社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「努力は必ず報われる」のは本当か?
「努力は必ず報われる」という言葉があります。
「努力しても報われないことがあるだろうか。たとえ結果に結びつかなくても、努力したということが必ずや生きてくるのではないだろうか。それでも報われないとしたら、それはまだ、努力とはいえないのではないだろうか」
こちらは、「世界のホームラン王」として名高い王貞治氏の言葉です。
スポーツから学業、仕事に至るまで、「努力」は称賛こそされ、否定されることはありませんでした。今回、取り上げたいのは、そんな「努力」にエクスキューズを叩きつけたタイトルで話題となった中野信子さんの著書『努力不要論』です。
中野さんは、脳科学者で、NHK「英雄たちの選択」のコメンテーターとしてご存じの方も多いのではないでしょうか。
本書で中野さんは、「努力は報われる」は半分本当で、半分嘘であると主張します。
強いられた無理な課題やノルマで心が折れてしまうサラリーマンも少なくありません。だからこそ、昨今、「頑張らない」「無理しない」、そんな生き方が提案されるようになってきました。
「できないのは努力が足りないからだ」と根性論や精神論でもっともらしく説教するのは、どちらかというとブラックな企業の洗脳手法です。人の判断力を奪うには、睡眠時間を奪い、食べ物を与えず、高ストレスな環境を用意すればよく、それだけでほぼ洗脳できてしまうとのことです。
また、過剰な努力の危険性は、その中毒性にあるといいます。始めると途中でやめられなくなるばかりでなく、過剰な努力の対価として倫理的に悪い行いをする傾向が高くなるとのこと。その理由は、無意識な脳のはたらきとして「自分はこれだけ頑張っているのだから許される」という言い訳をしてしまうからです。
不要な努力とは、精神論的で根拠のない過剰性にあります。苦労することが努力することではないことを、まず知っておくべきでしょう。
人間の能力や機能は、何もしないとどんどん衰えていくことから、負荷をかけ続ける必要があります。努力は、無意味な苦労ではなく、意味ある負荷としてその価値を見出すことができます。
人間の能力や限界を客観的に捉え、戦略的に設定された目標にむかう負荷=努力は否定されるものではありません。
中野さんは、「間違った努力」とその弊害を分析しつつ、成果の出る努力に必要なものとして、1:目的を設定する、2:戦略をたてる、3:実行する、という3段階のプロセスを踏むことを説いています。
「石の上にも三年という。しかし、三年を一年で習得する努力を怠ってはならない」
これは、パナソニック創業者である松下幸之助の言葉です。結果や成果につながる、意味のある努力が、計画性に基づくものであることを、偉人のメッセージからもうかがい知ることができます。
「努力しても報われないことがあるだろうか。たとえ結果に結びつかなくても、努力したということが必ずや生きてくるのではないだろうか。それでも報われないとしたら、それはまだ、努力とはいえないのではないだろうか」
こちらは、「世界のホームラン王」として名高い王貞治氏の言葉です。
スポーツから学業、仕事に至るまで、「努力」は称賛こそされ、否定されることはありませんでした。今回、取り上げたいのは、そんな「努力」にエクスキューズを叩きつけたタイトルで話題となった中野信子さんの著書『努力不要論』です。
中野さんは、脳科学者で、NHK「英雄たちの選択」のコメンテーターとしてご存じの方も多いのではないでしょうか。
本書で中野さんは、「努力は報われる」は半分本当で、半分嘘であると主張します。
過剰な努力の危険性
人生、どんなに頑張っても、できることは限られています。強いられた無理な課題やノルマで心が折れてしまうサラリーマンも少なくありません。だからこそ、昨今、「頑張らない」「無理しない」、そんな生き方が提案されるようになってきました。
「できないのは努力が足りないからだ」と根性論や精神論でもっともらしく説教するのは、どちらかというとブラックな企業の洗脳手法です。人の判断力を奪うには、睡眠時間を奪い、食べ物を与えず、高ストレスな環境を用意すればよく、それだけでほぼ洗脳できてしまうとのことです。
また、過剰な努力の危険性は、その中毒性にあるといいます。始めると途中でやめられなくなるばかりでなく、過剰な努力の対価として倫理的に悪い行いをする傾向が高くなるとのこと。その理由は、無意識な脳のはたらきとして「自分はこれだけ頑張っているのだから許される」という言い訳をしてしまうからです。
努力はしなくてよい?
では、頑張ること、努力することは、本当に不要なのでしょうか?不要な努力とは、精神論的で根拠のない過剰性にあります。苦労することが努力することではないことを、まず知っておくべきでしょう。
人間の能力や機能は、何もしないとどんどん衰えていくことから、負荷をかけ続ける必要があります。努力は、無意味な苦労ではなく、意味ある負荷としてその価値を見出すことができます。
人間の能力や限界を客観的に捉え、戦略的に設定された目標にむかう負荷=努力は否定されるものではありません。
中野さんは、「間違った努力」とその弊害を分析しつつ、成果の出る努力に必要なものとして、1:目的を設定する、2:戦略をたてる、3:実行する、という3段階のプロセスを踏むことを説いています。
「石の上にも三年という。しかし、三年を一年で習得する努力を怠ってはならない」
これは、パナソニック創業者である松下幸之助の言葉です。結果や成果につながる、意味のある努力が、計画性に基づくものであることを、偉人のメッセージからもうかがい知ることができます。
<参考文献>
・『努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』(中野信子著、フォレスト出版/2014)
・『努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』(中野信子著、フォレスト出版/2014)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本は第二次大戦後に軍事飛行等の技術開発が止められていたため、宇宙開発において米ソとは全く違う道を歩むことになる。日本の宇宙開発はどのように技術を培い、発展していったのか。その独自の宇宙開拓の過程を解説する。(...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/02
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
現代流にいうと地政学的な危機感が日本を中央集権国家にしたわけだが、疫学的な危機によって、それは早い終焉を迎えた。一説によると、天平期の天然痘大流行で3割もの人口が減少したことも影響している。防人も班田収授も成り行...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/01
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
社会的時差ボケの発生には、働き方も大きな影響をもっている。特にシフトワークによって不規則な生活リズムを強いられる業種ではその回避が難しい。今回は、発がんリスク、メンタルヘルスの不調など、シフトワークが抱える睡眠...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/30