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DATE/ 2022.05.11

宝くじで億万長者になれる可能性はどれぐらい?

 夏といえば、海に祭りに花火とイベントが目白押しですが、「サマージャンボ宝くじ」が発売される時期でもあります。2021年の賞金は、1等と前後賞を合わせると、なんと7億円に上りました。しかし、現実的な話、億万長者になれる可能性は、どれだけあるのでしょうか?

300円で5億円の夢を見るか、3000円で7億円の夢か

 例えば、サマージャンボ宝くじで、1枚300円で20ユニット、600億円分が発売される予定となっているとしましょう。1等の当たりくじは20本ですから、1ユニットに1本、つまり1000万分の1の確率です。そして、各1億円の前後賞は、1ユニットに2本あります。

 となると、宝くじを買って1億円以上当たる確率は1000万分の3ということになります。もちろん10枚買えば100万分の3、100枚買えば10万分の3と確率は上がっていきます。1ユニット1000万枚を買い占めれば、1等、1等前後賞、1等組違い賞、2等、3等、4等、5等、6等まで独占できます。でも、そのためには30億円の資金が入ります。もらえる当せん金は合計して約14億2000万円と、半分以下になるわけで、こんな買い方をする人は考えられません。

 10枚買えば10倍夢に近づく。そこに落とし穴があるのですね。

サメに襲われて死ぬよりは確率が高い!

 では、サマージャンボが当たる確率は、他の「偶然出会うこと」にたとえると、どんなものでしょうか。飛行機に乗って墜落する確率が1000万分の1と言われていますから、縁起は悪いですが「1等前後賞」にであう確率は、3人家族で乗った飛行機が墜落する確率とほぼ同じということになります。

 では、10枚1組で買ったときの100万分の1の確率はどうでしょうか。

 『「日常の偶然」の確率』ティム・グリン=ジョーンズ(原書房)という本によれば、「天然もののカキの中から、宝石に使える品質の真珠と出会う」確率が100万分の1。実際にイギリスのドーセット州というところであった話として、77歳のジェフ・ムール氏が地元のシーフードレストランの前菜の中から天然真珠を見つけた幸運な事例が記されています。サメに襲われて命を落とす確率は1億1000万分の1ですが、カバに襲われて命を落とす確率は65万分の1、サソリでは20万分の1にまで確率が高まります。「サマージャンボで1億円以上」の夢はサメに襲われる死よりは確率が高く、カバに襲われる死よりは低いわけです。

宝くじで夢を見る人は「風が吹けば桶屋が儲かる」を笑えない

 昔から「ありえないほどのわずかな巡り合わせに期待する事」をたとえて「風が吹けば桶屋が儲かる」と言います。この話を分解すると8つの事象と7つの確率的なステップに分解できる、とするのが武庫川女子大学で情報学を教える丸山健夫氏。

 すべての事象が起こる確率を2分の1と仮定しても、「風が吹いた」ときに「桶屋が儲かる」確率は0.5の7乗で、0.0078125。楽観的に見積もって0.8%になると言います。かたや「サマージャンボで1億円以上」は1000万分の1ですから、0.0000001。桶屋のほうが8000倍近くも有利です。宝くじを買う人は、決して桶屋を笑えない、とも言えます。

 また、ポーカーをしていて、ロイヤルストレートフラッシュを出すには、毎日20ゲームやったとして9年以上かかります。この確率が6万6666分の1ですから、サマージャンボで1億円以上を当てるには毎日20枚ずつ買うなら4050年かかるという計算になります。

 宝くじを買うのは「夢を見る時間」を買うものとよく言われますが、まったくその通りではないでしょうか。そのための資金は、1枚=300円なら惜しくないのか、10枚=3,000円で夢を広げるのか。そのあたりは考え方次第と言うしかありません。

<参考文献・参考サイト>
・『「日常の偶然」の確率』(ティム・グリン=ジョーンズ著、原書房)
・宝くじ公式サイト
http://www.takarakuji-official.jp

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