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増加する「新卒年収1000万以上」の狙いと課題
新卒年収1000万円という求人が話題になっています。これまで新卒で年収1000万円以上稼ぐのは、一部のプロ野球選手くらいだったのではないでしょうか。待遇のいい大手企業の新卒年収が500万円から600万円程度であることを考えれば、新卒1000万円というのは破格ではないかと思われます。一体何がおきているのでしょうか。
IT系企業以外でも話は出ています。回転寿司チェーン大手くら寿司では、2020年春の新卒採用で「エグゼクティブ新卒採用」として、入社1年目から1000万円の幹部候補生を募集すると発表しています。26歳以下、TOEIC800点以上、簿記3級以上といった基準を満たす必要がありますが、最大で10人の採用を予定しているとのことです。
こういった状況を受けてNTTも、シリコンバレーで働く自社の研究者の報酬を現地の水準に合わせるとしています。これも1億円以上の報酬になる見通し。アメリカではこのような人材確保競争の激化によって、大学の研究室を人材ごと買収するような動きも起こっています。国内企業も人材流出を黙って見過ごすわけにはいきません。なんとか優秀な人材を確保しようと、新卒の給与を大幅にアップしてアピールしています。
実際に同社のアメリカ子会社である「くら寿司USA」は、2019年6月時点で21店を展開しており、8月1日にはアメリカの証券取引所ナスダックに上場しました。海外市場への進出をとにかく成功させたいという意欲が伝わってきます。グローバルな即戦力となる人材であれば、新卒年収1000万円を提示しても惜しくはない、ということでしょう。
ただし、国内の状況で言えば、現在のくら寿司社員の平均年収は約450万円。新入社員でその倍以上の給与となります。ただし、くら寿司はすでにエリアマネージャーや店長は成果主義で動いているそうです。1000万円をもらう新卒も、実績を上げられなければその給与水準の維持は難しいのかもしれません。
一方、くら寿司のように日本から発し、日本の代表的コンテンツとも言うべき回転寿司を武器に海外に出ていく企業では、何かしらのスキルが高ければ代替可能と言うわけではありません。日本の文化や考え方を肌感覚で持っていて、なおかつ、海外でも通用する人材が必要になります。いわば、従来のやり方にとらわれることなく、柔軟に日本と海外の文化的調整ができるような人材が必要になるのかもしれません。こう考えると、新卒年収1000万円ということの意味と価値が少し見えてきます。
新卒年収1000万円、IT企業から外食チェーンまで
NECは研究職と技術職で基本給を上げ、ボーナス上限を撤廃しました。これにより、学会で論文発表していたり起業して業績を積んでいたりといった実績があれば、報酬は1000万円を越えることも。またDeNAでは、エンジニア職AIスペシャリストコースで採用されると、600万円以上最高1000万円の給与が保証されるとのことです。IT系企業以外でも話は出ています。回転寿司チェーン大手くら寿司では、2020年春の新卒採用で「エグゼクティブ新卒採用」として、入社1年目から1000万円の幹部候補生を募集すると発表しています。26歳以下、TOEIC800点以上、簿記3級以上といった基準を満たす必要がありますが、最大で10人の採用を予定しているとのことです。
背景にあるのは外国企業との競争激化
新卒求人が出る背景には、世界的に優秀な人材を獲得する競争が激化している、という状況があるようです。たとえば、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)では大卒で1500万円以上の収入があるそうです。また、AI分野で経験を持つエンジニアには200万ドル(およそ2億2000万円)の報酬という話もあります。さらに米オラクルでのAI分野トップエンジニアは年600万ドル(6億6000万円)といった提示もあったとのこと。こういった状況を受けてNTTも、シリコンバレーで働く自社の研究者の報酬を現地の水準に合わせるとしています。これも1億円以上の報酬になる見通し。アメリカではこのような人材確保競争の激化によって、大学の研究室を人材ごと買収するような動きも起こっています。国内企業も人材流出を黙って見過ごすわけにはいきません。なんとか優秀な人材を確保しようと、新卒の給与を大幅にアップしてアピールしています。
新卒年収1000万円は「将来への投資」
くら寿司の田中邦彦社長は、新卒1000万円の求人を「将来への投資」と言います。また広報宣伝部の岡本浩之さんはAERAの取材に対して、「海外展開の戦略に役立つ人材を獲得したい」と言います。そのうえで、必要な資質を「問題の本質を見抜いて解決策を考えるスキル、すぐにでも海外で活躍したいという意欲、周りからのプレッシャーにつぶされないメンタルを持ち(中略)こちらを品定めするくらいの自信が必要」と言います。実際に同社のアメリカ子会社である「くら寿司USA」は、2019年6月時点で21店を展開しており、8月1日にはアメリカの証券取引所ナスダックに上場しました。海外市場への進出をとにかく成功させたいという意欲が伝わってきます。グローバルな即戦力となる人材であれば、新卒年収1000万円を提示しても惜しくはない、ということでしょう。
ただし、国内の状況で言えば、現在のくら寿司社員の平均年収は約450万円。新入社員でその倍以上の給与となります。ただし、くら寿司はすでにエリアマネージャーや店長は成果主義で動いているそうです。1000万円をもらう新卒も、実績を上げられなければその給与水準の維持は難しいのかもしれません。
鍵は専門性と柔軟性
人材競争は最先端技術を競うIT企業でもっとも激しいと言えるでしょう。IT企業では、国や地域を問わず通用する能力を持った、いわば非常に流動性の高い個人を組織にどう囲い込むかということが課題と言えるでしょう。その結果、高額な年収提示がなされます。ただ、こうなると、IT産業の中心地からやや距離のある日本企業が第一級の人材を確保するには、もっと報酬を上げなければ厳しいかも知れません。一方、くら寿司のように日本から発し、日本の代表的コンテンツとも言うべき回転寿司を武器に海外に出ていく企業では、何かしらのスキルが高ければ代替可能と言うわけではありません。日本の文化や考え方を肌感覚で持っていて、なおかつ、海外でも通用する人材が必要になります。いわば、従来のやり方にとらわれることなく、柔軟に日本と海外の文化的調整ができるような人材が必要になるのかもしれません。こう考えると、新卒年収1000万円ということの意味と価値が少し見えてきます。
<参考サイト>
・NECは新卒1000万、NTTは1億円 研究者待遇、世界基準に|日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/071100074/
・くら寿司が「年収1000万円」で新卒募集するワケ 田中社長が明かす「すしエリート」採用の狙い|ONLINE東洋経済
https://toyokeizai.net/articles/-/290502?page=2
・DeNA「新卒に600万円以上、最高1千万円」 採用された学生の経歴とは?|AERA.dot
https://dot.asahi.com/aera/2019073100061.html?page=1
・NECは新卒1000万、NTTは1億円 研究者待遇、世界基準に|日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/071100074/
・くら寿司が「年収1000万円」で新卒募集するワケ 田中社長が明かす「すしエリート」採用の狙い|ONLINE東洋経済
https://toyokeizai.net/articles/-/290502?page=2
・DeNA「新卒に600万円以上、最高1千万円」 採用された学生の経歴とは?|AERA.dot
https://dot.asahi.com/aera/2019073100061.html?page=1
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