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新入社員が感じる「入社後のギャップ」とは?
近年のビジネスシーンでよく取り上げられるようになった、「リアリティ・ショック」という言葉をご存じでしょうか。
リアリティ・ショックを広めたアメリカの心理学者エドガー・シャイン氏は、この言葉の意味を「自分の期待や夢と、組織での仕事や組織への所属の実際とのギャップに初めて出会うことから生じるショック」を意味すると述べています。
つまりリアリティ・ショックとは、就職にあたって新しく所属する組織と自分の理想と現実のギャップに衝撃を受けることであり、その性質上入社後に起こるもの、とくに新入社員や転勤・転職などによって初めて参加する組織や慣れていない環境で働くことになるビジネスパーソンに起こることが多いとされています。
すなわち、4人のうち3人が“入社後に何らかのギャップを感じている”といえるようです。では、新入社員が「入社後に感じたギャップ」=「リアリティ・ショックの内容」は、具体的にはどのようなものなのでしょうか。入社3年以内の大卒社会人600人と入社3年以内に離職した200人に複数回答で調査した結果が、以下になります。
「リアリティ・ショックの内容(入社前のイメージと異なっていたこと)」
〈報酬・昇進〉
給料・報酬の高さ:37.4%
昇進・昇格のスピード:31.9%
〈能力〉
同期の能力:20.3%
上司の能力:27.0%
〈人間関係〉
職場の同僚との人間関係:22.9%
同期との人間関係:13.8%
上司との人間関係22.5%
〈その他〉
仕事から得られる達成感:31.3%
仕事で与えられる裁量の程度:31.5%
仕事のやりがい:30.0%
働きやすさ(残業・休日など):30.5%
また、〈その他〉項目の「仕事から得られる達成感」「仕事で与えられる裁量の程度」「仕事のやりがい」「働きやすさ」も総じて30%以上と高く、“仕事内容への不満”についても入社後ギャップが大きくなっていることがうかがえます。
この結果について、パーソル総合研究所・主任研究員の小林祐児氏は、「給料・報酬の高さ」のリアリティ・ショックについては「業績の影響を受ける賞与や税金などを差し引いた手取り額は分かりにくく落差を感じやすい」と見つつ、さらに大きな傾向として、新入社員が「“この程度しかもらえないのか”“この程度の仕事しかさせてもらえないのか”“こんなに忙しいのか”」といったギャップを感じていると述べています。
反対から考えれば、入社前に正しく的確に組織の状況や自分との適正を理解しすり合わせることができていれば、リアリティ・ショックを防ぐことや軽くすることができ、ひいては「入社後ギャップ」をなくすもしくは最小限に抑えることができるはずです。
ただし、この方法を生かすためには、就活中からの新入社員希望者および、新入社員を求める組織、双方の相互的な努力と協力に基づくマッチングが欠かせません。
しかし、残念ながら就活段階で上記の対策ができていなかった場合、新入社員がリアリティ・ショックを感じた段階でできるだけ早く、もしくは職場という組織として適切な対策をする必要があります。
例えば、新入社員側には、1)自分の現状を受け入れて受容しつつ、2)メンタルを整えるために仕事のオンとオフを切り分け、3)自分と同じような立場の人と悩みを言語化して共有を試みたり、4)普段の環境から離れてストレスを発散したりする――などを実践しながら、「リアリティ・ショックの内容」の項目を一つひとつよく吟味し、自分がどの項目にどのようなリアリティ・ショックを持っているのか、さらには持っているリアリティ・ショックについてはどのぐらいのギャップをどのように持っているのかなどを切実かつ冷静に分析してから、それぞれにあった対策を取ることをおすすめします。
他方、組織側がとりうる対策には、1)ジョブローテーションなども取り入れた新入社員へのフォロー制度の充実を図る、2)現場社員を巻き込みつつ職場としての組織のリアルを伝える、3)コミュニケーションをとりやすい良好な人間関係・職場環境を構築する、4)分業化している「採用」と「教育(定着)」機能を接続する――などの実践が挙げられます。
新入社員の「入社後に感じたギャップ」=「リアリティ・ショック」は、新入社員にとっても組織にとってもよりよい職場を造っていくために、減らしたりなくしたりしていきたいものです。仕事の内容が多様に変化し、働き方改革も求められる昨今、双方の建設的な協力とますますの対策が求められます。
リアリティ・ショックを広めたアメリカの心理学者エドガー・シャイン氏は、この言葉の意味を「自分の期待や夢と、組織での仕事や組織への所属の実際とのギャップに初めて出会うことから生じるショック」を意味すると述べています。
つまりリアリティ・ショックとは、就職にあたって新しく所属する組織と自分の理想と現実のギャップに衝撃を受けることであり、その性質上入社後に起こるもの、とくに新入社員や転勤・転職などによって初めて参加する組織や慣れていない環境で働くことになるビジネスパーソンに起こることが多いとされています。
リアリティ・ショックから見る「入社後ギャップ」
少し前のものになりますが2019年5月に発表された、パーソル総合研究所とパーソルキャリアが運営する若者向けのキャリア教育支援活動「CAMP」が共同実施した調査データによると、全国18歳以上30歳未満の初職入社1~3年の社会人が「入社後にリアリティ・ショックを受けた人の割合」は実に76.6%と実に8割近くにも及んでいます(データ出所:パーソル総合研究所×CAMP「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」。以下同)。すなわち、4人のうち3人が“入社後に何らかのギャップを感じている”といえるようです。では、新入社員が「入社後に感じたギャップ」=「リアリティ・ショックの内容」は、具体的にはどのようなものなのでしょうか。入社3年以内の大卒社会人600人と入社3年以内に離職した200人に複数回答で調査した結果が、以下になります。
「リアリティ・ショックの内容(入社前のイメージと異なっていたこと)」
〈報酬・昇進〉
給料・報酬の高さ:37.4%
昇進・昇格のスピード:31.9%
〈能力〉
同期の能力:20.3%
上司の能力:27.0%
〈人間関係〉
職場の同僚との人間関係:22.9%
同期との人間関係:13.8%
上司との人間関係22.5%
〈その他〉
仕事から得られる達成感:31.3%
仕事で与えられる裁量の程度:31.5%
仕事のやりがい:30.0%
