テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.09.29

「不倫で辞任」は日本だけ?世界の政界不倫事情

 「不倫は文化だ」と公然表明してバッシングをうけた俳優の迷言そのままに、芸能界から政界まで、日本国内を騒然とさせている不倫問題。その加熱した報道と数の多さは、確かに文化であるといいたくなるのも無理ではありません。

 しかし、とりわけ深刻なのは政界での不倫疑惑から、議員辞任に及ぶケースです。血税による選挙によって議員となったのに不倫辞任するというのは、あきれた愚行といってよいでしょう。こうしたことは、本人の責を最大としつつも、そうした議員に投票してしまった選挙民のリテラシー不足にも起因するかもしれません。

 「源氏物語」を紐といて、日本における不倫の善悪を解くことには無理があるので、世界視野において、特に、政界における不倫事情についてケーススタディしてみましょう。

利害を裁定する米国

 まず、思いつくのがビル・クリントン前米国大統領のケースでしょう。

 「不適切な関係」という流行語を生み出した、ホワイトハウス実習生とのスキャンダルです。

 ビル・クリントン氏自身が認めた不倫関係によって、アメリカ大統領としては第17代のアンドリュー・ジョンソン氏以来の弾劾裁判にかけられましたが、かろうじて大統領罷免は免れ、辞任することもありませんでした。

 大統領としての権威を失墜させ、多くの非難を受けての続投、そして、その後の影響は別の機会にするとして、注目すべきは、不倫をしても職務と能力を天秤にかけた、議会と民意の裁定です。

 米国では歴史的に、ジョン・ケネディ大統領とマリリン・モンローの不倫が有名ですが、ケネディ氏は「キューバ危機」を乗りきった実績、クリントン氏は米国の繁栄基盤となった「IT革命」という実績評価にあります。

個人主義を尊重する仏国

 そして、不倫について意外に問題視しない国民性を持つのがフランスです。

 歴代大統領と務めた、ミッテラン氏にしても、オランド氏にしても、公然とした不倫というか恋愛事情について、日本のメディアが牽引するような国民的なバッシングに至ることはありませんでした。

欧米のスタンダードと日本の偽善

 不倫問題の裁定について、実績重視での評価と個人主義的なプライバシーの尊重というのが、欧米のスタンダードということができそうです。実績といえば、「英雄、色を好む」という言葉もある通り、真の実力者には、引きずり下ろそうとする力以上に、その立ち位置を守ろうとする力も働くものです。

 日本の政界での不倫問題は、不倫そのもの以上に、実績と人格的な問題を露わにするキッカケに過ぎないようにも思えます。

 山尾志桜里衆院議員の不倫問題については、国会での答弁で印象づけられた他人を厳しく批判する姿勢にふれて、マスコミに扇動された民意による「ダブルスタンダードの偽善」を問題視したタレントのケント・ギルバート氏のコメントを思いおこすべきでしょう。

 他人を厳しく批判しながら、自分もひそかに同じことをやる「ダブルスタンダードの偽善」、気をつけたいものです。

<参考サイト>
・産経ニュース:ケント・ギルバート ニッポンの新常識
http://www.sankei.com/column/news/170922/clm1709220006-n1.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

遍歴とアバター…多様な仏、多様な菩薩が変容する面白さ

遍歴とアバター…多様な仏、多様な菩薩が変容する面白さ

おもしろき『法華経』の世界(5)遍歴するアバター

『銀河鉄道の夜』の著者・宮沢賢治にとってもそうだが、『法華経』の重要なテーマは「遍歴」であると考えられる。遍歴や修行の旅は、仏教的には方便を用いて悟りに向かうことだが、『大日経』住心品には悟りと大悲こそが究境と...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/06/29
鎌田東二
京都大学名誉教授
2

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者
3

注目は納豆!腸内細菌が生成する若返り物質「ポリアミン」

注目は納豆!腸内細菌が生成する若返り物質「ポリアミン」

腸内細菌の可能性とマイクロバイオームのダイバーシティ

近年、腸内細菌のさまざまな働きが明らかとなり、病気の治療や予防に加え、アンチエイジングにも効果のあることが分かってきた。人間と古いつき合いでありながら、新しい可能性に満ちた腸内細菌のパワーについて、順天堂大学医...
収録日:2016/06/27
追加日:2016/08/27
堀江重郎
順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授
4

鎌田東二先生の講義で「人生の究極の境地」を体感する

鎌田東二先生の講義で「人生の究極の境地」を体感する

編集部ラジオ2025(13)鎌田東二先生の講義集

鎌田東二先生が令和7年(2025年)5月30日にご逝去されました。鎌田先生は神道学者でいらっしゃると同時に、世界の神話や神秘思想にも深く通暁され、行動的かつ実践的に「知」と「社会」と「人の生き方」との連携を軽やかに推し...
収録日:2025/06/11
追加日:2025/06/26
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
5

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か

昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
與那覇潤
評論家