りないのか。皆さんはよく「決断力が足りない」とおっしゃいますが、本当にそうだろうか。そこが、問題のポイントになります。


●「正」の字から社会が混乱する最大の要因を知る


 答えは、実は「正」という字に隠さ...

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