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DATE/ 2022.03.31

海外で13が忌み嫌われる理由

 2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は好調に推移しているが、西洋では"13"という数字が嫌われることも多い。迷信と片付けてしまうのは簡単ですが、何か根拠はあるのでしょううか。「忌み数」の秘密を調べてみました。

西洋で"13"が嫌われる理由

 忌み数は不吉だとされる数や番号で、地域によって嫌われる数は異なります。なかでも"13"は、欧米の多くの国で忌み嫌われることから、建造物に13階がなく、12b階と呼ばれたり、一つ飛ばして14階とされる例もよく見かけます。パーティなどで集まる人数も、13人を避けるため涙ぐましい努力が払われることも多いようです。

 それほど"13"が嫌われる理由として、「数」にまつわるのが"12"の次の数で、しかも素数だからということがあります。  

 "12"は、今でも暦が12か月に区切られ、1日も12×2の24時間で数えられることなど、時間の尺として用いられています。西洋占星術の12星座や十二支(えと)などもそうですね。さらにボールや鉛筆、ビールなど「1ダース」を単位として詰められる風習も続いています。

 アナログ時計の文字盤を見れば分かるように、"12"は360の約数である一方、"2"と"3"の倍数であるため、直観的に分けたり増やしたりしやすく、古来安定した数と考えられていたようです。

 そのため、"12+1"の"13"は"12"の調和を乱すもの、安定を揺るがすものととらえられたという説があります。

宗教・物語的な"13"のジンクス

 "13"について、よく持ち出されるのが、「最後の晩餐」とユダの裏切り、さらにイエスが処刑されたのが「13日の金曜日」だというキリスト教にまつわる諸説です。ただしローマ法王庁のお膝元であるイタリアでは、"13"より"17"が嫌われます。これはローマ数字表記の"XVII"が「私は生きることを終えた(私は死んでいる)」を意味するためです。

 また、キリスト教が世界宗教になる以前から伝わっていた北欧神話のなかで、「13人」の不吉さが語り伝えられていました。12人の神々が祝宴を催していたときに、招かれざる13人目としてロキが乱入し、地に破滅をもたらしたというのです。

 このエピソードに基づいて、サタンを「13番目の天使」としたり、グリムの「いばら姫」伝承で「13番目の妖精」が悪さをしたという物語などが、"13"の不吉さに拍車をかけていきます。

 現代において決定的だったのが、1970年4月13日、「アポロ13号」の事故でした。迷信を打ち破るために打ち上げ時刻をあえて「13:13」に設定したのが裏目に出たというわけでもないでしょうが、アメリカの「13恐怖症」はより拡大する結果となってしまいました。

嫌な数字で悩まないために

 このため、西洋ではアパートの部屋番号、飛行機の座席番号などの"13"が欠番とされ、13番ゲートのない空港や13番地を飛ばした住所も存在します。Micrsoft Officeはバージョン12(Office 2007)の次をバージョン14(Office 2010)として、ユーザーの神経に配慮しました。

 あまりに「13は不吉」ということが一般常識として定着したため、そのイメージを活用したのが劇画『ゴルゴ13』や映画『13日の金曜日』という負のヒーローたちです。

 日本でも、十三塚や十三重塔が死者を象徴するものだったこと、死刑執行のための絞首台が「13階段」となっていたこと、4+9=13であることなどから、13を忌み嫌うことがあります。

 しかし、一般的に嫌われるのは「死」に通じる"4"、「苦」に通じる"9"です。病院やホテルの部屋番号に"4"と"9"を避ける例も多く、自動車のナンバープレートに"42"と"49"が欠番とされているのもよく知られています。この"42"と"49"は日本人所有者に対する配慮ですが、駐留軍人などの用いる自動車では"13"を発行しないという心配りもなされています。

 iPhone 13がイマイチ不人気だと言われるのもそのせいでしょうか。
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