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DATE/ 2018.07.19

大音量にご用心!イヤホンと難聴リスク

 SONYがウォークマンを発売して約40年、家の外で音楽を聴くのは当たり前の時代になりました。さらにはスマートフォンの普及により、音楽のみならずラジオやテレビ番組、動画サイトも、イヤホンやヘッドホンを通して好きなところで視聴できます。ひとたび電車に乗れば、老若男女を問わず個人的な音楽に浸っている、そんな光景があふれています。

 しかし、長時間音楽を楽しんでいたら耳鳴りがした、耳そのものが悪くなったような気がした…そんな経験をしたことはないでしょうか。ちょっとボリュームが大きかったかな?なんて気に留めずにいるのは危険かもしれません。スマートフォンには欠かせない、イヤホンやヘッドホンですが、使い過ぎで難聴になるケースが報告されているのです。

WHOも警告!増え続けるイヤホン/ヘッドホン難聴

 2015年3月3日、日本ではまさに「耳の日」、世界保健機構WHOはスマートフォンをはじめとした音楽ツールの過度の使用や、ナイトクラブやスポーツ観戦などで浴びる騒音により約11億人の若者が聴力障害の危機に晒されていると発表しました。中高所得層ですと12歳から35歳の間で、実に50%以上がオーディオ機器を危険なレベルで使っているというデータが出ており、難聴患者の増加が危惧されています。

 イヤホン難聴の症状としてあげられているのは「両耳の聴力の低下」「耳鳴り」「めまい」だそうです。習慣的に大音量を聴き続けた結果、気がつかないうちに難聴になっていたというケースも伝えられています。失われてしまった聴力を回復させることは難しく、WHOは、「音楽を聴くのは1日1時間までが望ましい」と呼びかけました。

 音楽は1日1時間…かつてのファミコンブームを思い出させる警告ですね。確かに、イヤホンもヘッドホンも、耳に直接つけたり当てたりする形で使われるものです。構造上どうしても音源が耳に密接するため、耳への負荷が大きくなってしまうのは想像に難くありません。

どれくらいまで音楽?どれくらいから騒音? 

 御存知の通り、耳は非常に繊細な器官です。中でも音を聴くのに重要な役割を果たす内耳は、高周波数帯域の音からのダメージを受けやすいという特徴があります。個人差もあるようですが、日常的に大きな音を聴き続けることに耐えられず、次第に聴力が低下していってしまうそうです。

 どれくらいの音量からが危険なのかと言いますと、WHOによれば、耳に負荷がかかるのは、85dBで8時間、100dBで15分とのことでした。日常的な音に置き換えますと、電車や地下鉄の走行音が80dB、カラオケで90db、電車が通過中の高架線下で100dbくらいだそうです。

ボリューム調節とイヤホン選び

 100dBで15分…WHO基準では通勤通学の時間に電車内で音楽を楽しむのは難しそうですね。とはいえ、毎日の通勤通学やランニングの最中に音楽を我慢するのはストレスになってしまうという方も多いと思われます。難聴になるのは困るけど、音楽のある生活を楽しみたい場合はどうすれば良いのでしょう?

 一つ目には、当たり前ですがボリュームを下げること。数値にしてだいたい60dBぐらい、日常会話と同じくらいの音量ですね。機種や設定、イヤホンの種類にもよりますが、音楽再生機器の最大ボリュームの60%が目安とされています。

 二つ目には、大音量の音楽を聴いたり騒音に晒されたりした際は、静かな環境で耳を休ませること。音楽を聴いていた3倍の時間、静寂な環境にあるのが理想だそうです。

 そして使用するイヤホンやヘッドホンを選ぶことも重要です。自分の聞きたい「音」に集中できるよう遮蔽性が高く、また、周囲の騒音を打ち消すノイズキャンセラー機能が付いているものが良いそうです。以前は高価でしたが最近では安いものも出ていますので、買換えを検討されている方は各メーカーをチェックしてみてください。

もしもイヤホン難聴かもと思ったら

 イヤホン難聴に限らず、難聴は軽度の段階ではどうしても自覚しにくいと言われますが、最近どうも耳がおかしいような…と思ったら、すぐ耳鼻科にかかるようにしてください。難聴は痴呆症との関連性が高いという説もあり、悪くすると耳の聞こえだけに留まらない可能性も懸念されています。聴力低下の直後であれば薬により回復が見込めるケースもあるそうなので、早めに専門家に診てもらいましょう。

 音楽は人類の発明したもっとも美しい娯楽の一つ。生涯にわたって楽しんでいけるよう、日頃から耳を労っていくことを心がけたいですね。

<参考サイト>
WHO:Make Listening Safe
http://www.who.int/pbd/deafness/activities/MLS/en/
・日本WHO協会:若者の難聴リスクに警鐘
https://www.japan-who.or.jp/event/2015/AUTO_UPDATE/1503-1.html

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