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「優秀な人材」の特徴とは?
「いつやるか?今でしょ!」で有名な人気実力派予備校講師の林修氏は、“社会に出て活躍するために必要な能力”は「群像の感覚」であると述べています。
「群像」とは「多くの人々の姿」という意味であるため、群像、ひいては群像の中とは、社会や人間関係を含めた状況の渦中にいることともいえます。群像の中、社会の中や状況の中に自分をおいて、自分の強みを認識しつつ自己の実力が周囲と比べてどのポジションにあるのかを客観的に判断する能力、つまり「群像の感覚」とは「自分の強みや実力を客観的に見定められる力」となります。
社会で活躍する優秀な人材の特徴には多様な具体例がありますが、群像の視点に立つと、メタに「状況に応じた的確な自己認識」が潜むことがみえてきました。そこで今回は古典『君主論』を参考に、優秀な人材の特徴を考察してみたいと思います。
状況には横だけでなく縦もあります。つまり、今現在同時並行で起こっている事や関係性だけでなく、過去からの歴史を考慮し、未来への進展へとつないでいけなければ、物事を成功させることは難しくなります。優秀な人材は長期的な視野に立って、自他の成功と失敗、つまりは歴史や学問を学び活用することができる人です。
2:広範囲の社会感覚を持ち、状況に応じて最善手を決定できる人
状況は常に変化するため、たとえ素晴らしい理論であっても、そのまま用いては机上の空論となってしまいかねません。優秀な人材は広範囲の社会感覚、まさに群像の感覚をもって、常に状況に応じて最善手を決定できる人です。
3:独りよがりにならずに、恨みを買うことなく侮られもしない人
どんな仕事であっても、つきつめると一人で成し遂げることはできません。優秀な人材は、独りよがりにならず、そのうえで恨みを買うことなくかといって侮られることもないふるまいや人間関係の構築ができる人です。とくに恨みを買うことは自己を滅ぼしかねないため、厳に避ける必要があります。
4:優しく強い心で物事を捉え、理知的な思考でジャッジできる人
優しいだけでは人の意見に流されてしまい、強いだけでは周囲と強調することができません。さらに判断をする際は、あくまでも情に流されることなく理知的に、正しい知識と的確な頭脳でジャッジしなければ、成功の確率は自ずと低くなってしまいます。優秀な人材は優しく強い心を生かしながらも、いざ事に及べば知識に照らした理性をもって、的確な判断ができる人です。
5:変えられないことは受け入れて、変えられることは努力できる人
誰しも状況や条件の中で生きている以上、実力や資金があろうともできないことは多々あります。優秀な人材は変えられないことは受け入れつつも、変えられること、つまりは自分の努力でどうにかできることに対しては、怠らずに適切な努力を習慣的にできる人です。
6:周囲の人を盲信せずに、自分の意思とアジャストできる人
周囲の人と信頼関係を築き親愛をもって接することは、自身の心身の健康のためにも事を成すためにも重要ですが、根拠や信念なく周囲に寄りかかるのでは単なる横着者か物事を深く考えていない人です。優秀な人材は周囲と適切な関係を構築しつつも盲信することはなく、そのうえで状況に応じて周囲の人と自分の意思を調整したり調節したりできる人です。
7:平時にこそ有事に備え、有事こそ平時のように行動できる人
やりがちかつ大きな失敗の一つに、平時には平穏に感謝することなく怠惰で過ごし、有事には自分だけが不幸だと恨みつらみの感情にとらわれて、できることすらしなくなることです。優秀な人材は平時であっても怠ることなく未来に備えた行動をとり、有事であってもできるかぎり普段から指針としている言動を粛々と実行できる人です。
1:そもそも“真に”優秀な人材ではなかった
「人材」には、「人柄としての才能」と「才知のすぐれた人物。役に立つ人物」といった、二つの意味が含まれています。そのため、単に実務処理に優れ才能があり便利で役に立つ人といった合理性や即物的な側面だけでなく、周囲の人と協調できるような性格の良さや品格といった人となりが優れていなければ、“真に”優秀な人材とはいえません。つまり、そもそも優秀な人材ではなかった可能性があります。
2:優秀な人材を評価する器や土壌がない
