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身近な疑問を解決!『日常の「なぜ?」に答える物理学』
ケータイの電池の寿命を延ばすにはどうしたらいい?
携帯電話などに使われている充電式のリチウムイオン電池は、現在の技術では「充電回数は400回程度しか品質の保証ができず、400回を超えると本来の80%以下しかフル充電できなくなる」と語るのは、『日常の「なぜ?」に答える物理学』を書いた大阪工業大学情報科学部情報システム学科教授・真貝寿明氏です。真貝氏は、少しでも長く使うためには「電池残量を20~80%に保つ」とよいと言っています。完全放電・完全充電状態だと劣化が激しくなるからです。『日常の「なぜ?」に答える物理学』は、このような身近な疑問、ふとした疑問にいろいろと答えています。以下で、その一部を紹介します。
Q:オーロラはなぜ日本では見えないのか?
A:高緯度地域にしか電子が入り込めないから
北極周辺や南極周辺にはオーロラが出現する。テレビなどで観たことのある方は多いでしょう。これは、宇宙から地球に飛び込む電子が大気中の原子や分子と衝突するときに発光する現象です。酸素原子と反応すると緑や赤に、窒素原子と反応すればピンク色になります。なぜ北極や南極の周りで見えるかといえば、地球には磁場があり、電子は簡単には入り込めないのですが、高緯度では磁力線に沿って電子が侵入することができるからです。ちなみに、北極と南極の両方で、同時刻に逆巻きのオーロラが発生していることが知られています。
Q:月はなぜ地球に落下してこないのか?
A:引力で引き合っていても、必ずしも落下するとは限らないから
「万有引力」とは、質量のあるすべての物体が互いに引き合うこと。その法則にしたがえば、すべての物体は近づいていくように思えるのです。地球と月も万有引力で引き合っているにもかかわらず、なぜ月が地球に落下してこないのか。この問題はニュートンも悩ませました。
答えは、引力で引き合っていても、必ずしも落下するとは限らないからです。実は、地球からものすごい速さ(秒速7.9キロメーター以上)で物体を投げれば、その物体は地球表面を周回運動します。月もその物体と同じように周回運動を続けているのです。
Q:なぜ宇宙が膨張していることがわかったのか?
A:ドップラー効果のため
救急車や消防車が通り過ぎるとき、誰しもサイレンの音の高さが変わる体験をしているでしょう。あれを「ドップラー効果」といいますが、音源と観測者が相対的に近づくとき、振動数は大きくなり、音は高く聞こえます。一方、音源と観測者が相対的に遠ざかるとき、振動数は小さくなり、音は低く聞こえます。光も波なので、同じようにドップラー効果が生じ、光源と観測者が近づくときには色は青色側に変化して見え、遠ざかるときには、赤色側に変化して見えるのです。
実は、このドップラー効果によって、1920年代の終わりに宇宙全体が膨張していることが観測されました。遠方の星や銀河ほど赤色側に変化して見えることがわかったからです。宇宙は今も膨張を続けているのです。
Q:太陽はなぜ酸素のない宇宙で燃え続けているのか?
A:核融合反応だから
酸素がないと物体が燃えないのは、皆さんご存じでしょう。では、なぜ太陽は酸素のない宇宙で燃え続けているのか。答えは簡単で、太陽は化学的に燃焼しているのではなく、核融合反応を起こし続けているからです。核融合反応は物理的な結合エネルギーの組み替えで発生している反応であり、酸素は必要ないのです。
ということで、『日常の「なぜ?」に答える物理学』の中からいくつか身近な疑問への答えを紹介しましたが、いかがでしたか。本書には、ほかにもさまざまなコラムやトピックが散りばめられています。物理学と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、実際は生活の身近な疑問に物理学が答えを出してくれることは多いのです。興味のある方はぜひパラパラとめくってみてはどうでしょう。あなたの疑問に対する答えがそこにあるかもしれません。
<参考文献>
『日常の「なぜ?」に答える物理学』(真貝寿明著、森北出版)
http://www.morikita.co.jp/books/book/2852
<関連サイト>
真貝寿明氏の研究室ホームページ
http://www.oit.ac.jp/is/~shinkai/
『日常の「なぜ?」に答える物理学』(真貝寿明著、森北出版)
http://www.morikita.co.jp/books/book/2852
<関連サイト>
真貝寿明氏の研究室ホームページ
http://www.oit.ac.jp/is/~shinkai/
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