●個人の人生論のみならず、組織論、社会論にも通じる儒家思想
儒家の思想のすごさは、個人の人生論においてもすこぶる発揮されているのですが、もっとすごいのは、この個人論がやがて組織論や社会論になっていくことです。要するに、「個人の幸せ=より良い社会、より良い組織」になっていくのです。
つまり、組織、社会と言っても、それは人間の集団です。したがって、一人一人が徳の精神をしっかりと持ち、そういう人間が集合することのすごさを次に組織論として説いているのです。では、次を読んでみましょう。
●国家の基本として考えなければいけないのは健全な家庭のあり方
「古の明徳を天下に明かにせんと欲せし者は、先づ其の國を治めたり。」
つまり、天下泰平という社会をつくるにあたって、いきなり天下泰平を目指しても駄目で、まず、国が治まっていないと駄目なのです。国が治まってもいないのに、健全な社会はあり得ないと言っているのです。
「其の國を治めんと欲せし者は、先づ其の家を齊(ととの)へたり。」
国もいきなりは治まらない。国とは家庭の集合体だから、家庭が治まっていなければならない。家庭がととのっていなければいけない。つまり、あちこちで家庭崩壊のようなことが頻発している国が治まっていることなどあり得ないと言っているのです。
ですから、まず国家の基本として考えていただかなければいけないのは、健全な家庭のあり方です。家庭がしっかり営まれていることが、「家を齊へたり」なのです。
●健全な家庭をつくるためには、一人一人の「脩身」が必要である
しかし、それもまだ半ばです。その基本となるのは何か。
「其の家を齊へんと欲せし者は、先づ其の身を脩めたり。」
「身を脩(おさ)める」とは、家庭の構成メンバーであるお父さん、お母さん、子ども一人一人の身がおさまっていること。身がおさまらないところ、つまり、自分勝手で、自分のことしか考えず、自分のやりたい放題をやっているお父さん、お母さん、子どもがいる家庭は健全になっていくことはない。したがって、家族一人一人の身がおさまるという「脩身(修身)」が大切なのだと言っているのです。
●「脩身」とは、心を正しくして、しっかりとした規範を持つこと
「脩身」が大切だと分かったところで、止まることなく、「脩身とは何か」という問いに対...