また、「名将は名将を知る」ともいわれるように、すぐれた人材を発掘し登用したり正しい評価をもって適切に人材を昇進させたりするためには、評価者にも優秀な人材が求められます。つまり、評価者や組織に優秀な人を評価する器や土壌がなければ、優秀な人であっても昇進とはなりません。
3:優秀な人材ほど「ねたみ」や「嫉妬」の対象となる
しかし、真に優秀な人材であっても、優秀な人材を評価する器や土壌があっても、昇進とならない場合があります。それは「ねたみ」や「嫉妬」の対象となった場合です。歴史の中にも優秀な人材でありながらも、はては優秀な人材であったがうえに、嫉まれ嫉妬され不遇を嘆いた人は、枚挙にいとまがありません。
4:かつては優秀な人材が昇進後に優秀な人材ではなくなる
さらには、プレイヤーとして優秀な人材であっても、昇進してマネージャーなど違う役割となった際に能力が生かされず、結果として各階層が“優秀ではなくなった人材”に埋め尽くされていくという、能力主義社会の弊害ともいえる「ピーターの法則」仮説に、組織が陥っている場合などもあります。
5:優秀な人材が昇進できない負の連鎖に陥っている
そのうえ、優秀ではなくなった人材は、「自分の地位を脅かす優秀な人材を昇進させたくない」という感情すらもつに至ってしまう可能性が高くなります。また並行して、なにもしない(させてもらえない)がゆえに失敗もしない優秀ではない人材だけが、減点主義考課や無謬性偏重主義で評価されて昇進を続けます。結果として「優秀な人材は昇進できない」という負の連鎖に、組織が陥ってしまう場合があります。
『君主論』はその名が示すように“君主”について記された名著でありますが、単に理想の君主を列挙するのではなく、「政体」に応じて良いとする君主が素晴らしい筆力で描かれています。政体とは国の政治、つまりは個人が属している国や社会であり、ひいては群像・状況・現状ともいえます。現代においても『君主論』は、状況ごとの実践的な手引き書として楽しむことも参考にすることもできるのです。
マキアヴェリの生きたフィレンツェ共和国は、共和制でありながらも、現代の民主主義の国と比べれば、身分や役割が固定化・硬直化していました。そういった政体では、優秀な人材であっても活躍できない弊害が多々あったでしょうが、一つの側面からみれば、君主一人が優秀であれば、事足りていた場合も多くあったのかもしれません。
しかし、民主主義で共和的な現代日本や広くグローバル化が求められる現状においては、個々人が自己を治める君主のように、群像の感覚を持って状況に応じて活躍できる優秀な人材となっていかなければ、かえって平和すら危ぶまれてしまう厳しい世界へと陥ってしまいます。
ただし、優秀な人材が活躍できれば、さらなる社会の発展が促進されることも事実です。誰もが真に自由を享受でき多様性が求められる時代こそ、優秀な人材の活躍を尊び、また自身も優秀な人材として活躍できるよう、感覚を研ぎ澄ませつつ準備と行動をすることが肝要となってくるのではないでしょうか。
「群像」とは「多くの人々の姿」という意味であるため、群像、ひいては群像の中とは、社会や人間関係を含めた状況の渦中にいることともいえます。群像の中、社会の中や状況の中に自分をおいて、自分の強みを認識しつつ自己の実力が周囲と比べてどのポジションにあるのかを客観的に判断する能力、つまり「群像の感覚」とは「自分の強みや実力を客観的に見定められる力」となります。
社会で活躍する優秀な人材の特徴には多様な具体例がありますが、群像の視点に立つと、メタに「状況に応じた的確な自己認識」が潜むことがみえてきました。そこで今回は古典『君主論』を参考に、優秀な人材の特徴を考察してみたいと思います。
『君主論』から考察・優秀な人材の7大特徴
1:長期的な視野に立って、自他の成功と失敗から学べる人状況には横だけでなく縦もあります。つまり、今現在同時並行で起こっている事や関係性だけでなく、過去からの歴史を考慮し、未来への進展へとつないでいけなければ、物事を成功させることは難しくなります。優秀な人材は長期的な視野に立って、自他の成功と失敗、つまりは歴史や学問を学び活用することができる人です。
2:広範囲の社会感覚を持ち、状況に応じて最善手を決定できる人
状況は常に変化するため、たとえ素晴らしい理論であっても、そのまま用いては机上の空論となってしまいかねません。優秀な人材は広範囲の社会感覚、まさに群像の感覚をもって、常に状況に応じて最善手を決定できる人です。
3:独りよがりにならずに、恨みを買うことなく侮られもしない人
