トルコとイランの関係
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トルコ与党弱体化の背景にはイランとの関係がある?
トルコとイランの関係(1)イラン革命から21世紀へ
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
トルコとイラン。いずれも西洋と東洋の間に位置して、古代より長い歴史を育んできた国だ。両国間の関係が言及されることは少ないが、互いの内政や国際情勢に及ぼす影響は大きいと、歴史学者・山内昌之氏は考察する。今回は主にイラン革命以来、バランスと対立を繰り返してきた両国の力関係について検証していく。(前編)
時間:9分56秒
収録日:2015年6月9日
追加日:2015年7月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●トルコ与党弱体化の背景にイランとの関係あり


 皆さん、こんにちは。

 トルコにおいて今月(2015年6月)、総選挙が行われました。その結果、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領の与党AKP(公正発展党)は、議会における圧倒的多数派の地位を得ることに失敗しました。このことにより、エルドアン氏が意図していた大統領権限の強化、すなわち憲法改正によってトルコ共和国大統領をロシアやフランス、アメリカ並みの強い権力者に変えていこうとするもくろみは、遠のいたかに見えます。

 今日は、こういったことの背景にある重要な国際関係の一つとして、あまり語られていない要素ですが、イランとトルコとの関係について少し語ってみたいと思います。


●バランスと対立を繰り返してきた両国の歴史と現状


 トルコとイランはそれぞれ、オスマン帝国やサファヴィー朝の継承者であることを自負し、絶えずバランスを取りながら中東の権力を埋めようとしてきました。

 最近のイエメン紛争においても双方は対立しています。テヘラン(イラン)は、急成長しているシーア派の一派であるザイド派のホーシー集団を支援していますが、アンカラ(トルコ)は、サウジアラビアと同じスンナ派のアラブ人たちとコアリション(提携)を組み、現在のアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領を支援しているわけです。

 こうした現実に照らして、この3月にエルドアン大統領は、「中東地域をイランがコントロールしようとしている。非常に不法に統御しようとする企てであり、我慢がならない」と公言しました。それに反発したイランの国会議員65人が、トルコ大統領の「不注意な声明」に照らしてハッサン・ローハニ大統領に、4月に予定されていたエルドアン大統領のイラン訪問を拒否すべきだと要求しました(結果としては、この訪問は実現しました)。


●イラン革命以来、両国は緊張した関係に


 1937年のサーダーバード条約から1979年のルーホッラー・ホメイニーによる革命に至るまで、二つの国は友好関係を維持してきました。しかし、ホメイニーの「シーア派革命の輸出」というものの考え方は、世俗主義のトルコとの間に水と油の関係がありました。

 トルコでは1980年に事実上の軍事クーデターが起きます。世俗主義の守護神を自負するトルコ国防軍は、イランのイスラム共和国を世俗主義...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司