テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.11.06

自然災害の多い日本、とるべき災害対策は?

 自然災害のニュースを見ると、防災リュックの中身や懐中電灯の電池は大丈夫だろうかと頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。関東大震災より100年経った今日ですが、「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉が皮肉に聞こえるほど、日本列島は天災が続いています。

 地震、台風、火山の噴火、豪雪など災害が報道されない年はない……そんな日本に住む私たちにできる防災とはどのようなものでしょうか。

防災の五つの基本「備える」「防ぐ」「蓄える」「つなげる」「心がける」

1、備える 「ツールを活用していざという時に備える」

 防災の常識は日々新しくなっています。まずは自治体から配布される防災マニュアルや、市販の出版物を、御自身の家族構成にマッチしたものを読むことをお勧めします。ハザードマップや避難地図などを片手に、自宅から避難場所まで実際に歩いてみると良いでしょう。お子さんと一緒に通学路の危険なポイントをチェックしたり、大水の時に河川を迂回するルートを考えたりしておくのも大切です。

 また、東北の震災時は広範囲で電話回線がパンクし、連絡が取り合えない事態が発生しました。被災時にも使える「災害用伝言ダイヤル」は毎月1日・15日に体験日が設定されています。その他、身近な人の電話番号などは手帳に控え、公衆電話などからもかけられるようにしておくのも有効です。

2、防ぐ 「家具の固定しっかりと」

 震度7を記録した阪神大震災では、死傷者の原因のトップは、転倒した家具の下敷きになるという痛ましいものでした。寝室や避難経路の妨げになる場所に転倒する恐れのある家具を置かず、きっちり壁や天井に固定することが防災の第一歩です。

3、蓄える 「あらゆる災害に応用できる備蓄を」

 先述した通り、日本は様々な災害が発生する国です。地震対策の防災用品に加えて、雪かき用のスコップや、噴火で巻き上がる火山灰や粉塵を防ぐ密閉性の高いマスクとゴーグルなど、多岐にわたって対応できるツールが必要となります。

 また、通勤通学、車での移動中、旅先などで災害が発生することも考慮して、自宅用、外出用、車用などの防災セットを用意しておくと安心です。

4、つなげる 「近所同士の助け合い」

 2017年、九州北部を襲った豪雨は記録的なものでした。しかし、犠牲者を出さずにすんだのは地域のコミュニティがしっかりしていたことの賜物であると報告されています。近所の人とお互いに助け合えるよう、日頃から関係性を保っておくことも防災の基盤作りと言えるのではないでしょうか。

5、心がける 「ブレーカーを落として火事を防ぐ/日頃から溜め水をする」

 地震の時に被害を拡大してしまうのが火災です。火災発生の原因には、一度切れていた電気が再び通電する際に、ブレーカーが火を吹いたためというケースが多く報告されています。避難の際にはブレーカーを落とすという心がけを家族の共通認識にしておきましょう。

 激しい災害の後、ライフラインの復旧に時間がかかるのはよく知られている通りです。中でも問題になるのは生活用水の確保でしょう。先の東北大震災で被災した友人は、「とにかく風呂の水は捨てずにとっておくべき」と話してくれました。用を足した後のトイレを流すのにはバケツ2杯の水が必要だとか。

 住宅環境によっては、水はすぐにストップするわけではないそうです。水が出る間になるべく確保しておけるよう、空きのペットボトルやバケツなどを用意しておきましょう。断水後に給水場まで行く際も役に立ちます。

主体性を持った防災意識を

 日本は数千人以上の死者の出た伊勢湾台風以降、防災に対するインフラ整備を推し進めてきました。防波堤などの物理的インフラをはじめとして、ハザードマップ、地震や台風などの発生を報せてくれるアプリも開発されました。けれども、専門家からはそれらに依存することの危険性も警告されています。

 近年、避難が遅れた理由を、「(行政から)避難勧告がこなかったから」と述べる人も多々出ているそうです。残念ながら現在、すべての人のその場その時のベストを指示する防災ツールは存在していません。東北の震災では防波堤を上回る「想定外」の高さの津波がやってきたのは御存知の通りです。また、ハザードマップはあくまでも過去の事例に基づいたひとつのシミュレーションで、確実な安全を保証するものではありません。

 防災の根本に求められているのは、行政やアプリからの指示を待つ受け身の姿勢ではなく、自分の命は自分で守るという主体性です。自らを助けるのは自分という意識を持ち、行政と市民一丸となって災害に立ち向かう社会を築き上げていくことこそ、真の防災と言えるのではないでしょうか。

<参考文献・参考サイト>
・『東京防災』(東京都総務局総合防災部防災管理課著、東京都著、かわぐち かいじ寄稿、東京都総務局総合防災部防災管理課)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
3

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
5

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞が...
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授