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DATE/ 2024.02.29

暴走する親…「ヘリコプターペアレント」の弊害

 「モンスターペアレント」「毒親」という言葉もよく知られるようになった今日この頃ですが、新たに問題視されている「ヘリコプターペアレント」と呼ばれる人たちをご存知でしょうか。我が子の行動を逐一見張っていないと気が済まない、まるでヘリコプターで空中待機していたかのようにトラブルだとみればすぐに飛んできて過剰なまでに干渉する……そんな親を表す言葉だそうです。

 「ああ、そういう人、身近に居るな」と心当たりのある方も多いのではないでしょうか。スタッフのなかにも、同級生のお母さんのことを思い浮かべたという人がいました。このヘリコプターペアレント、数年前からアメリカやドイツで社会問題として取り上げられていましたが、年々日本でも増えてきているようです。

「全てあなたのため」……愛という名の鎖

 ヘリコプターペアレントの特徴を一言で表すのならば「過保護・過干渉」につきます。ネグレクト、いわゆる育児放棄の真逆と言えるかもしれません。

・子どもが助けを求める前に手を差し伸べる
・子ども自身がやるべきことを代わりにやってしまう
・子どもが失敗や挫折を味わうことのないようリスク排除する
・子どもの能力を軽んじて、自分がサポートしなければダメだと決めつけている

 実際に困っているという子どもたちの声は少なくありません。プライバシーを認めてもらえなかった、部活や趣味を選ばせてもらえない…最近ではSNSをチェックされ、友人関係に口を挟まれることに悩むケースも増えているようです。

 ヘリコプター的親心は子どもが成人したからといって止むことはないようです。大学を休んだ子どものために補講を依頼したり、企業の就職面接や婚活パーティーに同席を求めたり、隠れてデートを監視する、あなたは家事ができないのだからと一人暮らしをはじめることを許さないなど、子離れできないのも大きな特徴になっています。過剰な親心が子どもにとって害になってしまということでは、ヘリコプターペアレントも毒親の一種といえるでしょう。

どんな人がヘリコプターペアレントになりやすい?

 ヘリコプターペアレントになりがちな人の特徴は複数あげられています。

・真面目で心配性
・子どもの他に生き甲斐がない
・自身は放置されて育ったという孤独感がある
・支配傾向が強く子どもは所有物だと信じている
・境界性人格障害の気がある
・当人もヘリコプターペアレントに育てられた

 最近では映画やドラマにもヘリコプターペアレント的な登場人物が出てきますし、そういう親の元で育った苦しみを綴るエッセイ漫画も評判になっています。「わたしにも過干渉なところがあるかもしれない……」そう思い当たったら、客観的に親子関係を見直してみるのも良いかもしれません。

ヘリコプターの下で育った子どものその後

 常に過干渉な両親のコントロール下で育てられた子どもは、成人してどうなってゆくのでしょうか?

 残念ながらその愛が輝かしい未来へと導くことは少ないようです。アメリカの研究では、親からすればたとえ愛情であろうと、ヘリコプター子育ては悪影響を及ぼすと結論づけられています。専門機関の調査では、鬱、無気力になりがちであると報告されています。自己肯定できない、習慣的に誰かが尻ぬぐいしてくれるのを前提に生活していて社会対応できず、人生に追い詰められてしまうそうです。

 子どもが助けを必要としているときに、保護者が適切な助言やサポートをすることは、子どもにとって必要なことです。しかし、人間が幸福に生きるには、自分自身で考えて行動できる能力をつけること、また、時には痛みやリスクも背負いながらそれを乗り越えていくことが心の成長には欠かせません。困難を本人の力で克服し成長する、そんな機会を奪ってしまうことが、ヘリコプターペアレントの問題点といえるのではないでしょうか。

 いじめ自殺や格差社会を報じるニュースが飛び交う時代、わが子の将来を案じるのは親の常でしょう。しかし、行き過ぎた「子どものため」は最終的に子どもの生き抜く力を奪ってしまいます。親の愛も過ぎたるは及ばざるが如し、親子の間に適切な距離を置いてみせることこそがいい教育なのかもしれません。

<参考サイト>
・マーミー:ヘリコプターペアレントとは?原因/特徴&悪影響の事例15
https://moomii.jp/kosodate/helicopterparents-exp.html
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