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20世紀と21世紀の違いはインターネットの存在

インターネットのもつ大きな力:われわれは、Good Questionをつくり、Good Answerを引き出したい

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
情報・テキスト
筆記の時代から印刷の時代を経てインターネットの時代に入った21世紀。本編ではインターネットの三つの特徴を挙げながら、本メディア「テンミニッツTV」において、インターネットを活用し、われわれがこれから行おうとしていることを明らかにしていく。
時間:07:16
収録日:2013/09/13
追加日:2014/03/06
≪全文≫

●20世紀と21世紀の違いとインターネット


 慶應大学の曽根です。

 グーテンベルクの聖書というのが、歴史の中で大きな役割を果たしたというのは確かですが、あるとき、ハーバード大学の入学式か卒業式にたまたま行きましたら、そこで学長が「20世紀と21世紀の違いは何か」という内容で演説をしていました。

 20世紀は教科書がスタンダードになり、21世紀はインターネットがスタンダードになった。では、20世紀に教科書がスタンダードになる前は何をしていたのかというと、先生が話したことを一生懸命筆記していた。日本でも戦前の帝国大学などでは学生が必死になって筆記した。「教科書をまず配り、学生と先生は後で討論、ディスカッションをすればよいではないか」と、今の時代の人は思うだろう。しかし、貴重な話というのは、教授が話し、それを学生が筆記して記録するというのが当たり前の時代だった。ところが、それが20世紀になると、印刷された教科書をもとに授業が行われるようになった―――そのような話でした。

 20世紀と21世紀の違いは何かと言うと、紙の教科書から今度はインターネットを使うようになったことです、大量な放送が可能になり、双方向になるという大きな転換点がそこに出てくるのです。


●インターネットの三つの特徴(1):中心権力のない「自律分散協調」システム


 インターネットというのは、一般的に「技術で便利になった」とだけ捉えている人も多いかもしれませんが、三つの特徴を申し上げます。

 一つは、歴史の中で哲学的にアナーキズムがありましたが、このアナーキズムを現実に実践できるということでは、インターネットは最初のツールだったのではないかと思います。

 よくインターネットを「自律分散協調」という呼び方をする人もいますが、つまり中心権力がなくても、TCP/IPという非常に簡単なプロトコルで流すことができるというものです。アナーキズムが現実的に実践されたことは一度もなかったわけですが、インターネットという中心の権力がないシステムで、意外と簡単なメカニズムでうまくいく。これが一つの大きな特徴です。


●インターネットの三つの特徴(2):放送と通信の区別がなくなった


 それから、二つ目としては、インターネットは放送と通信の壁を取り払いました。

 私が「これが放送の原型かな」と思った経験があります。アトランタのCNNから電話がかかってきて、インタビューに答えていました。国際電話をしていたわけですが、アトランタのほうでは私が過去に出演した際の写真を映像として流していました。そうすると、音声と映像、写真がくっついて放送され、私の家のテレビを付けると、確かにそれが流れていました。しかし、音は数秒遅れで流れてきました。

 そのことを考えると、放送局とは言うけれども、電話と写真、ビデオの映像があれば、それで世界に流せてしまう。そういう意味で、放送と通信というのは、非常に区別がなくなったと言えます。


●インターネットの三つの特徴(3):社会や権力構造を変える大きな力


 三つ目は、インターネットと放送や情報との関係で言えば、放送や情報というのは、一つの権力そのものなのです。

 ソ連時代のロシアに行った人から、コピー機の部屋に鍵がかかっていたり、コピー機にも鍵が付いているという話をよく聞きました。そのようなことは日本では考えられませんが、コピーを大量にされてしまうと大変な情報漏えいになってしまうわけです。その意味で、情報機器というものは、権力を守るための手段であったわけです。ロシア革命とソ連崩壊とは大きく違いますが、ソ連が崩壊した一つのきっかけは、おそらく情報革命にうまく対応ができなかったのだろうと思います。

 つまり、このインターネットの時代というのは、哲学的にも、技術的にも、あるいは社会構造や権力構造までも変える大きな力をもっていると言えます。


●Good QuestionをつくりGood Answerを引き出す


 そして、この手段を使って、われわれがこれから行おうとしているのは、相互に質問を投げかけ合うこと、つまり、「良い問い」を専門家なり、同僚なり、一般の方が問うことによって、逆に今度は「良い答え」が引き出せるのではないかということです。

 私は前から、「Good Questionには、Good AnswerとBad Answerがあり、良い質問には良い答えと悪い答えがある」と考えてきました。しかし、テレビのインタビューなどを見ていると、Bad Questionの代表のような質問をしている場合がしばしばあります。このBad Question、理科系の人は不良問題設定と言いますが、不良問題設定をした場合には、どうやっても答えは出ないのです。ですから、「Bad Questionには、実はGood AnswerもBad Answerもない」ということです。

 そういう意味で言うと、われわ...
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