テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.05.08

なぜ社会人になるとゴルフをするのか?

 昭和の時代、週末のサラリーマンは朝からゴルフに出かけるものでした。今でもゴルフは一定の人気はあるようです。ゴルフをする人の多くは、社会人になってから始めたのではないでしょうか。ではなぜ社会人になると人はゴルフをするのでしょうか。事情はコロナ禍以前と以後でやや異なっているかもしれません。

ゴルフは仕事の延長だった

 2018年のマイナビニュースの記事に、ゴルフ経験のある社会人に対して「ゴルフをしていてよかったこと」を訊ねたアンケートがありました。これによると、「世代の異なる人(上司等)とのコミュニケーションのきっかけとなった」であるとか、「相手が物凄いゴルフ好きで契約が取れた」といった話が出ています。

 つまり、ゴルフは上司とのコミュニケーションや接待のためといったように、仕事の延長として行われてきた部分が大きかったようです。いわば社交の場と言えます。ゴルフは他のスポーツのように、激しい動きを連続で行うわけではありません。このことから老若男女問わず、いろんな人が一緒にプレイできる点も魅力と言えるでしょう。

 ただし、いきなりコースに出れば周りに迷惑がかかることは明白なので、事前に時間とお金を割いて練習することが必要です。練習代やゴルフクラブ代、ゴルフウェア、シューズその他消耗品などさまざまなものにお金はかかります。このことから、ある程度の収入のある人同士で行われる社交の場とも言えるでしょう。

魅力は自然、道具選び、スコア

 他にどんな魅力があるのでしょうか。まずは自然に触れることができる点が挙げられます。都市部から少し外に出れば土と緑の香りが清々しいゴルフ場があります。また、ゴルフの練習は打ちっぱなしの練習場などで一人黙々と練習することも可能です。

 また、ウェアやシューズ、使う道具などにこだわって楽しむという人もいるようです。ゴルフショップに行くと実にさまざまな用具が揃っています。そのなかから自分に合ったウェアやクラブを探すこと自体も楽しいでしょう。またそうした道具を通して新たなコミュニケーションが生まれることもあるかもしれません。

 スポーツ性の側面から言えば、ゴルフは人と競うよりもスコアとして明確に結果が出ます。この意味では広大な土地を使って、自分自身と対峙するようなスポーツであるとも言えるでしょう。少しでもスコアを伸ばせたときには、またやりたいというモチベーションにつながるのかもしれません。

ゴルフ人口は減っている?増えている?

 公益財団法人日本生産性本部が行った「レジャー白書2021」では、全国の15歳から79歳の男女を対象にインターネット調査を行っています(調査期間:2021年1月から2月、有効回答数:3246人)。これによると2020年のゴルフ人口は前年比10.3%減の520万人となっています。

 この「レジャー白書2021」のデータだけを見ると、ゴルフ人口は減少しているということになります。一方で、ゴルフメディア「月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)」の分析では、他の調査と比較しながら、レジャー白書はゴルフに関しては実態を反映していないとしています。

 特に経産省が民間調査会社に委託して集計した「特定サービス産業動態調査」に注目すると、レジャー白書とは違った状況が見えてくるようです。コロナ前、2019年のゴルフ場利用者数を基準にすると、コロナ禍になった2020年は96%と若干減少しますが、2021年は109%と増えています。またゴルフ練習場利用者数は同じく2019年比で2020年は109%、2021年は126%と増加しています。つまり、こちらのデータを元とすれば、コロナ禍でゴルフのプレイ人口は若干増えつつあるということもできそうです。

20代はゴルフに新しい価値を見出している?

