社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.03.06

80~90℃のサウナで火傷しないのはなぜ?

 体を芯から温めて、血行を良くしてくれるサウナ。温泉や銭湯に行ったら欠かさないという人も多いのではないでしょうか。サウナの中には時計とともに温度計が設置していることがあります。80℃や90℃、場合によっては100℃を超えることも。温泉は44~45℃くらいでもかなり熱いですし、もし100℃近い熱湯が手にかかったらやけどしてしまいます。ではサウナがそんな高い温度でも大丈夫なのはなぜなのでしょう?

世界最高気温でもサウナには全然及ばない?

 20年ほど前は真夏でも気温は30℃を少し超える程度でしたが、最近は連日35℃超えなんてことも不思議ではないくらい暑くなっている日本列島。まるでサウナにいるようだと感じることもあるかもしれませんが、それでもサウナのように80℃なんてことはありません。日本記録でも41.1℃(2020年8月17日に静岡県浜松市、2018年7月23日に埼玉県熊谷市で記録)。世界記録でも56.7℃(1913年7月10日に米カリフォルニア州デスバレー国立公園で観測)。サウナの温度に比べればまだまだ(?)の温度です。

 冒頭に挙げた温泉や熱湯とサウナの大きな違いは、水か空気かということ。80℃や90℃の水に触れるのと、90℃の空気に触れるのではまったく違うのです。なぜなら、空気は水に比べて温度を伝えにくいから。言い換えると熱伝導率が低いのです。熱湯に触れると皮膚はすぐに熱くなってしまいますが、周囲の空気の温度が高くても皮膚がすぐに空気と同じ温度にはならないのです。

汗が体を守ってくれる!そのメカニズムは

 ここで重要になるのがサウナの湿度です。サウナに入るとむわっとした空気で湿気があるようにも感じられるかもしれませんが、実は湿度は5~10%程度に保たれています。空気が乾燥していて熱伝導率が低いから、100℃近い温度でも平気でいられるのです。逆に湿度がほぼ100%のミストサウナの場合は温度が40℃ほどになっています。湿度100%で通常のサウナと同じくらいの高温だったらやけどしてしまいますからね。

 さらにサウナに入ると汗をいっぱいかきますが、これも皮膚が熱くなり過ぎるのを防止する効果があります。汗がバリアとなり皮膚を守ってくれることに加え、水分が蒸発する時に温度を下げる効果があるため、体の熱を奪ってくれるのです。これは気化熱という現象で、夏場に打ち水をして温度を下げようとするのも同じく気化熱の効果を期待してのものです。汗をたくさんかくということは脱水症状になりやすいので、サウナを利用する前後にはしっかりと水分を摂取し、体調を整えるようにしましょう。

<参考サイト>
・気象庁 観測史上の順位
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/rankall.php
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
2

世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係

世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係

数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家

数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
3

布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方

布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方

熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方

眠る環境は各家庭の状況や個人の好みによって大きく異なるが、一般的に「良い睡眠」のために望ましい環境はどのようなものだろうか。布団や枕などの寝具、エアコンなどの室温コントロールを含めた寝室の環境、また寝つきの良く...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/12/07
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
4

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化

浮世絵を中心に日本画においてさまざまな絵画表現の礎を築いた葛飾北斎。『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が特に有名だが、それを描いた70代に至るまでの変遷が実に興味深い。北斎とその娘・応為の作品そして彼らの生涯を深...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/05
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
5

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授