どんな仕事であっても、つきつめると一人で成し遂げることはできません。優秀な人材は、独りよがりにならず、そのうえで恨みを買うことなくかといって侮られることもないふるまいや人間関係の構築ができる人です。とくに恨みを買うことは自己を滅ぼしかねないため、厳に避ける必要があります。
4:優しく強い心で物事を捉え、理知的な思考でジャッジできる人
優しいだけでは人の意見に流されてしまい、強いだけでは周囲と強調することができません。さらに判断をする際は、あくまでも情に流されることなく理知的に、正しい知識と的確な頭脳でジャッジしなければ、成功の確率は自ずと低くなってしまいます。優秀な人材は優しく強い心を生かしながらも、いざ事に及べば知識に照らした理性をもって、的確な判断ができる人です。
5:変えられないことは受け入れて、変えられることは努力できる人
誰しも状況や条件の中で生きている以上、実力や資金があろうともできないことは多々あります。優秀な人材は変えられないことは受け入れつつも、変えられること、つまりは自分の努力でどうにかできることに対しては、怠らずに適切な努力を習慣的にできる人です。
6:周囲の人を盲信せずに、自分の意思とアジャストできる人
周囲の人と信頼関係を築き親愛をもって接することは、自身の心身の健康のためにも事を成すためにも重要ですが、根拠や信念なく周囲に寄りかかるのでは単なる横着者か物事を深く考えていない人です。優秀な人材は周囲と適切な関係を構築しつつも盲信することはなく、そのうえで状況に応じて周囲の人と自分の意思を調整したり調節したりできる人です。
7:平時にこそ有事に備え、有事こそ平時のように行動できる人
やりがちかつ大きな失敗の一つに、平時には平穏に感謝することなく怠惰で過ごし、有事には自分だけが不幸だと恨みつらみの感情にとらわれて、できることすらしなくなることです。優秀な人材は平時であっても怠ることなく未来に備えた行動をとり、有事であってもできるかぎり普段から指針としている言動を粛々と実行できる人です。
なぜ優秀な人材であっても昇進できないの?
しかし、優秀な人材であっても、組織によっては昇進できない場合があります。その理由としては、以下のようなことが挙げられます。1:そもそも“真に”優秀な人材ではなかった
「人材」には、「人柄としての才能」と「才知のすぐれた人物。役に立つ人物」といった、二つの意味が含まれています。そのため、単に実務処理に優れ才能があり便利で役に立つ人といった合理性や即物的な側面だけでなく、周囲の人と協調できるような性格の良さや品格といった人となりが優れていなければ、“真に”優秀な人材とはいえません。つまり、そもそも優秀な人材ではなかった可能性があります。
2:優秀な人材を評価する器や土壌がない
また、「名将は名将を知る」ともいわれるように、すぐれた人材を発掘し登用したり正しい評価をもって適切に人材を昇進させたりするためには、評価者にも優秀な人材が求められます。つまり、評価者や組織に優秀な人を評価する器や土壌がなければ、優秀な人であっても昇進とはなりません。
3:優秀な人材ほど「ねたみ」や「嫉妬」の対象となる
しかし、真に優秀な人材であっても、優秀な人材を評価する器や土壌があっても、昇進とならない場合があります。それは「ねたみ」や「嫉妬」の対象となった場合です。歴史の中にも優秀な人材でありながらも、はては優秀な人材であったがうえに、嫉まれ嫉妬され不遇を嘆いた人は、枚挙にいとまがありません。
4:かつては優秀な人材が昇進後に優秀な人材ではなくなる
さらには、プレイヤーとして優秀な人材であっても、昇進してマネージャーなど違う役割となった際に能力が生かされず、結果として各階層が“優秀ではなくなった人材”に埋め尽くされていくという、能力主義社会の弊害ともいえる「ピーターの法則」仮説に、組織が陥っている場合などもあります。
5:優秀な人材が昇進できない負の連鎖に陥っている
そのうえ、優秀ではなくなった人材は、「自分の地位を脅かす優秀な人材を昇進させたくない」という感情すらもつに至ってしまう可能性が高くなります。また並行して、なにもしない(させてもらえない)がゆえに失敗もしない優秀ではない人材だけが、減点主義考課や無謬性偏重主義で評価されて昇進を続けます。結果として「優秀な人材は昇進できない」という負の連鎖に、組織が陥ってしまう場合があります。
優秀な人材が活躍してこそ、多様性の時代
