●実質実効相場に焦点を当てた3部構成
シティグループ証券で為替の市場調査を担当している高島修です。今日はよろしくお願いします。
2015年6月10日に日本銀行の黒田東彦総裁が、「実質実効円相場がかなり円安になっていて、これ以上の実質円安はありそうにない」という発言をされました。この発言を受けてずいぶんと為替マーケットも動きましたので、今日は実質実効相場に焦点を当てて話をさせていただこうと思います。
3部構成で考えていまして、まず一つ目は、6月10日の黒田総裁発言をどう考えるかというところです。二つ目は、実質実効円相場に関して、IMF(国際通貨基金)をはじめとした国際通貨当局者が、どういう見方をしているのかといったところになってきます。三つ目は、そういった実質実効円相場がいま割安化したのかどうか、それをどういう形で判断すればいいのかといったところについて話をさせていただこうと思います。
●市場の関心を集めた黒田発言は必然的
では、本日一つ目の柱である6月10日の黒田総裁の発言についてですが、その時はちょうどドル円相場が125円台に乗せてくるタイミングでした。国会答弁において、民主党の前原誠司議員の質問に答える形で、黒田総裁が為替相場に関してさまざまな発言をなさっていました。その時、黒田総裁は発言の中で、「実質実効円相場はずいぶんと円安になってきていて、これ以上の実質円安はありそうにない」という話をされました。この発言を受けて、市場参加者の間では、黒田総裁による円安けん制ではないかといった見方が強まりまして、ドル円相場も円高方向へ急落するという動きが起こり、今に至っています。
私自身は、シティグループにおいて為替のストラテジストをやっており、日本の機関投資家、企業様もお客様の一つなのですが、海外のヘッジファンドをはじめとした、いわゆる短期的な投資家、投機筋も非常に重要なお客様なのです。そういった海外筋から、6月10日の黒田総裁発言の後、「この発言は意図的に円安をけん制しているのか。それとも単なる失言なのか」という質問が相次いだため、世界的に市場が非常に強い関心を集めていたということです。
そういった質問に対する私の答えは、おそらく限りなく意図的に近い、もしくは意図的ではなくても、黒田総裁の本音に近い発言だと思うけれど、それ以上に重要...