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若い女性の「やせ志向」にあるリスクとは?
20代の女性では5人に1人がやせ過ぎ
テレビやSNSで「ダイエット」の話題を聞かない日はないほどです。しかし、町や会社で出会う若い女性のほとんどはスラリとして、ダイエットの必要などないように見えます。実際、厚労省が毎年調べる「国民健康・栄養調査」では、BMI25以上の肥満者は男女とも1,000万人超。男性では3~4人に一人が該当し、女性でも5人に一人は肥満と言われます。しかし、20~29歳の女性層だけは、肥満者の割合が5.7%と極端に少なくなります。その分、BMI18.5以下のやせている割合が20%以上と、他の年代の倍に相当していることがわかっています。
「健康体重」と「美容体重」などという言い方も聞きますが、健康より美容を重視しがちな若い女性たちの行く手に待ち構えるリスクとはどんなものでしょうか。
若い女性のやせ志向で日本は「低体重出生」大国に!
名古屋大学大学院教授で、医学部付属病院精神科主任も務める尾崎紀夫氏は、過度なやせ志向が招く「神経性やせ症」の生死にも関わるリスクについて、若い女性たちに警鐘を鳴らします。若い女性は母親の予備軍のゾーンにも重なりますが、母体がやせ過ぎていると、低体重児を出生するリスクがあります。OECD加盟国の低出生児体重児(2,500g未満)の割合をみると、平均が6.5に対して日本は9.6。ほぼ10人に1人が低体重という結果で、34の加盟国中最高という不名誉な結果を残しています(2015年調べ)。
小さく生まれた赤ちゃんは、その後の人生でも脳の疾患や腎臓病など、さまざまな疾患を起こすリスクが高いことがわかってきました。母親がやせ過ぎていると、胎児に届く栄養も不足しがちだと言われ、国もこの事態を大きく捉えて、改善に取り組んでいます。
やせているのに「自分は太っている」と言い張る人たち
実は、BMIの数字と「自分は太っている(やせている)」という本人の認識の間にはミゾがあります。10代後半から20代にかけての女性ではBMI25以上は5~6%しかないにもかかわらず、4割以上の人が「自分は太っている」と思っています。逆にBMI18.5以下の低体重群は、同じ年代では5人に1人が当てはまりますが、「自分はやせている」と思う人は15%以下しかいないのです。アメリカでは、BMI15以下を「極度〈やせ〉」とする分類を設けています。BMI15は、身長160センチで体重40キロ未満、いかにもやせている人たちです。ここまでやせていても「自分はやせていない」と感じていたり、体重が増えて太ることを恐れる人たちがいます。それが医学的に「神経性やせ症」と呼ばれる状態です。
「自分の体重や体型をどう感じるか」という部分が損なわれているわけですが、同時に「体重や体型がどうなのか」ということが、自己評価のほぼすべてを占めるようになります。かつての歌手カレン・カーペンターのように、世界的に名声を得ていても、「太っている自分は駄目で、やせている自分こそ素晴らしい」と感じ、命を落としてしまうようなことも少なくないのです。
ダイエットしようかなと思ったときは、自分の健康や将来の可能性など、いろいろな要素を考えてみる必要がありそうです。
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