テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.05.10

「ゲームをするとバカになる」は非常識?

 「ゲームは1日1時間」。言われる側だった方も、言う側だった方も、ゲームと勉強の両立に頭を悩ませたという方は多いかもしれません。なかには、まったくゲーム機に触れさせてもらえなかったという方もいるのではないでしょうか?

 ゲームは勉強の邪魔になるのか、子どもにどんな害悪を与えるのか、20年ほど前には、この手の話題がよく取り沙汰されていました。時代は移り変わり、ゲームと子どもたちの関係は見直されつつあります。

ゲームを許されている子どもの方が効率よく勉強ができる

 2016年7月に朝日小学生新聞社が、小学校1~6年生の子どもたちに、家庭内のゲームに対するルールを聞いたアンケート結果を発表しました。そこでは、「ゲームを遊んでよいが、ルールや決まりがある」が88.5%、「ゲームで遊んでもよいし、ルールや決まりもない」が5.9%、「ゲームで遊んではいけない」が4.4%を占めていました。

「ゲームは勉強の敵」と、未だに目の敵にされることもありますが、このアンケートではゲームOK、ゲームNGのいずれのグループにも成績に差が出なかったのです。ゲームOKの家庭では、勉強時間は1日平均80.3分。NGの家庭では平均92.2分でした。成績に差がないということは、逆を言えば、ゲームOKの家庭の子の方が、効率良く勉強ができているということになります。

 このアンケートでは、子どもたちの勉強や宿題に取り組む自主性についても調査を行いました。そこから浮き上がってきたのは、ゲームOKの家庭の子どもの方が、自主的に勉強や宿題に取り組み、上手に遊びと勉強を切り替えて生活をしているという実態でした。

ゲームで物事を効率よく進める訓練ができる?

 確かに、決められた時間内でゲームを遊ぼうとすると、いかに効率良く、何をどう進めるかを真剣に考えるようになるのかもしれません。読解力の低い子どもが増えているともいわれていますが、RPGなどは文章が読めなければストーリーを進めることはできませんし、きちんとゲームクリアまで辿りつくには「忍耐と努力」も必要です。

 しかし、やりたくてやっている事に対しての「忍耐と努力」は、概ね苦にはなりませんよね。興味のあること、楽しいことについて、人はどんどん吸収するようにできています。知識もまた同じです。ゲームで得た情報が思わぬ形で役に立つこともあります。

 知人は、日本の都道府県を授業で教わるよりゲームで先に覚え、地理に苦手意識を持つことはなかったと話しています。また、ゲームの登場人物の名前が神話の神であることに興味を持ち、そこから民俗学を調べるようになったという人もいました。こうした興味の面で、ゲームには子どもたちの好奇心や知識欲を刺激するという効果もあるのかもしれません。

現代の子どもたちはゲームネイティブ世代

 ならば、「ゲームをさせよう」というのもそれはまた違います。肝心なのは、そこに子どもたちの意志が介入しているかどうかです。「やりたいことをできている」という充足感と、「勉強もしなくてはいけない」という義務感。この2つを持ち合わせ、それぞれに一生懸命になっているからこそ、主体性を持ち、意識の切り替えや、集中力をつけることができるのです。

 今の子どもたちはゲームネイティブ世代です。生まれたときからゲームだけでなく、パソコンやインターネット、スマートフォンが身近にあるのが当たり前です。こうしたメディア媒体から離れて生活することは難しく、子どものころから親しみ、距離感を保つ方法も学ばなくてはなりません。

 例えば家庭内で、1日2時間までならゲームをしていい、夜9時を過ぎたらしてはいけないなどルールを決めたとします。であれば、「ゲームばかりしてはいけない」と叱るのではなく、「決まりを破ってはいけない」と教育することが大切なのではないでしょうか。また、勉強とゲームをどのくらいの配分でするかということも、ゆくゆくは自分でできるようになることが大切なのかもしれません。

ゲームのメリット・デメリットを伝える

「ゲームは1日1時間」。実はこの標語は、その昔、一世を風靡したファミコン名人こと高橋名人が、ファンの親御さんたちを前に、思わず口にしてしまった言葉だそうです。風当たりの強かった当時に比べて、現在、子育て中の20代・30代の世代は、それこそゲームとともに育って来たかつての子どもたちです。

 ゲームのメリット・デメリットをきちんと子どもたちに話し、好きなことをする喜び、勉強をして知識を得ることの大切さを伝え、ゲームとの付き合い方、ひいては自分の興味や知識欲との付き合い方を学んでいけるといいですね。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(2)「夜の街」新宿の原点

歌舞伎町を筆頭に、東京でも有数の繁華街を持つ新宿だが、その礎は江戸時代の内藤新宿にあった。遊女が働く飯盛旅籠(めしもりはたご)によって、安価に遊興できる庶民の「夜の街」として栄えた内藤新宿の様子を、『江戸名所図...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/28
堀口茉純
歴史作家
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(3)電力の部分最適と全体最適

サステナブルな電力の供給と消費が求められる現代社会。太陽光発電のように電力の生産拠点が多元化する中で、それぞれの電力需給と国全体の電力需給のバランス調整が喫緊の課題となっている。実はヨーロッパなどの「再エネ比率...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/04/27
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
4

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授