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DATE/ 2021.03.18

東京の「中間層」が一番生活が苦しい?

 各種の都道府県別の年収ランキングではいつも東京が1位、最低賃金でも東京が全国1位の1013円。お金を稼ぐには東京が一番と思えるかもしれませんが、イコール豊かな生活ができるとは限りません。むしろその逆で、東京こそ一番苦しい生活を強いられる、と言えるデータもあるのです。

平均年収ナンバーワンは東京、だけど…

 パーソルグループが運営する転職サービス「doda(デューダ)」が発表した「平均年収ランキング(47都道府県・地方別の年収情報)」によると、平均年収ナンバーワンの東京は444万円。全国平均は409万円なので、約1割弱上回っていることになります。2位以下は神奈川、千葉、茨城、埼玉と関東地方のエリアがトップ5を占める結果となりました。

 国土交通省による「『企業等の東京一極集中に関する懇談会』のとりまとめを公表します」という資料の中で都道府県別の可処分所得と基礎支出についての調査が行われているのですが、そこを見ると東京の可処分所得(家計収入から税金や社会保険料などを差し引いた金額。いわゆる「手取り」)は富山、福井に続き全国3位。先ほどの年収ランキングと異なり1位ではありませんが、それでも上位です。ただし、中央世帯(可処分所得の上位40~60%にあたる世帯)で見ると、東京は12位まで下がります。一定の金持ちが引き上げているだけで、中間層に限れば最上位クラスではなさそうです。

 さらに中央世帯の基礎支出(食料費」+「(特掲)家賃+持ち家の帰属家賃」+「光熱水道費」)を見ると、東京は全国ワースト。家賃を始めとした生活費の高さが他のエリアより抜きんでていることも納得ですね。可処分所得から基礎支出を引いたランキングにすると、東京は42位と最下位が見えてくる位置まで下がってしまいます。

 他地域に比べて通勤時間が長くなりがちなことも東京の弱みです。通勤時間を各都道府県の所定内給与で費用換算すると、全国平均が約25000円のところ、東京はこれもまた全国ワーストの約58000円。2位が神奈川、3位が千葉と、首都圏が上位に並びます。この費用換算した通勤時間分を差し引くと、東京は全国ワーストの13万5201円となってしまいます。1位の三重県は23万9996円。東京は三重県より1世帯あたりで約10万円少ない計算になるわけです。

いいとこ取りをできる解はリモートワーク

 冒頭の「平均年収ランキング(47都道府県・地方別の年収情報)」で挙げた通り、東京が一番高収入を稼ぎやすいものの、もろもろの生活費を考えると実は一番苦しい――。そこを脱却する一つの解はリモートワークでしょう。東京の企業に所属して高収入を享受しながら、生活費を低く抑えられる地方に在住、しかもフルリモートで毎日在宅勤務ならば通勤時間による費用も発生しません。もちろんリモートワークができる職種、会社は現状一部に限られていますが、上記のようないいとこ取りが実現できる場合もあるのです。

 また、人材派遣会社のパソナグループが淡路島へ本社機能を移転することを発表したように、企業の脱東京が進むことも考えられます。企業にとってコストダウンになるだけでなく、社員にとっても家賃や通勤コストを下げることができることでしょう。パソナグループの移転は賛否両論ありましたが、今後は地方に拠点を置いていることが企業にとって強みになる、そんな日がやってくるかもしれませんね。

<参考サイト>
・【47都道府県・地方別】平均年収ランキング 最新版 |転職ならdoda(デューダ)
https://doda.jp/guide/heikin/area/
・厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
・国土交通省 「企業等の東京一極集中に関する懇談会」のとりまとめを公表します
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001384141.pdf

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