働きやすさ(残業・休日など):30.5%
“報酬・昇進への不満”と“仕事内容への不満”
以上のように、新入社員のリアリティ・ショックで最も高かったのは、「給料・報酬の高さ」で37.4%でした。加えて同じく〈報酬・昇進〉項目の「昇進・昇格のスピード」も31.9%と次いで高く、“報酬・昇進への不満”がなによりも目立つ結果となっています。また、〈その他〉項目の「仕事から得られる達成感」「仕事で与えられる裁量の程度」「仕事のやりがい」「働きやすさ」も総じて30%以上と高く、“仕事内容への不満”についても入社後ギャップが大きくなっていることがうかがえます。
この結果について、パーソル総合研究所・主任研究員の小林祐児氏は、「給料・報酬の高さ」のリアリティ・ショックについては「業績の影響を受ける賞与や税金などを差し引いた手取り額は分かりにくく落差を感じやすい」と見つつ、さらに大きな傾向として、新入社員が「“この程度しかもらえないのか”“この程度の仕事しかさせてもらえないのか”“こんなに忙しいのか”」といったギャップを感じていると述べています。
新入社員の「入社後ギャップ」を防ぐには?
リアリティ・ショックの要因には、新しい環境に過度な期待を持ちすぎることによる自分の理想やイメージと、実際の組織や職場環境との「ギャップ」があります。そのため、仮に入社後の実態が申し分ない場合であったとしても、それ以上に新入社員の理想が高ければ、「入社後ギャップ」を感じるに至ります。反対から考えれば、入社前に正しく的確に組織の状況や自分との適正を理解しすり合わせることができていれば、リアリティ・ショックを防ぐことや軽くすることができ、ひいては「入社後ギャップ」をなくすもしくは最小限に抑えることができるはずです。
ただし、この方法を生かすためには、就活中からの新入社員希望者および、新入社員を求める組織、双方の相互的な努力と協力に基づくマッチングが欠かせません。
しかし、残念ながら就活段階で上記の対策ができていなかった場合、新入社員がリアリティ・ショックを感じた段階でできるだけ早く、もしくは職場という組織として適切な対策をする必要があります。
例えば、新入社員側には、1)自分の現状を受け入れて受容しつつ、2)メンタルを整えるために仕事のオンとオフを切り分け、3)自分と同じような立場の人と悩みを言語化して共有を試みたり、4)普段の環境から離れてストレスを発散したりする――などを実践しながら、「リアリティ・ショックの内容」の項目を一つひとつよく吟味し、自分がどの項目にどのようなリアリティ・ショックを持っているのか、さらには持っているリアリティ・ショックについてはどのぐらいのギャップをどのように持っているのかなどを切実かつ冷静に分析してから、それぞれにあった対策を取ることをおすすめします。
他方、組織側がとりうる対策には、1)ジョブローテーションなども取り入れた新入社員へのフォロー制度の充実を図る、2)現場社員を巻き込みつつ職場としての組織のリアルを伝える、3)コミュニケーションをとりやすい良好な人間関係・職場環境を構築する、4)分業化している「採用」と「教育(定着)」機能を接続する――などの実践が挙げられます。
新入社員の「入社後に感じたギャップ」=「リアリティ・ショック」は、新入社員にとっても組織にとってもよりよい職場を造っていくために、減らしたりなくしたりしていきたいものです。仕事の内容が多様に変化し、働き方改革も求められる昨今、双方の建設的な協力とますますの対策が求められます。
<参考文献・参考サイト>
・『キャリア・ダイナミクス』(エドガー・H.シャイン著、二村敏子・三善勝代訳、白桃書房)
・「リアリティ・ショックが若年者の就業意識に及ぼす影響」『経営行動科学』(18巻1号、小川憲彦著、経営行動科学学会)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaas1986/18/1/18_1_31/_pdf
・就職活動と入社後の実態に関する定量調査 - パーソル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/data/reality-shock.html
・入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ就活の3つのポイント
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201909260001.html
・「「思っていたのと違う」 若手社会人8割が体験 早期離職の危険も」『日本経済新聞』(2019年5月22日付け、桜井豪著)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45109340S9A520C1XXA000/
・【リアリティショックとは】意味や原因、対策についてご紹介
https://job-q.me/articles/4962#article_item_416468
・『キャリア・ダイナミクス』(エドガー・H.シャイン著、二村敏子・三善勝代訳、白桃書房)
・「リアリティ・ショックが若年者の就業意識に及ぼす影響」『経営行動科学』(18巻1号、小川憲彦著、経営行動科学学会)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaas1986/18/1/18_1_31/_pdf
・就職活動と入社後の実態に関する定量調査 - パーソル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/data/reality-shock.html
・入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ就活の3つのポイント
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201909260001.html
・「「思っていたのと違う」 若手社会人8割が体験 早期離職の危険も」『日本経済新聞』(2019年5月22日付け、桜井豪著)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45109340S9A520C1XXA000/
・【リアリティショックとは】意味や原因、対策についてご紹介
https://job-q.me/articles/4962#article_item_416468
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