社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.10.12

世界の電子政府ランキング…日本の順位は?

 マイナカードが使えない、ドコモ口座から不正引き出しなど、悪評の気になる政府系デジタル。菅首相は看板政策であるデジタル改革を本格推進するため、デジタル庁創設に乗り出しています。政府として気になるのは、国連加盟193カ国が対象の「世界電子政府ランキング」。さて、現状はどうなのでしょうか。

電子政府ランキングはどのように決まるか

 2020年7月10日、国連経済社会局(UNDESA)より国連加盟193カ国を対象とした電子政府の調査結果として、2年に一度の世界電子政府ランキングが公表されました。

 電子政府ランキングの指標は、主に三つ。一つ目が「Web指数」、二つ目が「ICTインフラの整備状況」、三つ目が「人的資本」に関するものです。それぞれの範囲と質の指標ごとに算出された数値を合計し、平均値として割り出されたものが「電子政府発展度指数(E-Government Development Index:EGDI)」として、0.0~1.0の範囲で示されます。

 「Web指数」については、各国のウェブサイトのみならず教育省、労働省、社会サービス省、社会福祉省,財務省などのウェブサイトも評価の対象。「ICTインフラの整備状況」は、100人当たりのPCの数、インターネットユーザー数、固定電話数、携帯電話保有者数、固定ブロードバンド加入者数の加重平均です。「人的資本」に関しては、成人識字率や初等・中等・高等教育機関への相対的入学率が定量化されます。

 さらに、政府から市民への情報共有やステークホルダーとの相互関係、政策決定プロセスを知るための質問により、市民の電子政府参加(e-Participation)状況が加味されることとなっています。

何としてもトップ10に返り咲きたい日本の悲願

 2020年のトップ3はデンマーク、韓国、エストニア。1位:デンマークは昨年から連続の首位、韓国は過去10年にわたりベスト3から外れたことのない常連国です。3位:エストニアは、前回16位から躍進。4位と5位には僅差でフィンランドとオーストラリア。ここまでの5カ国はEGDI:0.94以上と、ほぼ満点に近い点数を叩き出しています。

 トップ20を見渡すと、20位:リトアニアが20位アップ、18位:キプロスが18位アップなど、国が本腰を入れると評価が目覚ましく上がるのが、このランキングの特徴といえます。逆に順位を下げたなかでは、19位:フランスの10位ダウンに続いて、4位下げているのが11位:シンガポールと14位:日本です。

 日本のここまでのランキングは、2012年18位、2014年6位、2016年11位、2018年10位。今回初めて創設された「最上位クラス」は1~14位なので、2020年の日本はかろうじて滑り込んだかたちになります。

 日本への評価を詳しくみると、通信インフラと人的資本の評価は前回より上がったものの、オンラインサービスの評価が下がっています。とはいえ日本のEGDI:0.8989は、前回の0.8783よりも高く、2018年のランキングでは5位に相当します。

 上位国が大きく指標を伸ばし、全体平均としても16年の0.49、18年の0.55から0.60へとアップしたことから、世界の電子化がめざましく進んでいるのがうかがえます。EGDI:0.75を超えトップグループの電子政府とみなされる国は16年の29カ国から、20年は57カ国へとほぼ倍増しました。

電子自治体ランキングや早稲田の調査も??

 2018年の調査からは、パイロット版として電子自治体ランキングも始まりました。18年の対象は40都市でしたが、今回は100都市に拡大して評価が行われています。

 日本の都市では、前回19位だった東京が24位にダウン。1位はマドリード(スペイン)、2位はニューヨーク(米国)、3位はタリン(エストニア)、4位はパリ(フランス)、5位はストックホルム(スウェーデン)。アジアの都市では、9位にソウル(韓国)と上海(中国)、12位にイスタンブール(トルコ)、16位にドバイ(アラブ首長国連邦)が入っています。

 なお、電子政府に関するランキングは、国内では早稲田大学電子政府・自治体研究所が本格的に取り組んでいます。15回目となる2020年の年次調査結果では1位:米国、2位:デンマーク、3位:シンガポール等に次いで日本は7位の位置付けです。

 いずれにしても、日本がさらなるデジタル化に向けて邁進するにあたり、SDGsとの連動、超高齢社会の現状とのマッチングが焦点となることは間違いありません。

<参考サイト>
・日経XTECH:電子政府ランキングで日本は14位に後退、トップ3はデンマーク・韓国・エストニア
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/08340/
・早稲田大学:第15回早稲田大学世界デジタル政府ランキング年次調査
https://idg-waseda.jp/pdf/2019_2020_Digital_Government_Ranking_Press_Release_Japanese.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話

ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話

ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群

ケルト神話とは何か。ケルトという地域は広範囲にわたっており、一般的にアイルランドを中心にした「島のケルト」と、フランスやスペインの西北部などに広がった「大陸のケルト」があるが、神話が濃厚に残っているのはアイルラ...
収録日:2022/04/12
追加日:2023/07/23
鎌田東二
京都大学名誉教授
2

横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命

横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命

徳と仏教の人生論(4)克己と天壌無窮

西郷隆盛が悟った「克己」、『日本書紀』に出てくる「天壌無窮」、これらの重要性をはじめ、東洋思想における欲望と肉体の関係については、まさに宇宙との対話につながる論理である。また、儒・仏・道・禅・神道の5つの東洋思想...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/11/01
3

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
4

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ

算数が苦手な子どもが多く、特に分数でつまずいてしまう子どもが非常に多いというのは世界的な問題になっているという。いったいどういうことなのか。そこで今回は、私たちが言語習得の鍵となる「スキーマ」という概念を取り上...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論

忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論

東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ

東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏が、海外でも有名な「ハチ公」の逸話を例に、人と犬の関係について考察する。第一回目は、ハチの飼い主・上野英三郎博士について触れ、東大とハチ公の結びつきや、東大駒場キ...
収録日:2017/04/04
追加日:2017/06/13
一ノ瀬正樹
東京大学名誉教授 武蔵野大学人間科学部人間科学科教授