前述の「優秀な人材の7大特徴」の参考とした『君主論』は、イタリア・ルネサンス期の政治思想家・歴史家・文学者であるニッコロ・マキアヴェリの代表作です(なお、『君主論』を取り上げて、ビジネスのための戦略として解説されている鈴木博毅氏の『古代から現代まで2時間で学ぶ戦略の教室』も参照しています)。『君主論』はその名が示すように“君主”について記された名著でありますが、単に理想の君主を列挙するのではなく、「政体」に応じて良いとする君主が素晴らしい筆力で描かれています。政体とは国の政治、つまりは個人が属している国や社会であり、ひいては群像・状況・現状ともいえます。現代においても『君主論』は、状況ごとの実践的な手引き書として楽しむことも参考にすることもできるのです。
マキアヴェリの生きたフィレンツェ共和国は、共和制でありながらも、現代の民主主義の国と比べれば、身分や役割が固定化・硬直化していました。そういった政体では、優秀な人材であっても活躍できない弊害が多々あったでしょうが、一つの側面からみれば、君主一人が優秀であれば、事足りていた場合も多くあったのかもしれません。
しかし、民主主義で共和的な現代日本や広くグローバル化が求められる現状においては、個々人が自己を治める君主のように、群像の感覚を持って状況に応じて活躍できる優秀な人材となっていかなければ、かえって平和すら危ぶまれてしまう厳しい世界へと陥ってしまいます。
ただし、優秀な人材が活躍できれば、さらなる社会の発展が促進されることも事実です。誰もが真に自由を享受でき多様性が求められる時代こそ、優秀な人材の活躍を尊び、また自身も優秀な人材として活躍できるよう、感覚を研ぎ澄ませつつ準備と行動をすることが肝要となってくるのではないでしょうか。
<参考文献・参考サイト>
・林先生が驚く初耳学! | TBSテレビ
https://www.tbs.co.jp/program/mbs_mimi.html
・「群像」『デジタル大辞泉』
・「人材」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「人材・人才」『日本国語大辞典』(小学館)
・『君主論』(マキアヴェリ著、池田廉訳、中公文庫)
・『古代から現代まで2時間で学ぶ戦略の教室』(鈴木博毅著、ダイヤモンド社)
・3分でわかる『君主論』「『正しい目標』を掲げて人を動かす」
https://diamond.jp/articles/-/58174
・「名将は名将を知る」『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
・「組織では無能な人が出世する」林修氏が指摘「優秀だった人がいつの間にか無能な管理職になってしまう」
https://news.careerconnection.jp/?p=60878
・「ピーターの法則」『現代用語の基礎知識 2019』(自由国民社)
・「マキアヴェッリ ニッコロ」『デジタル版 集英社世界文学大事典』(河島英昭著、集英社)
・『よいこの君主論』(架神恭介・辰巳一世著、ちくま文庫)
・林先生が驚く初耳学! | TBSテレビ
https://www.tbs.co.jp/program/mbs_mimi.html
・「群像」『デジタル大辞泉』
・「人材」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「人材・人才」『日本国語大辞典』(小学館)
・『君主論』(マキアヴェリ著、池田廉訳、中公文庫)
・『古代から現代まで2時間で学ぶ戦略の教室』(鈴木博毅著、ダイヤモンド社)
・3分でわかる『君主論』「『正しい目標』を掲げて人を動かす」
https://diamond.jp/articles/-/58174
・「名将は名将を知る」『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
・「組織では無能な人が出世する」林修氏が指摘「優秀だった人がいつの間にか無能な管理職になってしまう」
https://news.careerconnection.jp/?p=60878
・「ピーターの法則」『現代用語の基礎知識 2019』(自由国民社)
・「マキアヴェッリ ニッコロ」『デジタル版 集英社世界文学大事典』(河島英昭著、集英社)
・『よいこの君主論』(架神恭介・辰巳一世著、ちくま文庫)
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