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なぜ街の自転車屋は潰れないのか?
一般財団法人自転車産業振興協会の「自転車国内販売動向調査 年間総括(2017年)」(以下「年間総括」)によると、2017年の国内新車自転車販売台数・約767万台のうち、量販店・ホームセンターなどの大規模店が91.9%(約705万台)を占め、かつて販売の主流であった小・中規模の小売店、いわゆる「街の自転車屋」は8.1%(約62万台)までにシェアを落としている推計しています。
けれども、街にはつぶれることなく経営を続けている自転車屋があります。では自転車屋はいったいなにで儲けを出しているのでしょうか。
今回は、自転車屋の“つぶれないカラクリ”を探ってみたいと思います。
また、中小企業診断士の野﨑芳信氏は、2017年に発表した論文「自転車販売店のモデル利益計画」で、日本の自転車販売業の事業所数・従事者数は、ともに1985(昭和60)年から3分の1以下に減少していると述べています。
具体的なデータ「平成28年経済センサス‐活動調査」(総務省・経済産業省)をみてみると、日本の自転車販売業の事業所数・従事者数は、2016(平成28)年時点で事業所数11,207・従業者数27,204となっています。
会計の視点から中小企業のビジネスモデルを取り上げた.『潰れないのはさおだけ屋だけじゃなかった』では、「街の自転車屋」の月間会計例を、以下のように挙げています。
1)新品自動車販売月6台:(販売価格2万円-仕入れ値1万2000円)×6=粗利4万8000円、2)ライト・鍵・ヘルメットなどの部品販売:約5万円-仕入れ値2万円=粗利3万円、3)パンク修理月150件:(修理代1000円-修理材のコスト10円)×150=粗利14万8500円、4)その他チューブ交換などの修理の利益:約20万円-材料代2万円=粗利18万円、5)登録料・保険料など手数料:4万円-原価3万2000円=粗利8000円【合計粗利額:41万4500円】
このように項目立てて自転車屋の粗利をみていくと、利益の8割を占める利益率の高い“稼ぎ頭”が、3)と4)の「修理代」ということがわかります。同書では自転車屋を「修理技術を売るビジネスと言える」と解説しています。
さらに自転車屋の“修理ビジネス”の旨みであり、最大の“つぶれないカラクリ”は、3)の「パンク修理」にあるといいます。日常使いをすることが多い自転車というツールにおいて「パンク修理は自分で直すことが困難で、なおかつ急を要する」ため、「パンクした人のほとんどがすぐに近所の自転車屋に駆け込む」ことになります。つまり、パンク時の利用者の心理は「いますぐに直るのであれば、値段は二の次でいい」となっており、原価率1%の利益率の高いビジネスが成立するのです。
同書では「専門技術が必要で、緊急性を要するサービスが提供できれば、そのビジネスは成立する」とし、古くからある例として開業医や各種の修理業を、さらには水回り・鍵・パソコン等の緊急トラブル対応からロードサービスなどを挙げつつ、新たなビジネスが起こってきていることも示唆しています。
どんな業種や業務規模であっても、“つぶれないカラクリ”があればビジネスは成立するともいえます。気になるお店があれば“つぶれないカラクリ”を一考し、仕事や生活に取り入れてみてはいかでしょうか。
けれども、街にはつぶれることなく経営を続けている自転車屋があります。では自転車屋はいったいなにで儲けを出しているのでしょうか。
今回は、自転車屋の“つぶれないカラクリ”を探ってみたいと思います。
昨今の自転車業界のトレンド
「年間総括」では、2017年の1店舗当たりの平均年間総販売台数も発表されており、総数274.1台となっています。この結果は、2016年の総数293.2台と比較すると、前年比-6.5%の減少となっています。そして、店舗規模別では「大規模店」が641.2台、「中規模店」176.4台、「小規模店」57.4台となっており、販売台数自体が減少しているうえに、店舗規模によって販売台数に大きな違いがあり、特に「大規模店」と「小規模店」の約11倍規模のひらきがあることがわかります。また、中小企業診断士の野﨑芳信氏は、2017年に発表した論文「自転車販売店のモデル利益計画」で、日本の自転車販売業の事業所数・従事者数は、ともに1985(昭和60)年から3分の1以下に減少していると述べています。
具体的なデータ「平成28年経済センサス‐活動調査」(総務省・経済産業省)をみてみると、日本の自転車販売業の事業所数・従事者数は、2016(平成28)年時点で事業所数11,207・従業者数27,204となっています。
自転車屋の“稼ぎ頭”
しかし、街には少なくなったとはいうものの、今でも中小規模の自転車屋は存在し、営業を続けています。営業を続けられるということは“何らかの儲け”を計上しているはずですが、それが“自転車を売ること”を主体していないことはみえてきました。ではいったいなにを、“稼ぎ頭”としているのでしょうか。会計の視点から中小企業のビジネスモデルを取り上げた.『潰れないのはさおだけ屋だけじゃなかった』では、「街の自転車屋」の月間会計例を、以下のように挙げています。
1)新品自動車販売月6台:(販売価格2万円-仕入れ値1万2000円)×6=粗利4万8000円、2)ライト・鍵・ヘルメットなどの部品販売:約5万円-仕入れ値2万円=粗利3万円、3)パンク修理月150件:(修理代1000円-修理材のコスト10円)×150=粗利14万8500円、4)その他チューブ交換などの修理の利益:約20万円-材料代2万円=粗利18万円、5)登録料・保険料など手数料:4万円-原価3万2000円=粗利8000円【合計粗利額:41万4500円】
このように項目立てて自転車屋の粗利をみていくと、利益の8割を占める利益率の高い“稼ぎ頭”が、3)と4)の「修理代」ということがわかります。同書では自転車屋を「修理技術を売るビジネスと言える」と解説しています。
さらに自転車屋の“修理ビジネス”の旨みであり、最大の“つぶれないカラクリ”は、3)の「パンク修理」にあるといいます。日常使いをすることが多い自転車というツールにおいて「パンク修理は自分で直すことが困難で、なおかつ急を要する」ため、「パンクした人のほとんどがすぐに近所の自転車屋に駆け込む」ことになります。つまり、パンク時の利用者の心理は「いますぐに直るのであれば、値段は二の次でいい」となっており、原価率1%の利益率の高いビジネスが成立するのです。
“つぶれないカラクリ”はビジネス成立の秘訣
また“修理ビジネス”以外にも、年度ごとの新入生によるまとまった取引を行う特約店になるなど、地縁を生かした需要がある場合も多かったり、家族経営や自宅に店舗を併設することによって、人件費や家賃を抑えていたりするなど、店ごとにスモールビジネスの利点を生かした“つぶれないカラクリ”を、カスタマイズして経営に取り入れている場合が多々あります。同書では「専門技術が必要で、緊急性を要するサービスが提供できれば、そのビジネスは成立する」とし、古くからある例として開業医や各種の修理業を、さらには水回り・鍵・パソコン等の緊急トラブル対応からロードサービスなどを挙げつつ、新たなビジネスが起こってきていることも示唆しています。
どんな業種や業務規模であっても、“つぶれないカラクリ”があればビジネスは成立するともいえます。気になるお店があれば“つぶれないカラクリ”を一考し、仕事や生活に取り入れてみてはいかでしょうか。
<参考文献・参考サイト>
・「自転車販売店のモデル利益計画」、『税理』(2017年10月号、野﨑芳信著、ぎょうせい)
・『潰れないのはさおだけ屋だけじゃなかった』(リテール経済研究会・三銃士編著、宝島社新書)
・「自転車国内販売動向調査 年間総括【平成29年(2017年)】」
http://www.jbpi.or.jp/statistics_pdf/2017.pdf
・「平成28年経済センサス‐活動調査 産業別集計(卸売業,小売業に関する集計)」
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/hyo.html
・「自転車販売店のモデル利益計画」、『税理』(2017年10月号、野﨑芳信著、ぎょうせい)
・『潰れないのはさおだけ屋だけじゃなかった』(リテール経済研究会・三銃士編著、宝島社新書)
・「自転車国内販売動向調査 年間総括【平成29年(2017年)】」
http://www.jbpi.or.jp/statistics_pdf/2017.pdf
・「平成28年経済センサス‐活動調査 産業別集計(卸売業,小売業に関する集計)」
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/hyo.html
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