テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.08.13

外国人が日本で働きたい理由とは?

 日本で働く外国人の数は2019年10末の時点で165万8804人。2007年の届け出義務化以降、過去最高となっています。前年同期比で見ると19万8341人(13.6%)の増加です。では、日本で働きたいと思う理由にはどういうものがあるのでしょうか。

日本の文化が好きだから

 アジアの主要大学と提携して日本への就職を提供している会社ASIA to JAPANは、日本で働いている外国人200人を対象にアンケートをおこなっています。これによると、日本で働きたいと思った理由のトップ5は以下の通り。

1位 日本の文化が好きだから 23.9%
2位 海外でチャレンジしたかったから 16.8%
3位 日本の技術や会社に興味があるから 15.2%
4位 キャリアにとってプラスだから 12.5%
5位 日本語を活かしたかったから 11.4%

 理由の1位は他にやや差をつけて「日本の文化が好きだから」ということです。日本人のイメージとしては、「給与水準が高いから」ということを想定すると思われますが、これに該当する「経済的な理由から」という回答は7.4%で第6位。中国を中心として経済水準はかなり上がっているようです。給与水準で日本を選ぶという時代はもはや古いのかもしれません。お金で選ぶというよりも、暮らしや文化といった日本そのものへの興味や価値を重視していると言えるでしょう。

 ただし、この調査はアジア各国のトップ大学の卒業生が対象で、勤め先はメーカー、コンサルティング、外資系企業といった比較的エリート層であることは意識しておく必要がありそうです。ちなみに、アンケートによると日本に来て「とても苦労した」割合が多かったのは「上司とのコミュニケーション」とのこと。分析では、上司が日本の常識でコミュニケーションを取るのではなく、「日本人とは違う」という前提に立った丁寧さが必要とされています。

中国とベトナムがほぼ半数

 日本で働く外国人を国籍別で見ると、一番多いのは中国(41万8327人)で外国人労働者全体の25.2%を占めています。ついでベトナム(40万1326人)で24.2%。続いてフィリピン(17万9685人)で10.8%。中国とベトナム出身者が圧倒的に多いことがわかります。一方、非アジア系ではブラジルが13万5455人で8.2%、続いて「G7/8+オーストラリア+ニュージーランド」の8万1003人で、全体の4.9%です。

 在留資格別に見るとG7/8等(イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド)では、「専門的・技術的分野の在留資格」がそれぞれ58.6%を占めています。このカテゴリーは教員や経営者、弁護士、医師、デザイナー、通訳、介護福祉士、パイロットといった特定の資格やスキルをもった人の在留資格です。また、実際の産業別に見るとこれらの国の人たちで最も多いのは、「教育、学習支援業」で38.9%となっています。ネイティブ語学教師として日本にやって来る人が比較的多いようです。

「駐在員が働きたい国ランキング」では日本は下から2番目

 一方、イギリスの金融大手HSBCホールディングスが2019年7月行なった「各国の駐在員が働きたい国ランキング【2019年版】」によると、日本は33の国と地域の中でなんと32位という結果です。ランキング上位5カ国は以下の通り。

1位 スイス
2位 シンガポール
3位 カナダ
4位 スペイン
5位 ニュージーランド

 分析によると、スイスやシンガポールは「賃金の高さ」と「教育環境の充実」が挙げられています。また、カナダやスペイン、ニュージーランドは「ワークライフバランス」に優れた環境のようです。これに対して、日本は「賃金」「ワークライフバランス」「教育環境」で最下位とのこと。日本の労働環境は、もう少し改善する余地があるといえるのかもしれません。
 
<参考サイト>
・「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和元年10月末現在)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09109.html
・日本で働く外国人200人にアンケート!仕事や生活で困ったこと、総合的な満足度とは?│ASIAtoJAPAN
https://asiatojapan.com/2020/03/11/question/
・「外国人が働きたい国」で日本が33カ国中32位――この国の“真に深刻な問題”とは|#SHIFT ITmediaビジネスONLINE
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1909/27/news026.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件

台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件

編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」

冷戦終結後に減少していた「クーデター」。しかし、2019年以降、再び増えだしているといいます。その背景には、中国やロシアなど「権威主義」の国々とアメリカとの対立、さらに「ワグネル」など民間軍事会社の暗躍などがありま...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/10/23
2

やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本

やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本

産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性

持続可能な日本社会をめざす「プラチナ社会」の構想。その実現に向け2024年12月に設立されたのが再生可能エネルギー産業イニシアティブで、これは再生可能エネルギーで国内の電力を賄おうというものだ。AI技術の普及などで今後...
収録日:2025/04/21
追加日:2025/10/23
小宮山宏
東京大学第28代総長 株式会社三菱総合研究所 理事長 テンミニッツ・アカデミー座長
3

台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性

台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性

クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か

サヘル地域をはじめとして、近年、世界各地で多発しているクーデター。その背景や、クーデターとはそもそもどのような政治行為なのかを掘り下げることで国際政治を捉え直す本シリーズ。まず、未来の“if”として台湾でのクーデタ...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/04
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
4

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ

算数が苦手な子どもが多く、特に分数でつまずいてしまう子どもが非常に多いというのは世界的な問題になっているという。いったいどういうことなのか。そこで今回は、私たちが言語習得の鍵となる「スキーマ」という概念を取り上...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?

ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?

エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄

ソニー・ミュージックエンタテインメント(ジャパン)は、アメリカのコロムビアレコードと1968年に創業した、日本初の外資とのジョイントベンチャーである。ソニーはもともとエレクトロニクスの会社だったが、今のソニーグルー...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/10/20
水野道訓
元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEO