『大学』に学ぶ江戸の人間教育
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「大丈夫」に育てることが江戸期幼年教育の目的
『大学』に学ぶ江戸の人間教育(5)規範形成教育を取り戻すために
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
江戸の人間教育に学ぶシリーズの最終回は、「規範形成教育」についてである。戦後、失われたままの「規範」を取り戻し、「あるべき日本人」の姿に立ち返ることこそ重要だ、と老荘思想研究者・田口佳史氏は強調する。(全5話中第5話目)
時間:18分16秒
収録日:2014年12月17日
追加日:2015年8月6日
≪全文≫

●「大丈夫」をつくるため、早くから本質を教えた江戸の教育


 『大学』は、このような非常に短い文章がこの後も18ほどあり、中国古典の中では短い方に入ります。しかし、ここまで解説したように、早くも6歳の時から社会人としての心構えをしっかりと教え込んでいるのです。

 江戸期の教育の目的は、立派な大人をつくることです。立派な大人のことを孟子の言葉で「大丈夫」と言いました。「大丈夫をいかに一人でも多くつくるか」が、国家を挙げての教育の基本とされていたのです。

 では、「大丈夫」である立派な大人とはどんな大人のことか。非常に重視されたのは、人間性と社会性でした。今時の言葉で言えば「人間力と社会力」になりますが、それらを備えた人を育てるのは、簡単なことではありません。長期間かけてやらなければいけないことです。

 当時は何しろ15歳で大人になりますから、短期間しかかけられません。生まれて15年間で何とか立派な大人にするためには、いとまはなく、余計なことをする余裕もありません。小学校へ入った最初から、非常に本質的なこと、人間として重要なことを学びました。

 人間にとって大切なことを習得するには時間がかかるため、早くから始める必要がある。こうした考えが、江戸期の教育の基本にありました。そういう意味で、江戸の教育に学ぶことが非常に重要ではないかとわれわれは思うのです。


●立派な大人=リーダーに必要な二つの役割とは


 次に、立派な大人がどのような役割を背負っていくべきかについて、お話し申し上げたいと思います。

 立派な大人の役割は、正しい方向を決断し、そちらへメンバーを引率することです。一つは、正しい方向を決断すること。もう一つは、メンバーをそちらへ引率=リードしていく(よって「リーダー」と言う)こと。この二つから成り立っています。

 私は現在、企業の幹部社員に対する研修をずっと手掛けていますが、いかにおぼつかない人間が多いかを思い知らされてばかりいます。

 まず、「正しい方向を決断する」ことを非常に不得手とする人が増えてきました。何がいけないのか、何が足りないのか。皆さんはよく「決断力が足りない」とおっしゃいますが、本当にそうだろうか。そこが、問題のポイントになります。


●「正」の字から社会が混乱する最大の要因を知る


 答えは、実は「正」という字に隠さ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験
鎌田東二
【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(1)名僧の原著に触れる意味
「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
賴住光子
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子