社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
カード支払い不可の店がカードに対応しない理由
財布の中身を心配する必要がなく、便利でポイントも貯まるクレジットカード。しかし、身近にはカード支払いに対応しないお店や、ランチタイムは使用不可としているお店もあります。なぜお店によってキャッシュレスの対応に差があるのでしょうか。調べてみました。
この理由は、主にお店側がカード会社に支払う手数料にあります。
業種やカードブランドにより異なりますが、およそ3%~7%がカード会社に渡される仕組み。ランチメニューをお店のカンバンとして、夜のために「出血サービス」しているような飲食店では、数%の利益率は命綱。カード利用を嫌がる心理もわからないではありません。
店内にレジを置かないお店は、2017年11月の開店以来、ニュースなどで話題を集めています。みんなが一斉に飲食店を利用するランチタイムなど、レジの行列によるストレスがなくなるのは、とても喜ばしいこと。お店側は売上管理業務を1日約40分省力化した、と伝わっています。
今後はこういう二極化が広がっていくのでしょうか。
利用しているのは「オンラインショッピング(インターネットを通じた買い物)」や「携帯電話料金」がメイン。スーパーマーケットでのカード支払い利用経験者は29.8%、飲食店では16.4%、デパートでは12%と意外な少なさを示しています。
カード決済では支払いに手間がかかる側面が嫌われているのでしょうか。
とくに対面販売の場合、決済処理に万が一失敗した時の気まずさを思うと、さっさと現金払いするほうが後腐れがない、という客側の心理もありそうです。実際、決済処理がスムーズにいかないと、加盟店とカード会社の間で電話連絡が取られるケースもあるということです。
日々支払いに応じる店舗側では、この動向が分かっているため「カード払いに対応しなくても顧客を失わない」と判断してきたのでしょう。
海外からの観光客がカード払いを受け付けてもらえず、戸惑う場面にもまだまだ出会います。2020年のオリンピックに向けて「観光立国」を目指す政府としては、捨て置けない問題です。
Visaの調査では、10人のうち9人の外国観光客が東京でカード払いを利用しようと思ったが、実際にいつも利用できたのは5人に2人だけだったとしています。もしカード払いを利用できる商業施設があったら、もっとお金を使うと思うと答えた観光客は66%。これによる「機会損失」は、大きな問題として議論されています。
日本ならではの食事とショッピングは、日本を訪れる外国人にとっても日本人にとっても主な楽しみ。カード払いのできないお店は今後ますます減り続けていくのが運命かもしれません。
「ランチタイムはカード支払いご遠慮ください」と言われてしまう理由
クレジットカードが使えるお店かどうか、客の側はだいたいステッカーが貼ってあるかどうかで判断します。懐具合のきびしいときは、なおさらですね。ところが、クレジット会社の加盟店ステッカーのあるお店を選んでも、いざお会計のときに「ランチタイムは現金のお支払いのみ、承っております」と断られてしまう場合があります。この理由は、主にお店側がカード会社に支払う手数料にあります。
業種やカードブランドにより異なりますが、およそ3%~7%がカード会社に渡される仕組み。ランチメニューをお店のカンバンとして、夜のために「出血サービス」しているような飲食店では、数%の利益率は命綱。カード利用を嫌がる心理もわからないではありません。
一方「完全キャッシュレス」レストランも登場している
しかし一方では、「完全キャッシュレス」で「現金払いお断り」を売り物にするお店も出てきました。東京・小伝馬町の「GATHERING TABLE PANTRY(ギャザリング・テーブル・パントリー)」、ロイヤルホールディングスの経営です。店内にレジを置かないお店は、2017年11月の開店以来、ニュースなどで話題を集めています。みんなが一斉に飲食店を利用するランチタイムなど、レジの行列によるストレスがなくなるのは、とても喜ばしいこと。お店側は売上管理業務を1日約40分省力化した、と伝わっています。
今後はこういう二極化が広がっていくのでしょうか。
カードは持っていても、使うのはネットショッピング?
カード会社大手のジェーシービー調べ(2017年度版)では、クレジットカードの保有率は84.2%。保有者一人あたりの平均保有枚数は3.2枚ですが、持ち歩かれるのは2.1枚に留まります。利用しているのは「オンラインショッピング(インターネットを通じた買い物)」や「携帯電話料金」がメイン。スーパーマーケットでのカード支払い利用経験者は29.8%、飲食店では16.4%、デパートでは12%と意外な少なさを示しています。
カード決済では支払いに手間がかかる側面が嫌われているのでしょうか。
とくに対面販売の場合、決済処理に万が一失敗した時の気まずさを思うと、さっさと現金払いするほうが後腐れがない、という客側の心理もありそうです。実際、決済処理がスムーズにいかないと、加盟店とカード会社の間で電話連絡が取られるケースもあるということです。
キャッシュレス社会の遅れとインバウンド消費への懸念も
日本のキャッシュレス社会化は、世界と比べて周回遅れだと言われます。日本銀行が2017年に発表したレポートでは、紙幣や小銭を合計した現金流通高に対する名目GDP(国内総生産)比率は19.4%に達します。ユーロ圏では10.6%、米国は7.9%、英国は3.7%とあり、日本が圧倒的な「現金主義」であることが証明されたかたちです。日々支払いに応じる店舗側では、この動向が分かっているため「カード払いに対応しなくても顧客を失わない」と判断してきたのでしょう。
海外からの観光客がカード払いを受け付けてもらえず、戸惑う場面にもまだまだ出会います。2020年のオリンピックに向けて「観光立国」を目指す政府としては、捨て置けない問題です。
Visaの調査では、10人のうち9人の外国観光客が東京でカード払いを利用しようと思ったが、実際にいつも利用できたのは5人に2人だけだったとしています。もしカード払いを利用できる商業施設があったら、もっとお金を使うと思うと答えた観光客は66%。これによる「機会損失」は、大きな問題として議論されています。
日本ならではの食事とショッピングは、日本を訪れる外国人にとっても日本人にとっても主な楽しみ。カード払いのできないお店は今後ますます減り続けていくのが運命かもしれません。
<参考サイト>
・株式会社ジェーシービー:クレジットカードに関する総合調査
http://www.global.jcb/ja/press/00000000162407.html
・株式会社NTTデータ経営研究所:クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会 第六回検討会資料
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoryu/credit_carddata/pdf/006_02_00.pdf
・株式会社ジェーシービー:クレジットカードに関する総合調査
http://www.global.jcb/ja/press/00000000162407.html
・株式会社NTTデータ経営研究所:クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会 第六回検討会資料
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoryu/credit_carddata/pdf/006_02_00.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
国際関係においては外交と軍事(内政)のバランスが重要となる。著書では、近代日本において、それらのバランスが崩れていった過程を3つのステージに分けて解説しているが、今回はその中の、国のトップが外政家・原敬から職業外...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/12
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
音が波であることは分かっても、それが三角関数で支えられていると言われてもピンとこないという方は少なくないだろう。そこで、その話を補足するのが倍音や周波数という概念であり、そのことを目で確認できるとっておきのイメ...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/11
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
ヒトは、そもそもの生き方であった狩猟採集生活でも子育てを分担してきた。それは農業社会においても大きくは変わらなかったが、しかし産業革命以降、都市化が進み、貨幣経済と核家族化と個人主義が浸透した。ヒトが従来行って...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/09/14