テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.06.01

人気のユーチューバー、子どもをめぐるリスクとは?

 近年、注目度を増しているユーチューバー(YouTuber)。人気動画サイトYouTubeに動画をアップロードし、広告収入を得ている人のことです。社会的に、ユーチューバーが職業として定着していると考える人は少ないかもしれませんが、しかし確実にその存在感は増しています。

 インターネットサービスプロバイダーのBIGLOBEは、2017年に発表した「子どものスマホ動画視聴に関する調査」で、小学生の半数以上がユーチューバーの動画を視聴しているという統計を出しました。2017年にソニー生命保険が発表した「男子中学生が将来なりたい職業」のランキングでも、ユーチューバーは3位と健闘。子どもたちと、インターネット動画サイトとの距離は、大人が思っているよりもグンと近いものです。

 そこで今回は、YouTubeをはじめ、動画サイトと子どもたちの付き合い方に大人がどう気を配ればよいのかをまとめました。

視聴時間のコントロールは子どもにさせる

 まずは家族の中で視聴ルールを決めましょう。例えば、「動画サイトを見るのは1日2時間まで」などです。YouTubeには、世界中からアップロードされた膨大な数の動画が存在しています。中には優れた作品を取り扱っているチャンネルもありますが、1本動画を見終わると、自動的に関連性のある次の動画の再生がはじまり、意識的に止めなければ自然と動画視聴時間は長くなってしまいます。

 しかし、親から一方的に「もう消しなさい」と言われても、「いまいいところなのに」と思ってしまうもの。ですから、与えた2時間の配分は子どもたち自身にコントロールさせてみてはどうでしょうか。そうすれば、この動画とこの動画を見ようといった時間の使い方の訓練にもなります。終わる時間まで含めて、子どもたちに判断をさせること、そして時間を守っていない場合はきちんとしかることが大切です。

 小学校低学年のお子さんがいらっしゃる場合は、視聴サイトや視聴方法に気を配る必要もあります。中にはわざと残酷だったり、ショッキングなシーンを入れ込む、悪意のある動画も存在しています。心配な場合は、子ども向けの視聴アプリなどを使用しましょう。

動画アップに潜むたくさんの危険

 子どもたちはユーチューバーをとても身近な存在と感じています。たくさんの動画や、作品を見ているうちに、「自分もやってみたい」と思うようになるかもしれません。それこそ、将来の夢がユーチューバーという時代ですから、それは自然なことのように思います。しかし、だからといって勝手に動画をアップロードさせるわけにはいきません。

 そもそも、YouTubeでは13歳未満の児童のアカウント取得ができないルールです。つまり、アップロードには必ず保護者の同意が必要になります。それを踏まえて、動画アップを許可するか否か、きちんと家族で話し合いましょう。中でも、子どもたちに理解させなくてはならないのは、「動画をアップするということは、さまざまな危険と隣り合わせになる」ということです。

 例えば、うっかり口にした発言から住所や通っている学校、本名が視聴者に知られてしまうなどの個人情報の流出。問題のある発言や、行動をアップロードしてしまい「炎上」するという自体も起こりえます。また、一度ネットに出てしまった動画や画像は、容易に消すことができません。他者からのコメントも、決して温かいものだけではないでしょう。楽しいだけでなく、こうしたリスクや危険性を伝えなくてはなりません。

親が動画制作に協力することもアリ?

 子どもたちはスマホネイティブ世代であり、インターネットネイティブ世代です。放っておいても、手元のスマホで動画も撮影できますし、アップロードも容易に行えます。だからこそ、頭ごなしにすべてを「NG」にしてしまうことはむしろ逆効果ということも言えます。

 ならば、逆に保護者が積極的に関わるということも考えられるのではないでしょうか。動画撮影や編集など、動画制作を一緒に行うことで、リスクをぐんと減らすこともできます。動画制作でコミュニケーションというと突飛な印象も受けますが、子どもたちが楽しんでいることを、保護者側が理解するということも大切です。

ネットの世界を「わからない」で済ませない

 日々進化し続けるインターネットの世界。それは技術面だけでなく、ネットの中で生まれる文化についても同じです。「わからない」「変な世界」とくくってしまうのではなく、子どもたちがリアルに接している世界を、大人もきちんと受け止めながら、一緒に今の時代を生きる必要があるのかもしれませんね。

<参考サイト>
・BIGLOBE:子どものスマホ動画視聴に関する調査
http://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2017/02/170228-1
・ソニー生命保険株式会社:中高生が思い描く将来についての意識調査2017
http://www.sonylife.co.jp/company/news/29/nr_170425.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道

機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
木下康司
元財務事務次官
2

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題

国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
小原雅博
東京大学名誉教授
3

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者
4

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か

昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
與那覇潤
評論家
5

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授