 コロナ禍以降、20代の若者がシミュレーションゴルフや打ちっぱなしをする姿を見かけるとの声もあります。若者のゴルフ離れという話は以前から言われていましたが、コロナ禍を経てやや状況に変化は起きているかもしれません。ITmediaビジネスの記事にあるデータによると、先にあげた「特定サービス産業動態統計」で伸びているゴルフ場利用者数の68%は「非会員」とのことです。新たな顧客層が生まれています。詳細なデータは今のところ見つからないのでここは推測ですが、この中には若い世代が多いのかもしれません。

 比較的若い層に関しては、SNSの動きを見るとやや状況が見えてきます。たとえばインスタ映えする場所として、ゴルフ場は見直されているようです。またこうした動きに応じて、ゴルフ場もインスタグラム利用のメイン層である若い女性向けの設備(パウダールームや女性向けアメニティなど)を充実させる動きもあります。こういった意味で、これまで接待や仕事のコミュニケーションの延長として機能してきたゴルフは、もっとフランクな仲間で楽しむようなコミュニケーションの場所に変化してきているかもしれません。この動きが今後どうなるか、興味深い点ではないでしょうか。

<参考サイト>
2020年ゴルフ人口、10.3%減の520万人に|一季出版株式会社
https://www.ikki-web2.com/archives/6831
レジャー白書2021を考える|GEW
https://www.gew.co.jp/market/g_70529
社会人がゴルフをする理由って? 300人に聞いてみた|マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/kikaku/20180427-golf/
大人がハマる楽しいスポーツ!ゴルフの魅力を考えてみる|Caddy
https://caddy.jp/column/golf-funsport/
「仕事の延長でイヤイヤ」ではない! ゴルフを始める20代が急増している理由|ITmediaビジネスONLINE
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2111/29/news015.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

地球儀を俯瞰する!?国際政治を読むために重要な地図の見方

地球儀を俯瞰する!?国際政治を読むために重要な地図の見方

地政学入門 歴史と理論編(2)なぜ地理が重要なのか

国際政治を地理的要素に着目して分析するのが地政学だが、なぜ地理が国家間の政治を考える上で重要な要素になるのか。その理由は地理が持つ「不変性」にあると小原氏は言う。また、地理を考えるときに欠かせないのが地図で、見...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/05/07
小原雅博
東京大学名誉教授
2

法曹界の『人間観』は間違い?脳の働きから考える「善悪」

法曹界の『人間観』は間違い?脳の働きから考える「善悪」

ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として

“ヒトの罪とは何か”――この問題について、法学や哲学的アプローチでなく、進化生物学・進化心理学的視点から考察するのが今回の講義の趣旨である。ヒトが社会的動物として集団生活を送る中で個人間に利害対立が生じ、これを調整...
収録日:2023/12/11
追加日:2024/02/25
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
3

道元『辨道話』の教え「修行こそわが仏門」とは

道元『辨道話』の教え「修行こそわが仏門」とは

石田梅岩の心学に学ぶ(5)根本としての仏教と道元の教え

石田梅岩の思想の根本をさかのぼると、最澄の説く「本来本法性 天然自性身」、またその言葉から修行への疑問を呈した道元に行き着く。最澄は「人間は本来仏性を持つ、生まれながらに悟った身だ」と言う。仏教とはそうした存在...
収録日:2022/06/28
追加日:2024/05/06
田口佳史
東洋思想研究家
4

玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは

玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは

『江戸名所図会』で歩く東京~上水と十二社(1)「水の都」江戸の上水道

都市を繁栄させるためには水道の整備が不可欠だが、江戸は世界でも有数の水道網が張り巡らされた都市だった。『江戸名所図会』に描かれた玉川上水を中心に、「水の都」としての一面を持った江戸の上水道について深掘りしていく...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/05/05
堀口茉純
歴史作家
5

生成AIの規模拡大で急増する世界的エネルギー事情

生成AIの規模拡大で急増する世界的エネルギー事情

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(4)エネルギーにおける「神経と血管」

AI技術の急速な発展と需要の拡大で、これからさらに世界的に電力消費が増えていくことが予想される。デジタルインフラを支える電力がますます必要とされる中で、カーボンニュートラルなエネルギー供給をいかにして安定的に行う...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/05/04
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者