社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.10.08

1000万は軽く超える?大学教授の平均年収

 少し前になりますが、京大の現役教授が年収をブログで公開したことが話題になりました。基本給約660万円に賞与約279万円で、年収は940万円(2013年分)。これが果たして少ないのか多いのかが論点です。

 ちなみに公開に踏み切った法学部の高山佳奈子教授は2005年に36歳で教授に昇任された、いわばエリート中のエリート。ネット上で公開された給与明細への反響について、「講演や原稿料などの副収入もあるが、資料費などでしばしば赤字」「研究費は年間12万5000円」などの補足も行っています。

国公立大学の教授といえども年収格差は存在する

 そこで、平成28年度国立大学教授の平均年間給与額を調べてみることにしました。これらはすべてガイドラインに従って公開されることになっています。トップ5は

東京大学/1171人/1189万円
東京工業大学/341人/1165万円
東京医科歯科大学/143人/1156万円
東京海洋大学/80人/1154万円
政策研究大学院大学/29人/1135万円

 これらと比べると京都大学の1094万円(846人)はやや低いとはいえ、全体の中では決して低過ぎる数字ではありません。同じ近畿圏で、大阪大学は1112万円(697人)、神戸大学は1073万円(399人)、京都教育大学は1021万円(61人)と公表されているからです。

私学と国公立では、どのぐらい差があるのか

 一方、私立大学も国公立大学も平均すると、大学教授はいったいどのぐらいの平均年収なのかは、賃金構造基本統計調査を見れば分かります(いずれも平成27年度)。

男性:1077万円(57.7歳)
女性:1020万円(57.3歳)

 労働時間や業務内容に男女差のない教授職としては、差があるのが不思議な気がしますね。

 ちなみに国公立大学と比較すると有名私立大学の方が待遇は良いとされており、今回の年収公開も「社会一般の情勢に適合したものとなるよう」行われたものでした。私学のなかで、2016年度年収の公開に踏み切っている数少ない大学が法政大学です(以下)。

専任教員:1362万円(54.9歳、686名)
専任職員: 986万円(42.1歳、408名)

大学教授になるまでの年収は?

 それにしても、大学教授になるには博士課程を終えた後、助教→常勤講師→准教授→教授とステップを踏んでいく必要があります。この点、京大の公開情報を見てみると「モデル給与」という欄がありました。

27歳(助教、博士修了初任給) 445万円
35歳(助教、配偶者・子1人) 630万円
45歳(准教授、配偶者・子2人)873万円

 なるほど、配偶者や家族にもきめ細かな設定。高山教授の不満の奥には、「年収が低い」ということ自体よりも「業績より年齢・家族構成で定められる」ことがあったのかもしれません。

払う側にしてみると

 長年の間、国公立大学と私立大学との学費には、笑ってしまうような格差がありました。1975年の授業料を比較すると、国立大は3万6千円、私立大学平均が18万円強だったのです。この頃までは「自分で学費を稼いだ」と威張る学生が多かったのもうなずけますね。

 国立大学の法人化によって、現在ではその差は相当縮まっています。平成27年度のデータを平均すると、国公立大学の授業料は53万7千円、私立は文系74万6千円、理系104万8千円、医歯学系273万7千円の数字が出ています。親にとっては、大学教員の給与は自分たちのサラリーから出るもの。まだまだ目がくらむ高みにある、とも言えるのではないでしょうか。

<参考サイト>
・文部科学省所管国立大学法人の職員の給与の水準(平成28年度)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/attach/1387228.htm
・平成28年賃金構造基本統計調査(職種)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001011429
・法政大学役員(常勤)・選任教職員の報酬・給与水準
http://www.hosei.ac.jp/gaiyo/johokokai/keiei/kyuyo_suijun.
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性

ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
3

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
4

島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本

島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本

編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは

ある国について、あるいはその社会についての詳細な実状は、なかなか外側からではわからないところがあります。やはり、その国についてよくよく知るためには、そこに住んでみるのがいちばんでしょう。さらにいえば、たんに住む...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/20
5

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授