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DATE/ 2016.07.26

学歴は必要?「幸福度」に影響を与える要因とは

 何が自分にとっての幸福なのか、人によって千差万別といわれます。

 幸福のイメージとして多くの人が思い描くのは、基本的に自分自身が健康で、安定した職に就き、お金に不自由していない状況。その上で、そこそこのパートナーを持ち、体力や容姿にも問題はなく、満足できる家に住み、家庭的にもうまくいっている。いわば社会的に「順風満帆」の状況といえそうです。

 では、幸福になるために、学歴は必要なのでしょうか?

 どんな大学や大学院を出たとか、「もっと上の学校に行きたかったのに、行けなかった」という挫折感は、あなたの「幸福度」を損なっているのでしょうか?

幸福には影響を与える七つの要素があった?

 行動経済学では、「幸福度」には主観的幸福と客観的幸福があると言われています。主観的幸福は生活満足度によって引き起こされますが、客観的幸福には影響をもたらす七つの要素があるというのです。

1.家族関係
2.家計の状況
3.雇用状況
4.コミュニティと友人
5.健康
6.個人の自由
7.個人の価値観

 これはリチャード・レイヤードというイギリスの経済学者による定義なので、日本人の実感とは必ずしもマッチするとは限りません。

日本人は、男性より女性が幸せ?

 少し古いデータですが、平成20年版国民生活白書(内閣府)では「所得上昇は幸福度に結び付いていない」「先進国でも幸福度は高まらず」「所得の不平等と幸福度は相関していない」ことを軸に、所得や不平等以外に幸福度に影響を与える要因として、性別・年齢・職業・学歴など、12項目との関係が調べられました。

<幸福度にプラスの影響があるとされた項目>
・女性である
・子どもがいる 
・結婚している 
・世帯全員の年収が多くなっていく 
・大学または大学院卒である 
・学生である 
・困ったことがあるときに相談できる人がいる

<幸福度にマイナスの影響があるとされた項目>
・年齢が高い
・失業中である
・ストレスがある

<影響なしと見なされた項目>
・自営業である
・何らかのトラブルを経験した

 以上のようになっています。教育程度と幸福度の関係について、海外では「影響力は限定的」との結果が出ていますが、このデータを見ると日本はその例外となりそうです。

日本では高学歴が将来に目標を持ち続けるための原動力?

 ただ、最近の研究では、幸福度には現在の状態だけでなく、過去や将来が関わってくることがわかり、特に将来を構成する「期待・目標・目的」の影響力が強いと言われています。日本では比較的高めの学歴が、将来に「期待・目標・目的」を持ち続けるための原動力となっていることは、大いに考えられそうです。

 いずれにしても、学歴や職業などの「環境的要因」は幸福度の中の10パーセントに過ぎないと断じた研究もあります。幸福度を決める50パーセントは「遺伝で決定づけられた設定値」であり、40パーセントは本人の「意図的な行動」によるものだというのです。

 その幸福度を上げる「意図的な行動」として科学的に実証されたのは、「感謝の気持ちを表す」「他人と比較しない」「楽観的になる」「人に親切にする」などなど。幸福感をもたらすタネはいくつあってもうれしいですね。

<参考文献>
・平成20年版国民生活白書(内閣府)
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