社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.08.21

要注意!「お風呂でスマホ使用」の感電リスク

浴室でのスマホ使用で感電死

 浴室は家のなかで最もリラックスできる場所です。湯船につかりながら読書を楽しむ人も少なからず、今では、動画を観たり、ゲームをプレイしたりと、浴室でタブレットやスマホコンテンツを楽しんでいるという話をよく聞くようになりました。

 かつては、ジップロックなどビニール袋で防水対策をして浴室に持ち込む方法がありましたが、最近のスマホは防水が標準となっていることもあり、より持ち込みやすくなっているといってよいでしょう。

 2017年7月、そんな浴室でのスマホ使用で感電死というニュースが報道されました。亡くなったのはテキサス州の14歳の少女です。シチュエーションとしては、遺体のそばには携帯、充電ケーブル、延長コードが確認され、コンセントから延長コードで充電しながら浴室でスマホを使用していたようです。

最新の防水スマホは故障のリスクを大幅に軽減

 「浴室での読書あるある」ですが、読書しながらウトウトして、本を水没させてしまうことがあります。ふやけた本は元にもどりませんが、最新の防水仕様のスマホであれば、完全ではないようですが故障のリスクが大幅に軽減された仕様になっています。

 スマホの防水・防塵性能を表わす指標として、「IP67」や「IP65/IP68」といった表現が使われています。これは、「国際電気標準会議(IEC)」が規定した防水・防塵性能の等級を表わし、「日本工業規格(JIS)」も準拠採用しています。

 「IP」のあとに続く2ケタの数字のうち、前の数字(第一特性数字)が防塵性能の等級を表わし、後の数字(第二特性数字)は防水等級を表わしています。

 ちなみに、Apple社のiPhone 8/8 Plusは「IP67」です。防塵に関する等級が「6」で、防水に関する等級が「7」となり、そのWikipediaの解説によると、粉塵が中に入らない(耐塵形)、一時的に一定水圧の条件に水没しても内部に浸水することがない(防浸形)仕様となります。

 こうした防塵防水仕様となると、浴室で使いたくなる気持ちもよくわかります。

世界で起こっているお風呂での感電死

 米国少女の痛ましいケースは、スマホ単体であれば、内蔵電池の電圧的に感電することはなかなかありませんが、漏電のリスクを知りつつも、プラグからの延長コードの破損を見落として事故感電したようです。

 一般的な感電による人体への影響は、20mA程度で身体が痙攣をおこし、呼吸困難となり(電気が流れ続けると死亡)、100mAで致死的といわれています。日本のコンセントから得られる交流100Vが漏電し濡れた人体に触れると50mAを超える電流が体内に流れることになるので、死のリスクはいうまでもないでしょう。ましてや、米国は120V、欧州では200Vを越える電圧です。

 同様の感電死は、2015年モスクワで、2017年2月にフランスの18歳少年、3月にはイギリスの男性と、充電をともなう風呂使用で報告されています。

 米国少女のニュースが日本でこれほどまでに取り上げられたのは、「これは誰にでも起こりえること。誰にもこんな思いはさせたくない」と、遺族がFacebookで注意喚起を呼びかけ、数千回シェアされたことによります。

 浴室ではくれぐれもスマホ単体での使用に留め、コンセントからはもとよりチャージャーも含めて、充電しながらの使用は厳重に慎みましょう。

<参考サイト>
・ウィキペディア:電気機械器具の外郭による保護等級
https://ja.wikipedia.org/wiki/電気機械器具の外郭による保護等級
・いしゃまち:感電は命の危険も!体に与える影響や対策を紹介
https://www.ishamachi.com/?p=49924
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景

チベット、内モンゴル、新疆ウイグルなど、少数民族に対する深刻な人権侵害をめぐって欧米諸国から強い批判を浴びている中国。しかし、こうした人権問題は今に始まったことではない。中華人民共和国建国の経緯と中国共産党の思...
収録日:2021/10/15
追加日:2021/12/24
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
2

プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性

プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性

プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義

プロジェクトマネジメントが世界的に普及し始めたのは1990年代。ソフトウェア産業の発展とともに拡大を続け、時代のニーズを受けて多くのシーンに定着してきた。今回は、その基本に立ち返り、国際標準をもとに、プロジェクトと...
収録日:2025/09/10
追加日:2025/12/03
大塚有希子
法政大学専門職大学院イノベーションマネジメント研究科准教授
3

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
4

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害

高度成長のために頑張った日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の評価を得たが、その後の日本企業の凋落、競争力の低下を考えると、その弊害を感じずにはおられない。読書人口が減っている現状をみると、いつのまにか「世界...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/12/01
5

質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?

質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?

歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために

歴史上の出来事の本質を知るには、その真贋を見定めなければいけない。そのためにはどうすればいいのか。記述の異なる複数の本がある場合、いかにして真実を見極めるか。また、司馬遼太郎の作品が「歴史事実」として認識されて...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/12/02